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少女は祈らない  作者: 異原 世界
魔王(ぜろ)再臨編
6/23

第五話 「えものっ! えものっ! 私のえものっ!」

クリックしてくれてありがとうございます!

是非一話から読んでみてください!

燭台の灯りが揺れる薄闇の中、重厚な銀の扉が静かに開いた。

控えの間に、冷たい風がひと筋、吹き込む。


「……入れ」


低く、鋭い声音が命じた。

その声の主は、教団最高司祭の一人──〈風の司祭〉ヴァルデン=グラハム。

風紋の刺繍を施した白銀の祭服に身を包み、冷徹な双眸が、扉の向こうを射抜いている。


入室したのは一人の青年。

粗末な旅装、泥にまみれたマント、剥き出しの手は細かく震えていた。


「……貴様が、“例の報告者”か」


青年はひざまずき、息を整えてから報告を始めた。


「……はい。第三地区を越えた森の外縁にて、“異常魔力の光”を確認しました。  ただの発光ではありません……飛翔していました。尋常ではない速度で、山岳地帯へ」


「光の発生源は? 姿は見えたか?」


「……影のような……人影でした。小柄で……子どものように、見えました……」


「詠唱は?」


「……ありませんでした。完全な無言。ですが、あの魔力濃度……あれは、あれだけは……人間の手とは……」


震える声を遮るように、ヴァルデンはゆっくりと口を開いた。


「“魔族の進行”と見て、間違いないということか」


青年はぐっと唇を噛んだあと、重々しくうなずいた。


「……はい。魔族の残滓……あるいは、あのものたちかもしれません」


「……理なき力の行使。神を知らぬ術式。教義に反する禁忌の顕現……」


ヴァルデンの指が、机上の羽ペンを静かに回す。


「“風”が知らせたというわけか」


その言葉に、奥の脇扉が音もなく開かれる。

黒衣の魔導師たちが五人、黙々と現れ、前へ進み出た。彼の私兵――精鋭中の精鋭たちだ。


ヴァルデンは命じる。


「目撃情報のあった地点、王都東方の森林帯へ向かえ。  “魔族の接近または侵入の兆し”と判断し、最優先で調査・排除にあたれ。必要であれば――殲滅を許可する」


「御意」


五人が揃って膝をつく。その背筋には迷いがなかった。

ただ、一人だけ。まだ年若い魔導師が、わずかに視線を上げて問うた。


「……司祭。仮に相手が“人間”であった場合は……?」


「ならば、その者が“人の道”を踏み外していない証拠を見せよ。  歯向かって術を振るうというなら──教団が黙って見過ごす理由はない」


風が、ぞっとするほど冷たく吹いた。

その声の裏にあるのは、“容赦”ではなく、“証明”という名の粛清である。


「……行け。お前たちが最初の“刃”となれ」


「はっ!」


五人の魔導師が一斉に立ち上がり、音もなく部屋を去っていく。

その扉が閉じられた時、静寂だけが残った。





夜の森は静まり返っていた。

遠くでフクロウが鳴き、風が木々の葉をさらさらと揺らす。


魔道師部隊の一行が、古い獣道をゆっくりと進んでいた。


数日前に報告された「魔族の痕跡調査」のため、この外れの遺跡跡へ派遣された。


「……変だな。魔力の残滓はあるが、魔族の使徒がここで祈った形跡もない」


「魔力の残滓が、規格外すぎる。やはり魔族か」


「気をつけろよ。こんな時が一番、死ぬからな……“想定外”に喰われる」


隊長格の男が呟く。

周囲を囲む森の気配が、ほんの少し、重くなったような気がした。


 


その200メートル後方。

一人の少女が、まるで“お散歩”でもしているように、スキップしながら森を抜けていた。


「えものっ! えものっ! 私のえものっ!」


「わ〜、夜の森って、思ったより空気が澄んでるのね。これ、湿度調整の影響かしら?  それとも私が魔力を拡散させ過ぎたせいかな」


ソフィアはご機嫌だった。

腰には、厚手のノート。実験観測用の記録本。

背中には、手作りの試験装置が詰め込まれた革の鞄。


何より、胸の奥には――たまらない好奇心が、熱を帯びていた。


「やっと獲物がかかった。実測できるわよね。ちゃんとした比較対象。同条件・同出力での魔力消費比較……わくわくする……!」


すでに頭の中では、シミュレーションが何百回も繰り返されていた。


「信仰魔法との変換効率、現象制御能力の相関、

 それから最も大事なのが、“自覚のない行使者”との比較……」


にやり、と笑う。


「……つまり、あの人たちがうってつけってことよ」


彼女の足取りが止まったとき――前方に、隊列を組んだ魔道師たちの気配があった。


(実験開始……!)






「教えて作者コーナー」

教団とは

人間族(エルバリア)のセフィアーン聖王国で勢力を拡大してる。人間族の神への信仰を取りしきる組織の事。実態は権力が強くなりすぎて、王家以上の発言権をもってしまっている。

五属性それぞれの神に当てはまる司祭を頭にして運営している。




ソフィアのいる場所の回りの地図です。

しばらくは関係ないのですが


挿絵(By みてみん)

読んでいただきありがとうございます!

続きが気になりましたらブクマなどいただけたら嬉しいです!

感想なども是非!

批判などもちょっと傷つきながらも参考にいたします。

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