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少女は祈らない  作者: 異原 世界
魔王(ぜろ)再臨編
12/26

第十一話 「名の無き物の影」

クリックしてくれてありがとうございます!

是非一話から読んでみてください!

藁の匂いがまだ残る馬小屋の裏手。

乾いた足音が、静かにそこで止まった。


「グローデル導師。――いや、レティシア・グローデル」


背後から静かに落ちた男の声。威圧はない。けれど、語尾に宿るその“重み”が、彼女の警戒心を一気に引き上げた。


(……名前を知っている)


レティシアはゆっくりと振り向かずに言葉を返す。

右手はそっと、外套の下、腰に差していた長杖へ伸びていた。


「名乗らぬ者が、人の名を呼ぶとは。礼儀知らずね」


「それでも、“呼ぶだけの理由”がこちらにはある。……貴女が報告を止めた、その瞬間から」


返答と同時に、屋根と小屋の影から複数の影が跳んだ。


(来た!)


即座にレティシアは杖を引き抜き、後方へ滑るように身を引く。杖先が地を擦り、詠唱が走る。


「〈光よ、我が足元に静寂を〉!」


杖の先端が軽く地面を叩いた瞬間、足元に小さな魔法陣が浮かび上がる。踏み締めた地面がわずかに光を放ち、衝撃をいなすように身体がふわりと浮く。


「〈光よ、糸となりて敵を裂け〉!」


空中で彼女が杖をひと振りすると、その軌跡に従って、光が糸となって走る。

襲いかかってきた三人のうち二人に命中。手首、足元、顔の前でそれぞれが閃き、敵の動作を断ち切った。


「ぐっ……!」


うめき声。体勢を崩す気配。



(……詠唱さえ通れば、こちらが優位!)


着地と同時、レティシアは杖を胸元で縦に構え、次の詠唱に移る。


「〈光よ、我が敵を縛れ〉!」


杖から奔る無形の力が空気中に走り、黒衣の者たちを足元から絡め取った。小さく呻く声。完全に封じるには足りなかったが、時間は稼げる。


だが、次の瞬間——


――ズンッ!


馬小屋の横手、屋根の上から、圧倒的な魔力の“重さ”が降ってきた。


(……っ!?)


レティシアはそちらを見上げ、息を呑む。


仮面をつけた黒衣の男。武器も魔道具も見当たらない。ただ、ただそこに“在る”だけで、空間の緊張が跳ね上がっていた。


(この密度……まさか……)


人並みの魔道師なら、触れるだけで内臓を潰される。

上級魔道師ですら直視を避けるレベルの“圧”。

――明らかに、人頂級に迫る魔力量。


(でも……こんな人教団内で見たことない)


彼女の知る限り、王国にも教団にも、これほどの魔力量を持った存在は限られている。


(まさか、私一人にここまでの人を使うなんて......)


仮面の男は静かに片手を上げた。


それだけで、空気が震える。


「〈風よ、守りの壁となれ!〉」


レティシアは杖を大きく横に振り、魔力を流し込むが——


その前に、空気の流れそのものが“消えた”。


魔力が、働かない。


「……封魔……!? 詠唱前に、魔力の流路が断たれて……っ!」


地面が足を引き、空気は重く沈む。

思考が鈍り、身体が石のように動かなくなる。


「……私にここまで……するとはね……」


レティシアは苦しげに言葉を吐きながら、震える手で杖を支え、外套の奥を探った。


(今使えば、ただでは済まない。でも、これ以上は……)


手にしたのは、小さく、だが力を秘めた一枚の札。


教団上級導師にだけ許される、対国家級の最終手段——


攻性解放符。


(これを使えば、私も、相手も無事じゃ済まない……)


仮面の男は、それでも一言も発しなかった。

言葉の代わりに、もう一歩、距離を詰める。


「……やめて……」


レティシアの指先が札を掲げようとする。


その瞬間だった。


——重い“沈黙”が、彼女を押し潰した。


視界が滲み、膝が崩れる。立っていられない。


(……身体が、動かない)


指も、口も、魔力も、すべてが地面に吸い込まれるようだった。

握っていた杖も、無力に傾いていく。


「……名を……聞かせて……せめて……」


ようやくの思いで漏れ出た問いに、仮面の男は静かに答えた。


「名はない。……君が望んでいた者ではない、ただそれだけだ」


それを最後に、レティシアの意識は暗転した。


意識が沈む寸前、かすかに浮かんだのは、あの少女——ソフィアの顔。

あの、世界に無垢な好奇心を向ける瞳。


(……見極めなきゃ……こんな終わりじゃ……だめ)


彼女の身体は、仮面の男の腕に抱えられ、夜の闇の中へ運ばれていった。


王都の空は静まり、まだ夜明けの気配すらなかった。

翌朝に迫る“勇者出立式”の喧噪など、遠い別世界のことのようだった。



封魔とは

魔力を固定化、封印する技

魔力を一定の場所にとどめたり、自分から漏れ出る魔力を押さえてロスを減らしたりする。


要はう◯こ我慢するようなもの

その十倍ぐらい大変だけど



魔道具

神の言葉である魔方陣の文字を完コピして、魔力を流すだけで魔法を使えるもの

これなら信仰がなくても大体の物は使える。

でも作るのが難しく高価なものは教団が独占



解放符

魔道具の上位互換

利便性、デザイン性を一切排除し、極限まで魔方陣を描いたもの

威力、範囲全てにおいて規格外

読んでいただきありがとうございます!

続きが気になりましたらブクマなどいただけたら嬉しいです!

感想なども是非!

批判などもちょっと傷つきながらも参考にいたします。

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