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異世界に靴として転生しました。

作者: 雪だるま

初めての短編です。

(よぅし。うまくできたな。あとは磨いて、こいつに話しかければいいんだ。)

 ゴシゴシするな。くすぐったいだろwwあ、何かけてんだよ。だからやめろって。寝起きドッキリかぁ?俺の前に現れたのは赤い目に白髪しらがの中に少し、黒髪が混じっている頭髪の高齢の男だった。あ?誰だこのおじいちゃん。知らないおじいちゃんに体触られるとか誰得だよ。俺の体がおじいちゃんの手の中に収まってる?!俺小さくなった?腕も動かないし、どういうことだ?足ならどうだ!

 ピクッ

 動いた!

「お、できてきたか。それじゃあ。これがお前さんだ」

 そう言っておじいちゃんは鏡を見せてくれた。そこには薄茶色の冒険者が履くような立派なショート丈の革靴の姿が、、って何なんだよー。

「どうだ。お前さんかっこいいだろう。」

 かっこいいけども

「そうかそうか。いやぁよかったよ気に入ってもらえて。」

 え、誰と話してんの?

「誰ってお前さんとだよ。」

 はぁ?!俺の考えてることがわかるの?

「あぁ。わかるさ。わしは靴職人だからな。」

 はぁ。なんで靴職人だと話せるんだよ。

「そりゃあ。スキルだからな。」

 スキル!じゃあ魔法とか魔物とかもいるのか?

「ああ。いるとも。それよりお前さん生まれたてだってのに意識も自我もしっかりしてんな。」

 え、あぁ多分俺が元人間だからかもな。

「そうか。靴に転生したんだな。自我があるなら売れないな。」

 自我があるとなんかだめなのか?

「いや、最初はいいんだが、街に出回ってる靴たちには2歳児程度の知能しかないんだ。だから売る前の制作の段階でどんな靴になりたいか聞いて、それに応じたスキルを手に入れさせるから。どうしようかと思って。」

 俺まだスキル、得てないぞ。

「そうか。なんのスキルが欲しいんだ?ちなみにからだに見合わないスキルを望むと爆散するから気をつけろ。」

 え、こわ。じゃあとりあえず汚れてもすぐ綺麗にできるようにしたいな。あと、そもそも汚れたくない。

「そうか。2つか。まぁ爆散しないように気をつけな」

 え、2つって結構やばい?

「あぁ。まぁ大丈夫だろ。アハッハッハ」

 俺からすると笑い事じゃないんだけど。

 ?

 なんか体が変な感じがする。

「スキルの獲得だ。心配すんな。爆散するときは痛くないらしい。」

 爆散する前提かよ。意識が遠く。

 

 う、ううん



「起きたか。」

 俺どうなったんだ?俺は椅子の上に置かれていた。

「お前さん。あのあとまる三日意識がなかったんだぞ。いつ爆散するのかドキドキしたわい。」

 とりあえず無事ってことで良いんだな。

「あぁ。」

 ところでスキルって何をゲットしたかとか見れるのか?

「あぁ。スキルウィンドウって思い浮かべれば見れるぞ。」

 サンキュー。(スキルウィンドウ)俺の目の前に青色の半透明の画面が現れた。そこには

 "個体名 なし"

 "スキル 浄化 絶対防御"

 と書いてあった。

 俺のスキル浄化と絶対防御だってさ。

「おぉ。すごいなぁ。それだけすごいスキルを2つも得ておいて爆散しないとはな。」

 爆散する可能性高かったのか。結果的には良かったけどもし耐えられなかったら、、、考えただけで怖い。

「お前さん。色んな人に履いてもらいたいか?」

 うーん。正直そこまでではないかな。

「そうか。じゃあわしと一緒に暮らしてくれんか。」

 え、いいけど。行く宛もないし。

「そうか。そうか。なら良かった。」

 そうして俺とじいちゃんの生活が始まった。部屋の掃除は俺の担当。時々じいちゃんが俺を履いてどこかへ出かけてくれる。「必要ないかもしれないが」と言いながらこの世界に付いて教えてくれた。この世界のお金は、銅貨、銀貨、金貨、黒金貨、の4つでこの順番で構成されてるらしい。因みに銅貨が日本円で100円、銀貨が1万円、金貨が10万円、黒金貨が100万円といったところだ。他にもこの世界の地図とか、国のこととかこの世界ではみんなある程度の魔法は使えるとか、みんな小さい頃にスキルを貰えるだとか、革靴は大体最後の工程でどんなサイズの足でも履けるように大きさが変わるように『フィット』と言うポーションをかけることとか靴と話せるのはその靴を作った靴職人だけだとか教えてくれた。俺がもし靴を作った靴職人が死んだらどうするのかと聞いたら。

「靴は本来2歳児程度の知能しか持たねーから話せなくても困らねーんだ。お前さんは例外だがな。」

 と言っていた。じいちゃんも年だし、もしじいちゃんが死んだら誰とも話せなくなるのか。寂しいな

「なぁにわしはいつまでも生きててやるさ。もし死んだらお前さんを売りに出してやる。そうしたら世界を旅しな。」

 おう。長生きしろよ。

 それから数年たった。その間に辺境の村に引っ越した。じいちゃんは俺を履いて出かけなくなった。家の中で過ごすことが増えたんだ。俺はじいちゃんに今からでも新しくスキルを得ることができるのか聞いた。

「理論上はできるが、おすすめしないな。そうやって命を落とすものも少なくない。」

 そうか。できるのか。(念じただけで念じたようにものを動かせるようにもなりたい)(念じただけで念じたようにものを動かせるようにもなりたい)(念じただけで念じたようにものを動かせるようにもなりたい)

 生まれたばかりの頃と同じような感覚に襲われた。爆散しなきゃいいな。意識が遠くなっていった。

 

 ううん


「起きたか」

 おう。おはよう。(スキルウィンドウ)

 "個体名 なし"

 "スキル 浄化 絶対防御 念動"

 やったー!3つ目ゲットだ。これでじいちゃんの家事手伝える。

「わしのことなんて気にしなくて良かったのに。」

 いいの。俺がしたいんだから。それからは家事の半分を俺がやることになった。

それからまた数年たった。じいちゃんが寝たきりになって歩けなくなった。家事は全部俺がやることになった。じいちゃんは村の人達に慕われているみたいで、欲しいものを紙に書いて玄関にお金と一緒に置いておくと村の人が届けてくれる。お金は盗まれない。治安のいい村だ。俺はじいちゃんの介護をしたり、家事をしたりじいちゃんと話したりして一日を過ごす。じいちゃんがある日

「紙とペンを取ってくれ。」

と言われ渡した。そしてその後、

「この手紙をいつものように玄関に置いておいてくれ。」

と頼んできた。俺は内容は気になったものの知人に向けた手紙だろうと思い勝手に見るのも失礼なので素直に置いておいた。

それから2年後じいちゃんが死んだ。じいちゃんが死ぬ間際に

「今までのありがとな。お前はわしの一番の靴であり、息子だよ。」

そう言った。俺も父さんみたいだとずっと思っていた。父さん、、、、

その後、父さんは

「そうかぁ。お前の父さんで良かったよ。」

そう言って笑顔で息を引き取った。その後、玄関に紙がないことを不審に思った村人が家に入ってきて父さんの遺体が発見された。

 その後3ヶ月位経って、見慣れない男が俺を持ってどこかへ向かった。そこは街の靴屋だった。男は靴屋の店主に

「こいつここで売れないか?」

と聞いていた。

その後、店主と話をして俺は売られた。まず最初の買い手は新人冒険者の青年、ジジだった。ジジはおっちょこちょいながらも地道に冒険者として安定した生活を築いていった。そのかいあってか、ずっと片思いしてたアリサに告白して付き合うことになった。その後も焦らず怠けずで二人で依頼をこなしていた。何度か依頼を受けた際に怪我を負いそうになったがそこは俺のスキルの出番よ。絶対防御は俺を履いてる人にも適用されるっぽくてその時は防御してやった。ジジはびっくりしてたけど、依頼が終わってから、装備を一着ずつ着てアリサに針を指に刺してもらって、俺のスキルについて、確認してた。それからジジたちがちょっとむちゃをして依頼を受けるようになったには言うまでもない。二人がお付き合いしてから2年後、アリサの方から告白して結婚した。結婚式は俺を履いてしてくれた。なんでも俺のお陰でジジの命が助かったからだそうだ。役に立てて良かった。その後、二人は子宝に恵まれ、長男、長女、次男、次女の順で生まれてきた。長男のジアが産まれるころにはジジがアリサの尻に敷かれてた。ジアが生まれてから2年後に長女であるリサが産まれた。流石に2歳と0歳の育児をアリサ一人でやるのは大変みたいで、家の家事まで手が回らないようだったから、こっそり浄化で家をきれいにしたり、念動でご飯作ったり、洗い物したり、してた。因みにジジは生活費を稼ぐために冒険者の中でも一番収入の安定してる警備の依頼を受けるようになった。だから夜勤とかあるし、大変そうだが、アリサの疲れもわかってくれる良い夫だ。段々と俺が家事やってることに気づき始めた。アリサとジジが玄関にある俺を見て

「もしかしたら妖精さんが住んでくれてるのかもね。フフ」

「そうかもね」

と話していた。リサが生まれてから2年後双子が産まれた。女の子よりも早く産まれた次男はジーリーと名付けられて、次女はアリと名付けられた。双子だったからか育児の負担も2倍だったみたいで、一年間ジジは依頼を受けず、貯めていた生活費を使って家事と育児に専念していた。それから6年経って、ジアは10歳リサは8歳。ジーリーとアリは6歳になった。ジアはジジを見て冒険者になりたいと思ったらしく、この前冒険者ギルドに登録しに行ってた。その時にジアはスキルを得たらしい。スキルはジジに

「冒険者になるならこれをとったほうがいいぞ。」

と進められ、"鑑定"を得ていた。ジジに見守られながら初依頼の薬草採取を完了していた。リサはパン屋さんになりたいらしく、去年から近所のパン屋さんに弟子入りしてパンの作り方とか教わってるらしい。将来働ける年齢になったらそこで働かせてもらえるらしい。この前アリサがそのお店にパンを買いに行ったらしいいが、リサはアリサに気づく様子もなく一生懸命教わってたらしい。アリサは何も言わずパンだけ買って帰ったんだって。ジーリーとアリは家のお手伝いをしてる。まだ将来の夢は決まってないらしい。多すぎて決まらないんだと。純粋無垢な子どもは可愛い。そうして月日は流れ、2年後ジアは12歳、リサは10歳、ジーリーとアリは8歳になった。ジアは着々と実力と信用を積み重ねていき簡単な討伐依頼を受けれるようになった。リサはまだ働けないがパンの腕は上達してるみたいだ。ジーリーは冒険者ギルドの職員になりたいらしい。なんでも、

「冒険者は危ないことだらけだけど、地域に貢献してる。でも、僕は力が強いわけでも、魔力が多いわけでもない。だから、日頃貢献してくれてる冒険者に役立てる仕事につきたいんだ。」

って言ってた。ええ子や。アリは大工になりたいみたい。元々アリは積み木で遊んだり、砂で家作ったりするのが好きだったみたいだからちょうどいいな。今年の冬から近所の大工のおじさんに、弟子入りするみたい。それから何十年か経って、ジジとアリサももうおじいちゃんとおばあちゃんになってしまった。子どもたちも大きくなり、ジアは奥さんと一人息子に恵まれ、リサは、街一番のパン職人になった。夫と娘と暮らしてる。ジーリーはまだ独身だが、いまいい感じの彼女がいるらしい。アリは、大工として、一人前になり、ジアとリサの新居を建てたらしい。

俺は今靴屋にいる。どうしてこうなったのかと言うと、、、

「父さん。この靴俺が生まれる前から履いてるんだって?」

「ああ。そうだよ。ジア。この靴が父さんを守ってくれたんだ。」

「いくらその靴がきれいでも、いい加減別の靴も履いたらいいのに。お父さん。」

「いや。この靴が良いんだよ。リサ。」

「まぁまぁ。兄さんも姉さんも。落ち着いて。父さん。その靴は父さんを守れるくらい強いんでしょ。」

「あぁ。」

「だったら。もう引退した父さんではなく、他の新人冒険者の人に使ってもらったほうが靴も喜ぶと思うよ。兄さんはもう自分の靴が何足かあるから、信用できる靴屋さんに売ったほうがいいと思わないか。」

「それもそうだな。でもこの靴の性能はすごいから靴屋に売ったらこの靴を買う人はお金持ちじゃないと買えないよ。」

「だったらさ。お父さん。ジーリーが言った案に性能のことは言わないを足して売ればいいんじゃないの?ねぇお姉ちゃん。」

「そうだね。例えばこの靴は汚れにくくなる程度って言って売ればいいんじゃないかしら。」

「ジジ。その靴、売りに出そう。今までお世話になったし。最後に丁寧に磨いてあげよう。」

「分かった。そうしよう。みんな、ありがとうな。」

ということだ。まぁ最後、磨いてくれたのは父さんに磨いてもらったときとは違ったけど嬉しかったな。

それから、数日。

魔法使いの嬢ちゃんに買われた。汚れない靴が欲しかったようだ。パーティーのバランスもいい典型的なタイプだ。この娘は泥へ突っ走るし、結構お転婆だ。でも仲間には信頼されてるみたいだった。その娘のパーティーがある程度の実力をつけてきたところで売られた。でも今回は国を移動した先で売られた。この国の名前は、、、、そうだ。レワル王国だ。この国は確か、今までいたサイコル帝国とは友好国なんだっけ、特産品が、確か、、、山に囲われてるから、、、山ぶどうだ。あと、この国に来てから思ったけどスラムとかがないように見える。ただ、裕福ってわけではなく、生活とちょっとした贅沢が月1でできるくらいの生活水準だ。結構いい国なのかもしれない。今は靴屋の棚の中にいるがな。次に俺を買ったのは貴族の子息みたいだ。なんで冒険者の靴のデザインの俺を買うのか、よくわからなかったが、騎士学校と魔法学校の合同野外活動で使うらしい。少年の名はヒエロニュムス・ローシナと言うらしい。ローシナ男爵家の次男だそうだ。愛称はロニ。家族からそう呼ばれてることから見て、家族仲は良さそうだ。現男爵のお父さんはヒエム・ローシナ。お母さんはエリス・ローシナ。お兄さんは、エリック・ローシナ。男爵が魔物のスタンピードで王国に貢献したから与えられた名誉ある地位らしい。すごい人だ。家督はお兄さんのエリックが継ぐらしいいからロニは、騎士になるのだとか。

 そうして数日後、野外活動がやってきた。今回は、野宿も込で行うため、2泊3日だ。もちろんその間は自給自足の生活だ。俺も手を貸さない。頑張れよロニ!ロニたちの班は騎士2人、魔法師2人と言う構成だ。初日から班員で話し合い野営の場所も決まり、それぞれの得意不得意を把握しそれらに対する対処も決まったらしい。最初に出会った魔物は、スライムだった。スライムは核を破壊すれば倒せるものの核を巧みに操り逃げるのが得意な魔物だ。魔法師の2人はスライムの正面に立ちスライムの弱点である火属性魔法を使い、騎士2人のところへと誘導していった。騎士2人は向かってきたスライムを網で捕らえて、剣で核を突き刺した。すると、スライムが魔石へと変化した。なんでも、今回の野外活動では、野外活動期間に取れた魔石の総魔力量によって成績が付くらしい。ただ、強奪や頼まれてもいないのに、助けに入って、獲物を横取りするのは反則で成績が下がるらしい。その後も着々とロニたちの班は魔石を稼ぎ、頼まれたら助けに入ったりしていた。食料は学校からの配布だが、うまく使わないと3日と持たずにリタイアすることになる。けど、その辺は大丈夫みたいだ。ロニたちはうまくやってる。そうして長いようで短い野外活動は終わった。ロニたちはいい成績がついたみたいだ。中には食料を2日目に食べきってしまって、木の実やら、他の班に少し分けてもらったりしてなんとかリタイヤは免れた班もあったみたいだ。終わった後は俺は、ローシナ家の靴箱の奥底に眠ることとなった。もっと使えよたった3日かよ!まぁ貴族様にはこんな冒険者が履くような靴いりませんよね〜。はぁ使わないなら使わないで売りに出してほしかったな。暇だしどうしよっかな。寝ることもできないし、、、。そんな事を考えながら数カ月後。衣替えで靴箱から出してもらえた。その時にロニなんて言ったと思う?

「あーこんな靴うちにあったっけ?」

だよ?悲しい。おぢさん悲しい。まあ3日しか履いてないから仕方ないんだけどね。とほほ。覚えられてなかった俺は売られた。今度はどこかの商会の荷馬車に乗せられ、別の国へ。次に俺がついたのはアプア共和国と言う海に広く面した国だ。ここは亜人も、人間も魔族も暮らせる国だ。魔族は魔物とは全然関連性がなく、魔法に生まれつき秀でた種族。略して魔族だ。父さんに魔族?じゃあ危ないのか?人類の敵?って聞いたら

「ばっかもーん。んなわけあるか。このサイコル帝国の最高魔法師達の中には魔族もおるわい。見た目もそんなに人とは変らん。特徴で言えば、角じゃの。角は魔力の放出を手伝うのだとか。魔族の中でも魔法に秀でたものは角が2本あったり、大きかったりするらしいの。わしは3本あるやつ知っておるが、服を着るのに難儀しておったわい。あと危ないのかということについてじゃが、子どものうちに角が2本以上あると、感情の起伏で魔法が出てしまうこともあるから子どものうちは少し危険じゃの。ただ大体は親が魔力の放出を手伝うか、魔力を少しだけ吸い取る魔道具を使うか。まぁ後者は貴族ぐらいしかできないだろう。」

って説明された。そして今、俺は、冒険者向けの靴屋の店頭に並べられている。今回はどんな人に買ってもらえるのかなぁなんて思ってたら、魔族の男と狼の亜人の女のカップルが訪れた。二人は、靴を選んでいるようだ。前履いていた靴が壊れて履けなくなってしまったようだった。今度は丈夫なのを探しているようだが、俺がいいと思う。一生綺麗で、絶対防御があるから、傷がつきにくいこんな優良靴他にないでしょう。そんな事を考えていると、二人が近づいてきた。俺にする?お れ に す る ?二人は俺を手に取った。

「この靴、アンナにいいんじゃないか?いつも前衛で戦ってくれてるし。」

「そうかな。似合うかな?」

「似合う。絶対似合うよ。」

イチャイチャしだした。リア充が!!

「おじさん。これくれ」

「分かった。銅貨30枚だ。」

俺の値段高くねぇか?まぁ元々貴族から売られたものだしな。そんなもんか。そうして、彼らに使われることとなった。アンナに使ってもらえるときには、もふもふの足を俺が包むからいつも浄化と絶対防御全開にしている。キザのときは俺だけ浄化。野郎の足は嫌なんだもの。そんなことをしてたら

「女の子にだけ、靴のスキルが発動するのか?」

「かもね。」

なんて言われてしまった。その後、何年か一緒に過ごしてきて、今日も依頼を受けて、オークの被害にあった村に行った。2人はオークの討伐依頼を受けていたんだ。着いた村で村長らしき人が出迎えてくれた。

「良くぞ。いらっしゃってくださいました。うちの村は森の中心でのみ育つ治癒のリッポゴを特産品としているのですが、その途中にオークが出るようになってしまって。ですのでオークを討伐していただきたいのです。ただ、お2人共ここまでの移動でお疲れでしょう。今夜はここに泊まっていただき、明日、出発していただければと。」

「ああ。そうさせてもらうよ。村長さん。」

「よろしくお願いします。」

そうして2人はこの村に泊まった。翌朝2人はオーク討伐に出かけた2人は順調にオークを倒して行った。このまま上手くいく、そう思っていた時、2人の前にオークキングがで来た。2人はせいぜいハイオークにギリギリ勝てるくらいの実力しかない。ハイオークの上位種のオークキングが現れるなんて。2人はなんとか冷静を保ちつつ、逃げる隙を作れないか奮闘しているようだった。どうしよう。俺、ただの靴だし、、、

そうだ。俺は念動を使って少し歪だが、木の棒でキザと、アンナの似顔絵を簡易的に描いて、足を描いて、俺の片方の靴を履いてもらおうとした。だけど、戦闘の足跡で消えてしまった。せめてアンナのだけでもと思い、絶対防御を全開にした。浄化もフル稼働だ。浄化はスキルの使用範囲を指定できるが、絶対防御は俺と地面以外で接してるところまでしか効果が届けられない。キザはどうしよう。俺が考えているうちに。

ガシッ

キザが体を掴まれた。大きな手がキザの胴体をしっかりと掴んでいる。俺は念動で手を離せないかと動かそうとしたが、びくともしなかった。どうしよう。どうしよう。

「、、、これ、、、」

そう言いながらギザは「それ」を採って、アンナに投げて渡した。アンナは驚いたような顔をしていた。

「いや!死なないで。お願い。」

「じゃあな。俺は一足先に逝ってるわ。」

そう言って、オークキングに、キザは殺された。オークキングがギザを食ってる間にアンナは逃げることができた。アンナは「それ」を大切に握りしめて村へ戻り、馬車に乗って冒険者ギルドへ向かった。その間、ずっと泣いていた。俺がもっとスキルを使っていればもしかしたらギザは死ななくて済んだかもしれなかったのに。冒険者ギルドについてからは、オークキングが出たこと、ギザが死んだこと、全てを伝えた。その後、オークキングに対して討伐隊が編成され、討伐へと向かった。それから、オークキングたちは討伐され、ギザの装備品などもある程度、回収できた。ただ、ギザの使っていた杖と靴、帽子、それ以外は持ち帰れる状態じゃなかったそうだ。アンナは回収できた装備品を受け取った。アンナは家に帰ってから一晩中泣いていた。俺は自分の不甲斐なさに打ちひしがれた。ふざけてギザに絶対防御を発動させなかったこと、絶対防御のスキルをもっと鍛えておけばよかった。数年過ごしただけだけどすっごくいいやつだった。アンナには優しいし、俺のことも大切に扱ってくれた。俺のせいで、、、

翌日、アンナは木箱を買いに出かけた。鉛筆くらいの長さのある長方形の箱を買った。家に帰ってから、木箱に「それ」を入れた。「それ」は、ギザの角だった。あのとき、ギザは角を折ってアンナに渡したんだ。自分の角を恋人に渡す意味は「あなたを永遠とわに愛しています」。アンナは、しばらく、引きこもっていた。そうして、アンナは部屋にこもり、買い物以外では滅多に出歩かなくなった。アンナはギザと将来を考えて貯めていた貯金を使い、寿命死するまで暮らした。

俺はその後、靴屋に売られた。いろんな冒険者に買われて、買い主が死ぬまで使われるか、途中で売られるかして、世界を旅した。買い主は冒険者が多かった。時折、貴族の子供が買ってくれるくらいだった。俺は、常に全力でスキルを発動するようにしていた。それでも、守れずに死なせてしまうこともあった。そのたびに、スキルを鍛えた。今では俺を中心に直径1キロ範囲内なら地面を伝って守れるようになった。

今は父さんが死んでから、300年くらい経った。俺は元のサイコル帝国の王都の靴屋に並べられている。俺に手を伸ばしてきたものがいた。14歳くらいの赤い目の黒髪の少年だ。俺は、その子に買われた。お付きの騎士みたいな人がいたからどこかの貴族のご子息なのかもしれない。俺は箱に詰められて運ばれた。着くと、すんごく豪華な部屋だった。きっとすごく位の高い貴族なんだろうな。俺を買ってくれた少年はカインと言うらしい。早速履いてみることにしたようだ。

「履き心地はいいな。動きやすそうだ。あとは、この靴のスキルだな。どのようなスキルを持ってるのか、、ラオにお願いして見てもらうか。」

そうしてカインは机に向いて手紙を書き始めた。

数日後

コンコンコン

「カイン様。失礼します。ラオ様から手紙が届きました。」

「そうか。ご苦労。下がっていいぞ。」

「では失礼します。」

カインは手紙をワクワクした様子で開けた。手紙には

”カイン・サイコル殿下へ”

 先日いただいた手紙の内容に関してですが、私は、1ヶ月後にそちらに向かいますので、私が『スキル鑑定』をするまでは買われた靴は履かないようにしてください。絶対ですよ!!

それから、お忍びとはいえど、城下に護衛騎士1人だけで、出ないでください。殿下がいないと、城中大騒ぎだったそうですから。王妃様から聞きました。ご自分の身分を自覚してください。

”ラオ・サーマンより”

少年は王子だったようだ。え、俺、そんなすごい人に買われたの?すごくね。やばくね。って、えぇ

俺は、王子に履かれた。え、だめって言われてたよね。なんで履くの?どうしよう。

バンッ入ってきたのは50代くらいに見える執事だった。

「殿下!やっぱり履いてる。履かないようにとラオ様から言われているでしょう。そんなテヘッみたいな顔しても無駄ですよ。これで何回目かわかってます?」

「23回目。」

「そうです。内11回は危ないスキルだったでしょう。殿下はご自身の重要性をご自覚ください。ほら脱いで下さい。」

「分かった。」

カインは、不貞腐れたように答えた。てかそんなに事故りかけてんの?大丈夫か?王子なんだろ?

「靴は箱に入れておいてください。殿下。」

俺は箱に入れられた。1ヶ月このままかぁ。まぁ俺にはロニのところで数ヶ月放置された経験がございますし!!別にさみしくないもん。

1ヶ月後。

箱が開けられた。おおこの人がラオ様か。俺のことを見てくれるんだって?や~ん恥・ず・か・し・い

スキルを見られたがなんだかムズムズした。自分の細胞隅から隅まで覗かれてるみたいで。

「で、殿下!!この靴のスキルすごいですよ!!しかも自我がある!」

「靴に自我があるのは当たり前だろう。出なきゃスキルなんて得ることができないんだから。」

「違うんです。その、我々と同等の、もしくはそれ以上の知能があるんです。だって今、鑑定したら、(や~ん恥・ず・か・し・い。なーんてね。なんかムズムズするな。変な感じだ。)って聞こえてるんですから。」

え、思ってることわかっちゃうの?

「今は(え、思ってることわかっちゃうの?)って言ってました。」

え、なんで?

(それは、スキル鑑定の力です。)

俺の脳内に直接。

(このスキルは物でも人でもスキルを持ってるものの脳内に直接スキルを聞いて、それが真実かどうか判定するスキルなんです。)

な、なるほど。父さんが言ってたこと覆ったじゃねぇか。

(それで、君のスキルを教えて下さいね。)

えっと、こんな感じ?

"スキル 浄化 絶対防御 念動"

かな

(やっぱり、絶対防御なんてすごいじゃないですか。)

そうだったのか。

(ところで、このことを殿下に伝えてもいいですか?)

いいよ

(ありがとうございます!!)

「と、言うことで、殿下。常に履いていてください。ただ、誰にも、言わないように。」

え、俺みたいな冒険用の靴を?服と合わなくね?

「それでいいんです。靴さん。」

「分かった。ラオがそう言うんだ。そうしよう。」

俺はそれから、カインに毎日、学校でも、舞踏会でも、寝るときですら履かれた。そうして、1年経った。

「そうだ。お前に名前をつけよう。ラオが言うには、名前はないようだしな。自我もあるようじゃ「靴」って呼ばれても困るだろう。」

おお、名前を貰えるのか。父さんも名前はつけてくれなかったしな。

「お前の名前は、そうだな。お前を見つけた店の名前と、私の名前とその場にいた護衛騎士の名前から取って、メイラはどうだ?いいと思うなら枕を持ち上げて戻してくれ。嫌だったら、持ち上げたままにしてくれ。」

メイラか、いいんじゃないか?俺は枕を持ち上げて戻した。

「そうか。そうか。じゃあお前はこれからメイラだ。それじゃあおやすみ。メイラ。」

おやすみ。俺は寝れないけど。

外が真っ暗になって何も見えなくなった。俺は夢中で部屋の掃除をしていた。カインに履かれていても念動と浄化で動かずとも掃除ができるのだ。

ギィ

パタン

誰かが入ってきた。誰かはわからないけど、こんな時間にノックもせずに入ってきたんだ。きっと敵だ。俺は動けないし、、、。そうだ。絶対防御でカインを守ろう。それでいて、どうやって助けを呼ぶかだよな、、。そんな事を考えているうちに入ってきた人がカインのそばまで来た。そのままナイフを首筋に刺さるように、ナイフを振り下ろした。

カンッ

ナイフを生身のカインが通さなかった。これ、暗殺者だろ。苦手だけど、やるしかない。俺は念動を使って、ラオの部屋の紙に

”あんさつしゃ かいんでんか いま ぼうぎょちゅう はやくこい”

と書いて、ラオのベットの近くの机に書いた紙をおいた。そしてラオの部屋の椅子を倒して、ラオが起きるように音を立てた。もしラオが気づかなくても、近くの誰かが気づいてくれるように。

バサッ

「何?今の音。」

せっかく良い夢を見ていたのに、起こされてしまった。あたりを見回すと椅子が倒れていた。

「風で倒れただけか。」

ボクは倒れた椅子を直そうと、ベットの近くの机に手を置いた。

クシャ

え、紙?ボクはおいてあった紙を見てみた。しかし、暗くてよく見えない。ボクはランタンを取って、紙を照らしてみた。そこに書いてあったことを見て部屋を飛び出し、夜勤中の騎士団のところへと向かった。

ダンッ

扉を開けてボクは

「カイン殿下が暗殺者に襲われています。急いで来てください。」

そう叫んだ。

・ ・ ・

僕は、現在混乱している。夜勤で今日も平和だなって思ってたら急に扉を勢いよく開けられて、扉の方を見たら、ラオ様がカイン殿下が暗殺者に襲われているなんて叫ばれた。正直信じられなかったが、その場にいた副団長が、

「聞いたか!すぐに行くぞ。隊列は気にするな行けるものから殿下の部屋へ向かえ!」

なんて言うから急いで向かってる。ラオ様の部屋から殿下の部屋まではかなり離れていると思うんがどうしてどうして分かるのだろう。でももし違ったとしても、本当だったときと比べれば向かったほうがいいだろう。そうしてついたときには、メイドらしき人物が縄で縛られていた。ただ、自害しているようだった。カイン殿下は傷一つなく、ソファに座っていた。何か話しているが、誰も見当たらない。僕は、殿下の下へと駆け寄った。

「殿下。お怪我はございませんか?」

「ああ。傷一つない。」

「良かったです。暗殺に気づいていらっしゃったとは。」

「ああ。まぁな。物音がして目が覚めたら、扉から誰かが入ってきてな。なんとか防御に徹したんだ。」

カインは俺と相談した通りに伝えた。ラオの部屋に念動で伝えたあと、俺は部屋の窓辺に合ったランタンを落として割った。カインに起きてもらうためだ。カインが起きてから、暗殺者はカインから距離を取った。カインにどうにか意思疎通を測れないかと、考えていたがカインはベットから降りて、暗殺者から距離を取った。距離を取って移動した先は、剣立ての場所だ。カインが俺に言った。

「メイラ、防御は任せた。」

おう!任せろ!!

そうして助けが来るまでカインは暗殺者が逃げないように、引き止めた。背後を取られても、俺の絶対防御で傷一つつかない。騎士団が到着してからは、ソファに座り、どうやってごまかすかひそひそ相談していた。

「私がすべて気づいていて暗殺者を待ち構えていた。はどうだ?寝る前と同じように返事をしてくれ。」

正直無理があると思う。今までの持ち主たちからして、実力差は明確、無理だろう。俺は、クッションを上げたままにした。

「そうか。どうしたものか。「防御に徹した」ということにすればどうだ?」

防御に徹したならまだ行ける気がする。

俺はクッション下げた。それと同時に、一人の騎士が話しかけてきた。

「殿下。お怪我はございませんか?」

そう言って顔を見た時、どこかで見たことのある顔だなと思った。うーん、、、、あ!思い出した。俺を買ったときにそばにいた護衛騎士だ!慕われてんだな。騎士とカインが話をしていると、ラオがやってきた。そして、カインに一瞥して、カインの隣に座った。

(靴さん。カイン殿下を守ってくださりありがとうございます。)

チッチッチッ俺の名前はメイラだ。

(そうですか。メイラさん。でも椅子を倒すのはやめてください。)

え、

(暗い中、椅子が倒れるってホラーですからね。)

あ、すみません。

(今回は殿下の身が危うい状態だったということで、感謝しますけど。・・・今後もよろしくお願いしますね。)

任せろ!今後も守ってやるよ。それから、カインが皇帝になるまで、暗殺や、「不幸な事故」から守った。

カインがある時、話しかけてきた。

「メイラは、誰に作られた靴なんだろうな?」

父さんの名前知らないしな。

「メイラの裏を見ればわかるか?」

俺の裏?カインが、俺を脱いで、靴裏を見た。そこには、

”ダル・サイコル”

そう書いてあった。

「!!この名前!皇族じゃないか!今から、この、ダルという人物を探しに行くぞ!!」

そうカインは、ワクワクした様子で皇族の家系図の本を取りに、図書室へ向かった。

「見つけた!」

カインの手には、埃にまみれた、200年前の家系図本があった。カインが、本を開いて、探した。俺は、状況が飲み込めてなかった。え、だって、あの父さんがだよ?家事も一通りできる。庶民らしい父さんがだよ?言葉遣いには上品さも、威厳もまったくないあの父さんだよ?え?どゆこと?は?

「いた! なるほど。私の大爺様のお父上の、御兄弟の第5王子だったんだ。王位継承権がないから、きっと王都の街に下ったんだ。それで靴職人になったんだ!だからメイラのようなすごい靴が生まれたのだな!」

そんなにすごい人だったとは。

「このことは公表しよう。」

なんで!?

「私はメイラのお陰で、守られたってね。」

いやいや。それだと、カインの命危なくならない?

「でも今すぐではないぞ。私が死んでから公表だ。」

そっか。じゃあいいや。その後、40年くらい経って、カインは、老衰死した。俺は公表されたあと、帝立美術館へと展示された。毎日、いろいろな人が美術館に訪れて、俺は、驚かしたりして、時々、いろんな学園の生徒が、社会見学でやってきたり、毎日、楽しく展示されてる。旅はもう少し続けたかったけど、外を見たければ、置き手紙を置いて、勝手に出かける。大きな旅行は時々しかできないけど、それでも美術館にやってくる人を眺めるのもいい。思い描いていた靴生とは少し違ったけど、これはこれでいいな。俺はこの先も色んな人の顔を見ることが出来る。それだけで父さんが作ってくれたのがこの(からだ)で良かったと思う。この先もずっと色んな人を見れますように。

⭐がついたら連載版も書くので面白いなぁとか、旅の内容気になるなぁなど思っていただけましたら1つでもいいのでお願いします。

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