89話 回転している立体はいきなり未知の局面を見せる
~【現在】ユニム達 王城街ウノ アエリウス橋~
「ゼルド、ここはどこなのだ」
「悪魔はどこに行ったのだ」
ユニムと、ゼルドは悪魔の手に触れた瞬間、瞬きをした。
すると、不思議なことに隣の町、ウノのアエリウス橋の真中に寝転がったいた。
持ち物を確認するが、何も盗られていない。
変なリンゴを食べさせられたと聞いたので、ユニムは腕の裾を捲り、黄色や黒になっていないのか。と、見てみるが、どこにも異常は見られなかった。
「ユニム様、そんなことわかりませんよ」
「ですが、わかったことがあります」
「なんで、あの人がいないんでしょうか」
ゼルドは、拳に手を当て、考えていた。
あの人がいないのは、どう考えてもおかしなことだった。
忽然と姿を消し、気配すらも消えていた。
何より気がかりなのは、彼の発言。
白胡椒も言っていた。
『……不思議な人でな。五分前に言ったことが現実に起こるような……』
ユニムの表情が変わる。
自分が、気づけなかったこと。
忘れていたことが、気にくわないようだ。
なぜならば、ユニムには「私は断じて賢くないが、利口である」という、確固たる揺るぎないしんねんがあったからだ。
そんな彼女に、その信念がもしも、曲げられるようなことがあったのなら、彼女の表情は、怒りを露わにし、真実だけを追い求めるだろう。
虚実も、疑念も、彼女にとっては、諸悪の根源でしなく、正しさや、信念、正義、平等……揚げだしたら、キリがないが、変加護としての自信を持っているに違いなったかったのだ。
「誰のことだ」
「きっと、魔法で瞬間移動したのだ」
「いなくて当然だろう」
ゼルドを巻くしたてるように、わたしは、忘れたなどいない。
憤慨したよな様子で、腕を組み、ゼルドより、先に立ち上がると、彼の青い瞳を睨みつけていた。
「え、えっとですね」
「ほら、あの人ですよ。気を悪くさせたのなら、謝りますから。
「あの人は、気づいていたんじゃないですか。と、思っただけですから」
「それに偶然かもしれませんし、それにしても、思い返してみればみるほど、確かに不思議なことを言っていたんです」
「そんなわけないではないか」
「『逃げろ』って言ったじゃないですか?」
「あの、メフィストフェレス様が逃げろと言ったのは偶然ですか?」
「さっぱり、わからないのだ」
「トライデンス様には、何かが視えているんですよ」
「ゼルド、そんなことより聞きたいのだが……」
「なんですか?」
「あの、クローバーの城は本当にサンタンジェロか?」
「ええ、たぶんそうですよ」
「たぶん? 曖昧にしてはならないのだ」
「どうしてですか? ユニム様、どうして、わかりきったことを訊くんですか?」
「単刀直入に訊く。あの、影はなんだ」
「え」
サンタンジェロの上空の彼方、金色の船が宙に浮いている。
誰の船だろうか?




