78話 解き明かし、悔い改めよ
喪失は痛みを伴うが、忘却はその痛みすらも消してくれる――そして人は、何度でも新たな始まりを迎えるのだ。
いつぞやの彼もまた、新しい旅立ちへと向かっていた。
彼の名は、エクス。
どうやら、ゼルドがケルベロスになったことを聞きつけたようだ。
「私は、解き明かす者」
「あなたを前にして、怯みもせず、呆然と眺めるわけでもなく、あなたを密かに奮迅させようとしていました」
「この声は、あなたには届かないでしょう」
「私は、《アルキメデス魔法学校》であなたを待っています」
「いつぞやの賢者さんへ」
簡潔に伝言を召使いに遺すと、彼は、インペリアルハーツへと向かった。
〜インペリアルハーツ アルキメデス魔法学校にて〜
アルキメデス魔法学校とは……?
賢者アルキメデスにより建てられし、魔法を学ぶための機関である。
魔術全体における魔法、咒法、呪いを、みなさんはここで身につけることができるのだ。
ただし、階級は「天王子」からと定められている。
果たして、それはどうしてなのか?
理由はいくつかあるが、とある賢者により、魔法という存在が高等になった。
そのため、魔法を扱うのは、誰でもというわけにはいかない。
天民……所謂、天王子、海内女王、天地国王、四権英雄が相応しいと定義されたのだ。
しかし、『魔術超基礎編』にもあるように、呪い学の分野における、呪文や呪いは、言ってしまえば、ただ唱えるだけで扱える。
魔王によって、魔力を奪われたセレスティアル人だが、ある一族だけは、並外れた魔力を宿しているという。
それこそが、伝説の一族である勇者の一族。存在は、確認されていない……
ちなみに、ゼルドの出身であるオルダインは、滅ぼされ、街の跡形もなく、ただの瓦礫の山と化してしまった訳だが、その地には歴史の名残が深く根付いているという。
例えば、異界と繋がっている。
異界……ここで指す異界とは、黄泉の国や、天国、地獄のことではなく、また、異世界のことでもなく――セレスティアル――における界とは、外海の何処かに存在するとされる。桃源郷や高天原のような存在である。次元は、同じのため、異世界とは違うのだ。
セレスティアルに確認されている異界はいくつかある。
暗黒にして灼熱の《獄界》
精神と魂の混在する《霊界》
電気と機械と魔法が融合し、高次元にも匹敵するとされる《電脳界》
世界の狭間を拝むことができ、異世界と繋がっているとされる《次元界》
オルダインから、何かしらの方法で、異界に行くことが可能とされているが、真偽のほどはわかっていない。
霊における解釈のひとつとして、霊魂というものが、存在するのか否か、結論の出ない、永遠の地下迷宮をさまようことになるが、結論として、霊魂の存在を確かめようなどと、考えなくてよい。
「純粋理性批判」エマニエル・カント著
……によれば、神の存在。霊魂の存在。宇宙の始まりと終わり、死後の世界は、我々の五感を使ってもとらえることができないので、考える必要がないのだとか。




