72話 ヴァーミックアッブル
リンゴ……一般的に、赤い色の林檎は、美しく、知恵の象徴とも、捉えられる。
では、昆獣林檎とは?
セレスティアルのアビスオークに実る不思議なリンゴであり、何度も品種改良が行われ、その名の通り、食べれば昆獣になれるリンゴである。
そもそも、《メーラ・ジャッロヴェルデ》というギルドの名前は、創設者ヴェルデの名と、リンゴを意味するメーラから取られ、ジャッロヴェルデは、緑黄を意味している。
・初期
ギルド《メーラ》……意味:リンゴ
・変化後
ギルド《メーラ・ヴェルデ》……意味:緑の林檎
・ゾル加入後
ギルド《メーラ・ジャッロヴェルデ》……意味:緑黄色の林檎
初期に関してだが、昆獣林檎の草案が、ヴェルデの構想にはあり、自然の力を用いて、実現する。
という、意思があった。
そのため、名前はリンゴ〈メーラ〉である。
誰もが口にでき、薬や、血清のように、副作用、痛みを伴うといった効果があるものに関しては、断念し、人間にも、魔人 (亜人:昆獣)にもなれるを理想とした。
リンゴという果実が与えるのは、知恵だけでなく、セレスティアル人からしてみれば、新たな導きでもあった。
我々、ホモ・サピエンス〈賢い人〉にとっては、知恵の象徴だ。
実際、セレスティアル人は、ホモ・セレスティアル〈天界の人〉という意味であり、我々人類とは、別の進化を辿った人類達である。
セレスティアル人におかしな点があることに、皆さんも少なからず気づかれただろう。
例えば、髪が派手な色だったり、(例:青、黄、緑)
魔法が使えたり、体内に魔力を宿していたり……
魔人という位置づけがあったり……
所謂、トライブ〈一族〉は、環境や、育ち方、血脈などが違うのに対し、ホモ・セレスティアルは、人間なのだが、進化の道筋が違っている。
この――セレスティアル――に訪れた数々の異世界人達。
ロックウェル・ヴェリタス、牙王ライオネル、そして、緋色の剣士ネカァだが、彼ら、彼女らは、ホモ・サピエンスである可能性が高い。
ホモ・セレスティアルとは、一線を画す。
そして、変化後 《メーラ・ヴェルデ》緑の林檎についてだが――セレスティアル――のリンゴは、緑の種だけではなかった。
林帝のヴェルデが、自信と同じ髪色の緑のリンゴを気に入り、その緑の林檎に、まず、再生能力や筋力向上の特性を与える。
その効果は、食すと適応される。
我々の世界で言うところの、ゲノム編集を行った。
インペリアルハーツ出身であるヴェルデは、僧侶でもあった。
その役割は、外海から伝わった、セソ教を布教すること。
彼は、布教はあまり行わず、魔法と医療を組み合わせた、メディオマギア〈医療魔法〉に、研究を注ぎ、なかでも、合成生物学という当時のなかでも最先端の学問に尽力した。
〈合成生物学における主要な技術〉
・CRISPR-Cas9
CRISPR-Cas9は、遺伝子編集の革命。
特定の遺伝子を切り取り、挿入し、修正することができる。
これにより、遺伝子の特定の部分を簡単かつ正確に編集できるようになり、合成生物学の基盤となる。
・オープンソース遺伝子パーツ
合成生物学では、遺伝子部品(BioBricks)をオープンソース化して、誰でも利用・交換できる。
研究者は標準化された遺伝子部品を使って、効率的に新しい遺伝子回路を設計・構築することができる。
・DNA合成
DNA合成技術により、人工的にDNAを合成し、細胞に組み込むことが可能。
これにより、遺伝子の改造だけでなく、全く新しい遺伝子を設計して、生物に新しい機能を持たせることができる。
・ 遺伝子回路の設計
合成生物学では、遺伝子を回路として設計し、細胞内で特定の反応を制御したり、調整したりする技術も発展。
遺伝子回路は、まるでコンピュータプログラムのように、入力に基づいて決められた出力を生み出す。
……となるわけなのだが。
ゾルが加入後、メフィストフェレスがその林檎に目をつけ、口にする。
彼女は、生まれながらにしてそのリンゴと相性がよく、見た目は同じでもリンゴにはいくつか種類があるのだが……
一部を紹介する。
蝶林檎……チョウやガの特性を得られる。
・身体的な能力や感覚の向上
・環境適応能力
・精神的な変化
蝉林檎……セミの特性を得られる
・生命力
・再生能力
・音声やコミュニケーション
・環境適応力
蟻林檎……アリの特性を得られる
・協力と組織力驚異的な力
・戦略的行動
・コミュニケーション能力の向上
蜂林檎……ハチの特性を得られる
・協調性
・作業効率
・攻撃的な防衛本能
・資源管理能力
・コミュニケーションの精緻化
兜林檎……カブトムシ、クワガタムシなどの甲虫類の特性を得られる
・外骨格による防御力の強化
・繁殖能力や生命力の向上
・食物の多様性に対する適応
・環境の変化に素早く対応する能力
飛蝗林檎……バッタ、カマキリなどの特性を得られる
・飛行能力
・跳躍力
・視覚能力
・適応力
・移動能力の大幅な強化
・環境に柔軟に適応できる
例を上げると、災害救助や宇宙探査などの分野で大きな進歩を遂げる……かもしれない。
蜻蛉林檎……トンボの特性を得られる
・飛行能力
・精密な運動能力
・強化された視覚
・空中での高速移動
・危険の回避
・長時間の活動や過酷な環境での活躍
・各国での新しい移動手段の開発
・スポーツや作業でのパフォーマンスの向上
蜘蛛林檎……クモの特性を得られるが、言わずもがな食べないほうがよい
・壁や天井を登る
・精密な運動能力
・強力な再生能力
・糸を使った道具や戦術の活用
・非常に多様で強力な能力
・危険回避能力の向上
・長期間の生存能力
・複雑な社会行動
・戦術的行動の向上
例をあげると、蜘蛛糸を使った建設や移動、災害時の迅速な救助、医療分野における再生能力の応用。
ただし、身体的な不便さや社会的な孤立、感覚的な過剰反応などのデメリットが生じる可能性も。
どちらかといえば、頭脳は人間のまま、体は虫といったほうが適切かもしれない。
なぜならば、毛むくじゃらになり、手は、鋭利な棘のようになり、複数の目。
誰が見ても気味が悪いと思うだろう。
故に、蜘蛛は昆虫ではないため、怪物のようになってしまう。
極めつけは、八本の足だ。
生活は不便になるだろう……
実は、メフィストフェレスは、特異体質であり、同時に複数の能力を用いたり、効果の持続が長かったり、様々な異名を持っているが、ヴェルデを好んでおり、このギルドの長になったと考えられている。




