56話 エリーゼのために
先程から様子がおかしかった。
歩を進める。あれ?なんだか、見たことある景色だな。歩を進める。あれ?さっきも来たような……
少なくともユニムはそう思っていただろう。
ユニム達一行は、ツリーマンを探して、ひたすらに歩いた。
その様子は、この物語の序盤である。オルダインへとユニムが向かう様子を暗示していた。
ユニムは、自他ともに認める方向音痴なので、おっと失礼、方向音痴の迷える青羊なのだ。
俗に、ストレイウォーターシープとも言ったりする。
ゼルドが思いつき、木に目印をつけることにした。
バツ印を通った木につけていく。
✗一本目
✗二本目
✗三本目
✗四本目
そうなのだ。ここまでは、よかったのだ。
普通であれば、繰り返しているのであれば、一本目の✗が目に入るはずだった。
ところが、ユニム達が目にしたのは……
✗四本目
「ちょっと待ってくださいよ」
思わず、声を漏らした。
理解できないのだ。
みなさんに少しだけヒントを差し上げる。
実は、オルダインは、フォーチュリトス王国の5番目の街。
ア メリア
イ ギリア
ウ ノ
エ ンシェント
オ ルダイン
ここまでは、お気づきだろうか?
先程の暗示にも、もちろん意味がある。
つまるところ、5がない。
さあ、どういうことだろうか。
もしくは、4を繰り返している。
種明かしだ。
5はスーペリア語でサンケ。
サンケ……ない。
✗の印があったのは、四本目。
つまり、エンシェントは4番目の街。
この街の4文字目は、「ン」である。
サンケない、から、ンを摘出する。
すると……
サケない。
ここまでくると、こじつけだが……
――避けられない――
となる。
運命とは実に奇妙なもので、天文学的確率でその事象を引き寄せてしまう。
運命
フェイト
デスティニー
デスタン
そして
ラ フォルトゥーナ
みなさんは、お気づきだろうか?
フォーチュリトスにて、ユニムが5番目の街でゼルドにあったこと。
これは、運命である。
誰が決めたのか。
じゃあ、5番目の街、オルダインはなんなのか。と気になるところだ。
オルダインの別名
オーダイン
意味 〔神や運命が〕定める、命じる、運命づける
調べていただければ、わかると思うのだが、6番目の意味である。
数奇な運命。
それは、ふしあわせな運命。
ゼルドは、なんの民なのか。
【奴隷】である
少しこじつけがましいかもしれないが、これが運命である。
そして、これもまた運命である。
「何をしているのですか」
「ただ、遊んでいただけですよ。賢者の域に行きたいだなんて、そんなこと微塵も思っていませんから」
「嘘に嘘を重ねても、心の足枷が増えるだけ」
「では、真に真を重ねれば……」
「それは、強い結託になります。かたい絆。結束。信頼。そして、ぼくらは、あなたのように嘘はつきません」
「いつからでしたか」
「気づきませんでした。目の前を見たら、いたんです。あなたが」
「見えるんですね」
ヴェルデの隣にいる彼女の名は、エリーゼ。
そんな――エリーゼのために――
今日もヴェルデは寄り添ってやる
ツリーマンではなかった。
それは、男ではなく、もはや女性でもなく、木であった。
動いているのか。
歩いているのか、わからないが、私達は、彼女の奏でる音を聴くことしかできない。
この遅咲きの森の案内を彼女はしてくれると言う。
「パープレット君に、会いましたか?」
「はい」
「それは、あなた達がつける紋章ですよ」
「いいのですか? 恐れ多いですよ。スペードの紋章をこの胸に刻むなんて、できかねます」
ゼルドは、何も言わずにその紋章を左胸に刻んだ。
黒色の心臓。
剣で貫かれた黒色の心臓。
滾る。
決して、止まらない。
時間を進み続ける。
秒針のように。
「スペードって時計みたいですよね」
「時間ですね。私も行かねばなりません」
エリーゼの奏でる音は、エリーゼが誰かのために奏でていることから、エリーゼのためにと名付けられた。
エリーゼの正体は、いまだわかっていない。
ひとつ言えるのは、止まっても、歩いても、走っても、流れる時間は同じだということだけである。
「ユニム様、パープレット様のもとへ戻りましょう」
「待つのだ。電気石が振動しているのだ」
「……え?」




