55話 万事上首尾
ユニムは、上を見上げる――何もなかった。
おかしいな。と思い。
ゼルドの肩をトントンと2回叩く。
すると、反対の腕に感触を感じた。
なんだろうか。と、思い、見てみると、鳥が停まっているではないか。
「ふふ……何しとるし」
思わず素っ頓狂な声を出しては、空気を荒く吸う。
その正体は天王子のティタインであり、語尾に「し」をつけていることからも、ティタインであると伺える。
「あれ? ティタインさんじゃないですか」
「そうだし」
「なんでここにいるのだ」
「知らんし。パープレットに訊くし。ふん」
「どういうことなのだ。ゼルド、パープレットとは誰だ?」
「あれ? ご存じないんですか?」
「お教えしましょう。
その名をパープレット、階級はあの四権英雄……名高き魔術師にして、優しい心の持ち主。
フォーチュリトス王国の代表である彼は……」
「さっきの奴だ」
ガサゴソと音がする。
「ええ、そうですね。お呼びですかユニムさん」
「聞いていたのか。ち、違うのだ」
思いがけない登場に、ユニムは、目を丸くする。
「なんで、ここに連れてきたのだ。赤青紫」
「赤青紫……? 私ですね。
実はですね、今回 お し ご と の依頼をしたいんですね。
この遅咲きの森には、動く木がありますが、例によって、樹木というものは、光合成を行います。
樹木は、生産者であり、動物は消費者でもあります。
その生態系がなんらかの者によって、乱されているんですね」
「何を言っているのかさっぱりなのだ」
「なんらかの者……何者なんですか?」
「その名を "ツリーマン" 動く木は、あまり珍しくありませんが、ツリーマンは歩きます」
「歩く?」
「おかしいではないか」
「実におかしな話ですよ。
ここ最近で、そのツリーマンの活動は活発になっています。
ですが、痕跡はあるのにも関わらず……誰も姿を見たことがないんです。
その擬態能力はナナフシのようであり、ナナフシは木の枝に擬態しますが、ツリーマンは、その名の通り、木に擬態します」
「ぼく達に、どうしろって言うんですか? パープレット様」
「そのツリーマンに しるし をつけていただきたいですね」
「しるし?」
「そうです。ツリーマンは、魔獣か魔人の可能性が高いです。
彼に気づかれないように、印をつけてください」
「どのようなしるしを……」
「こちらをお渡しします」
2人の手に渡されたのは……
「これは……剣の紋章じゃないですか」
「これをツリーなんたらにつけるのか」
「ええ、作用でございます」
ユニムとゼルドは、受ける取るとユニムの鞄にしまっておいた。剣の紋章は、全部で4つあり、その時は、2人はなぜ、4つ渡されたのかわからないでいた。
「♠」剣の紋章:スペード
古来より、スーペリアで国の民が身につけてきた紋章である。ハートを逆さにして、剣を刺したような形は、黒く、スペードマークは、一般的に「死」「剣」「騎士」などを象徴するとされる。
また、四季では冬を表すとも言われている。
諸説あるが、ハートに関連しているようで、「♡」は女性を表しており、「♠」は、男性を表しいるらしい。
真偽の程は、わからない。
「私はここで待っていますので……おっと」
「どうしたのだ?」
「電気石はお持ちですね? いつでも、連絡できるようにしておきましょう」
〈ユニムの電気石〉
【連絡先一覧】
:ブルースカイ
:クロノス
:ホワイトペッパー
【パープレットを承認しますか|】
【パープレットを承認しました|】
【連絡先一覧】
:ブルースカイ
:クロノス
:パープレット
:ホワイトペッパー
「ゼルド、ツリーなんたらを探すぞ」
「ええ、行きましょう」
「わたすも行くし」




