47話 剣靴の刃は変動
「お待たせっす」
なにかと人を待たせることが多い彼が、今回ばかりは…いや、今回も準備をしていたようだ。前回は勲章であったが……
「脚剣はお気に召したっすか?」
「おっ、剣靴まで履いてるじゃないっすか」
ゼルドの足元を、ゼクロスは、ジロジロと見ていたので、彼は何のことかすぐにわかった。
「シュード?ああ、この靴ですね。まあ、たまたまですけど」
アレクセイがほくそ笑んだ。
「合わせて100万ダイヤですね」
「いやあ、商売繁盛ですね」
本当か嘘かわからずゼルドは思案したが、 訊き返してみることにした。
「え、そんなにするんですか?」
所持金はいくらだろうかと、ゼルドは電気石を確認するが、1000ダイヤしか入っておらず、その額では到底払えるものではなかった。倍の倍の倍であるからにして、ここで働かせてもらえないだろうか。とも、考えていた。
その電気石をアレクセイは、こっそり見ていた。顎に手を当てて、片眉を上げると…
「仕方ないですね」
「私の質問に答えていただければ、差し上げましょう」
「では、質問です」
「思考とは、言葉とは、なんですか?」
ゼルドはその発言について考える。
「言葉」の意味。「思考」の意味。それが、わからなかった。
確かに、思考というものは我々が常日頃から頭の中で念じること、また、思うことであり、考えることである。
それを説明する。
もしくは、一言で表すとなるととても難しいことだ。
またその思考を口の外側に発した言葉というものを同時に何か問われると非常に難しいものであった。
ゼルドは、記憶の片隅からパッとひらめいた。
「…魔法じゃないですか?」
「どうしてそのように思うんですか?」
「思考とは、目に見えませんが確かに存在しています。それは魔法も同じことです」
「反対に言葉というものは、無数に存在するのに、対し、魔法にもいくつもの種類があるからです」
「お見事」
実は、この男アレクセイは、ゼクロスからゼルドのことを聞いており、彼が新聞好きだということはすでに知っていた。
アレクセイも新聞を読んでいたり、書いていた時期があったため、自身の書いた…
「思考とは何か?言葉とは何か?」 という、コラムに関して、ゼルドが読んでいるだろうと踏んだために、質問を投げかけたのだ。
言ってしまえば、それは、用意された優しさであった。
「本当にいいんですか?」
「あの、どうやって使うんですか?」
「店の奥に行きましょう」
皆で店の奥に行ってみると、そこには サンドバッグや木の像が置いてあり動きはしないものの対人訓練として扱えるようにできているのが一目でわかった。
ゼルドは、試しにその木の像へと向かって、脚剣をつけて、蹴ってみるが何も起きず どうしたものかと様子を見ていた。
「お困りのようですね」
「はい」
「ゼルド、そこをどくのだ」
「どうかしましたか」
「この木の像は壊れているに違いないのだ」
と言いながら、何気なくユニムは、その木の像に触れようとする。
「ユニム様、触らないほうがいいです」
「なんでなのだ」
「ユニム様が触れるとろくなことがないので…」
と言いかけると、ユニムが数歩下がりその反動で木の像に彼女の手が触れてしまった。
「おや?」
「どうしたことでしょうか」
「さがるっす」
ゼクロスが、剣を抜いた。
「あの…どうしたんですか?」
「おかしいっす」
はて、何がおかしいのか。私たちには、わからないが、ゼクロスはその異変に気づいたようだ。
「動き始めたならまだしも、この木は動いていませんよ?」
「あっ」
ゼルドは、その異変に気がついた。
動いてないない。その何気ない、ありふれた光景こそ、異常であり、ゼクロスは先程店の奥に入っていたからこそ、気がついた。




