43話 青羊のシツジ
「猛禽類も爬虫類もかわいいし」
ゼルドはその爬虫類という発言が気になり、少しばかり、訝しんでいた。
爬虫類と言っても様々な種類があるが、彼女は可愛いと発言していることからも、小型の生物ではないかと踏んでいたからだ。
「爬虫類…ですか?他にもなにか飼ってるんですか?」
「ブシとシツジだし」
ティタインは、ブシとシツジどちらも「シ」が入っていることから、名付け親はティタインであることが推測できるが、果たしてどんな生き物なのだろうか?
「それって職業の名前じゃないですか?」
執事とは、確かに職業の名前であるので、ゼルドはそれを、職業の名前じゃないかと聞き返した。
思いがけず、聞き返したので、今言った自分の発言に対して自分の言ったことは間違っていないだろうか。とも考えたが、彼女の発言を待ってみることにした。
「ふっ、違うし」
「シツジは青羊だし」
「青羊」について
青羊は水を纏った羊であり、私たちの世界でよく見る羊は白い毛で覆われているが、それとはまた違って、青羊はその毛が生えておらず、水でできている。
青羊にも様々な種類がいるが魚を飼っているものや、海藻が生えているもの、中に水泡ができているもの、淡水の者、海水の者などなど…たくさんの亜種が存在することが確認されている。
また、青という色は赤という色の反対色であるが、赤狼と対局の位置に値する魔獣であると考えてもらって構わない。
そもそも、血液と水は正反対の性質を持つ液体であり、また狼と羊も捕食者と捕食される者の関係に位置付けられているが、このセレスティアルにおいて、そういった捕食者と捕食される者、としての関係性が曖昧になっており、どちらも魔獣として存在しているため、弱肉強食などの優劣がつかない。
「青羊だったんですね。知っていますよ」
「ゼルドなら、知っていると思ったし」
「そう言っていただけると、嬉しいですね。ありがとうございます」
「ちなみに、ティタインさんの異名ってなんですか?」
「分割だし」
ゼルドは、不思議に思った。
これまでに、永遠のアリスや語らずのヒマリという天王子に出くわしたが、彼女たちはエターニティやインプリシットという特有の異名があったが、ティタインに関してはディビジョンというこれまた特別な異名がついているからだ。
なぜ、不思議に思ったかといえば、ディビジョンと一言で言っても複数の意味があるからだ。
どの意味がふさわしいのか、ゼルドはわからないままでいた。
それは分割なのか、それとも区別なのか。はたまた、割り算なのか。
ゼルドは新聞を読んでいる時に、コラムに数学の問題が書いてありそれを解いていたために、以前、ブルースカイこと"氷帝"のセレストと話した時に「1」を聞いて、数式が浮かぶと答えたのではないかと推測できる。
だが、あくまでその数字、算数、算術、数学というものは「誰でも解けるように作られている」という考え方が真っ当であり、ゼルドはそのことを知らないために、自分ができたことが特別、また、優秀だったのではないかと考えており、一部、自身が秀才なのではないかと考えることもある。
そのため自信過剰だが、あまり自信過剰になりすぎるのも良くないことではないだろうか。と、ゼルドは思っていた。
「あの、ちょっといいですか」
「ディヴィジョンとやら、その"シツジ"はモフモフできるのか?」
「プカプカしとるし」
「触りたいのだ」
「ちょっとユニム様、遮らないでくださいよ」
「ゼクロスさん? どこに向かっているんですか」
「気になるっすか? へへ」
「そりゃあもちろん。ですよね? ユニム様」
「わたしは、プカプカしたいのだ」
「ほんとにこのお方は、勝手にしててくださいよ」
「で、どこに行くんですか?」
「その店をみんな、アルドラインって呼んでるっす」
「聞いたことあるっすか?」
「スーペリアに関しては、全く知らないので、わかりません」
武器屋アルドラインの店主アレクセイは数字に強く、以前から古代の遺物について研究をしていると新聞でも報じられている。
だが 、一方で現在はなぜ武器屋を営んでいるかは、分かっていない。
1つ、考えられるのは遺物の解読を行っている際に何かしらのヒントを得て武器を売ること、または与えること、販売することが重要なのではないか。と、彼は考えるたがために武器屋を経営しているのかもしれないが、真意のほどはわからない。
「ゼルドさん、父上から聞いたんすけど、黒い吹雪こと、トンペッドネジノアを扱ったらしいっすね」
「はい、それがどうかしたんですか?」
「その武器を最初に扱っていたのは、父ネロです」
「え?」