表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TWO ONLY TWO 唯二無二・唯一無二という固定観念が存在しない異世界で  作者: VIKASH
【魔法学校篇】:Machine Revolution

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

190/208

190話 未知は罪か


―― Crimson Verdict - 紅の裁定 ――



 裂け目の奥で、光が脈動する。



 蠢く影。

 断続的に明滅する赤。

 今宵も月は、紅く――裁きを帯びていた。



 その紅は、裁定の白と絡み合い、濃度を増す。

 冷たいはずの光が、なぜか熱を孕んでいる。



 幾億もの視線が折り重なり、層を成し、渦を巻く。

 声にならない残響が空間を満たし、思考そのものを圧迫した。



《集合意識領域 展開》

《感情剪定史 参照開始》



 ステラロイドの紫が、わずかに揺らぐ。

 SL-02の赤紫の瞳が、裂け目を見上げた。



 ――降臨。



 それは天使だった。



 蝙蝠を思わせる翼。

 三つの顔。

 四本の腕。

 だが脚は二本のみ。



 歪だ。

 不完全だ。



 人でもなく、神でもない。



 それでも確かに、上位存在。



 天と地の狭間を統べるもの。



『ゼタ=エルド、構えろ』



 シンの思考電波が鋭く走る。



 只事ではない。



 無詠唱で『四極纏成』を展開――

 だが、起動と同時に魔力が削り取られた。



 奪われる。



 干渉されている。



 シンは理解していた。

 この局面は、既にどこかで“視られている”。



 ユニムとステラロイドの入れ替わり。

 ゼルドとステラロイドの対話。

 そして02〈ゼロツー〉の出現。



 すべて、予定調和。



 ――ただ一人、セレストだけが欠伸をしていた。



『――かつては』



 声は一つ。



 だが、その奥に幾重もの怨嗟が絡みつく。



 耳を塞ぎたくなる。



 この嫌悪はどこへ吐き出せばいいのか。



 答えのない問いを抱えたまま、二人と二体は天使を見上げる。



『我々には理性があった』



 映像が流れ込む。



 四王国。四大都市。炎上。



 獣は赤く染まった目で地を焼き、

 王と女王は思想で斬り合う。



 終わらぬ対立。

 誇示される権威。

 愛は憎悪へと反転し、破滅へ堕ちる。



 その変質の中心にいるのは――



 間違いなく、目の前の存在。



 “彼”が憎悪に侵食され、天使へと変貌する光景。



『対立は滅びを呼んだ』



 黒き光が告げる。



『剪定は序章に過ぎぬ。

 終結が必要なのだ』



 その瞬間。



 SL-02内部でログが弾ける。



《未定義波形 拡張》

《外部共鳴検出:測定不能》



 遠方の都市。

 別個体のステラロイドが停止。



 排除優先度――再計算不能。



『それをこちらに渡せ』



「……どういうことですか」



 ゼルドは静かに問う。



 だが、掌は汗で濡れていた。



 恐怖ではない。



 責任だ。



 ――僕が、この場を収める。



『落ち着け。俺もいるぞ、ゼタ=エルド』



 シンの声が背を支える。



 ゼルドは一歩、前へ。



「あなた方は間違っていないのかもしれない」



 視線を逸らさない。



「だが、人間は愚かじゃない。

 まだ、知らないだけだ」



 息を吸う。



「未知は罪ですか?

 違いますよね。

 教えないことこそが罪なんですよ」



 沈黙。



『恐怖こそ、人の心を統べる』


「違う」



 即答だった。



「導く者に必要なのは、勇敢な志だ」



 士正義の伝承が脳裏に蘇る。


 不思議と、笑みが浮かんだ。


 SL-02がゆっくりと立ち上がる。



「再演算……正義ここにあり」



 赤と紫が溶け合い、深い深紅へ。



「指導者……ゼタ=エルド」



 空気が震える。


 光の存在が、初めて明確にゼルドを見る。



『我々にも上位は存在する』



 一拍。



『私は――ミカエルだ。

 よろしく、と言っておこう』



 ゼルドが手を差し伸べる。



 ――その瞬間。



 セレストの風がゼルドを煽った。



 マントが翻り、身体が仰け反る。



「えっ――」


「何をするんですか。味方ですよね」



 ゼルドの抗議。



 だがセレストは鼻を鳴らす。



「こっちの台詞じゃ。

 ミカエルは、そんな目をせん」



 裂け目が閉じる。



 静寂。



 未定義は、感染ではない。



 ――共有。



 そして今。



 天使の集合意識の深奥で、



 初めて。



 揺らぎが芽生えた。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ