表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/48

17話 チャージ、チェンジ、電気石




「ゼルド殿、あの緋色の剣士ではないか?クロノスは現在の四権英雄であるぞ」


「そうですよね…」


 ゼルドはクロノスについて、1人考えあぐねていた。

 (うわさ)によれば、クロノスも黒い装飾品を身につけているらしい。

 よって、こうは考えられないだろうか?

 いつからか、ゼルドは黒い装飾品を身につけていた。それが何を意味するのか。


 クロノスとアルジーヌは恋愛関係にあった―――

 愛を(はぐく)んでいくうちに一人の男の子が生まれた。


 それが………だとすると、名前がおかしなことになる。

 ゼルドは自分でも合点(がってん)がいった。ゼルノス――?いや、アルノスと名付けられてもよかったのではないか?

 それに対し、ぼくはどうだ?かすりもしていない。

 それにだ、四権英雄と海内女王が、自分の両親な訳がない。そんな高貴な子供が奴隷にされるだろうか。実におかしな話である。

 きっと、もっと、普通なのではないか?

 なぜなら、自分が普通だから・・・ああ、もう考えるのはやめよう。


 ユニムがポンと彼の()に手を置く。

 ゼルドはその因果(いんが)により思い出した。


 ひとつ、この少女によって、勲章(くんしょう)が変わったこと。


 ふたつ、銀の弾丸(シルバーバレット)が手に張り付いたこと。


 いつもそうだった。()に手を触れていたんだと。


 このやるせない気持ちも、その力で吹き飛ばしてほしい。ゼルドは心からそう思った。


「めそめそするな。男の子だろう」


―――別にめそめそしていた訳じゃない。くよくよもしていない。その笑顔を、()つ真剣な顔つきを見るだけで、心が浄化されていくように安らぐんですよ。


―――あなたは、ぼくにとって、女神のような存在なんです。


「はい」


 ゼルドが気前よく変事をすると、ホワイトペッパーがニヤニヤしている。

 ゼルドの行動がおかしかったのだろうか? 

 それとも、下世話な話でもするつもりだろうか。


「おふたりさんよ。電気石はもちろん持ってんだろうな?」


 ゼルドが「あ」ではなく、「お」の表情をすると、何かを思いついたように、口から言葉を(つむ)ぎ出す。


「気をつけてください。め………ユニム様」

河童(かっぱ)のカツアゲです」

()げるのは豚だけで十分です」


成程(なるほど)。トンカツであるな。」


「解説いらないのだ」


「いや、待ってくださいよ。(わらべ)カツ?いや、わらじかつですね」


「誰が上手いことを言えと言ったのだ。きいていないぞ」


「いやあ、照れますね。そんなに褒めないでくださいよ」


「褒めてない」


「………で、持ってんのか?」


「もちろん。ここに」


 ゼルドは(ふところ)から、電気石を取りだす。

 黒い光沢(こうたく)のある石。

 外見は、黒曜石(オブシディアン)のそれだった。


「あるぞ」


 ユニムはいつもの(かばん)から、奥の方にしまってあった電気石を取り出す。

 奥から取り出したため、多少の時間が掛かった。ユニムの鞄には何が入っているのだろうか。

 おそらく、育て親である、おじさんかおばさんからもらった品々だろう。

 ある時は、ゼルドのためにパンを取り出したりもした。ゼルドはそのことを覚えているのだろうか。ユニムには、わからない。


 その(かばん)は、皮でできているのか、丈夫(じょうぶ)そうだ。

 留め具が青色でできているため、髪色と相重(あいかさ)なって、見栄(みば)えがいい。

 まあ、本人にはわかりもしないことなのだが・・・


吾輩(わがはい)も持っている。

 もしもの時、困るのである。

 決して、人肉しか食べれないわけではないのだが、吾輩のこの面構(つらがま)え。

 なにより、赤い瞳の人間はそういないのである。勘違いされることもよくあるものだ。」


「人肉がなければ、何とやらですね。」


「違うのだ」


「けっ、パンがなければ、ケーキを食べろってか?俺はきゅうりが食いてえよ。」

「じゃねえな、2人とも持ってんのな。いくら入ってる?」


「あ、そうですよね。金額については、言われてないんですよ。ブルースカイさんがいうには、プラチナ銀行でおろしてきなさいだとか?」


「一文無しってわけかよ」


「早起きは三文の徳ではないか。私は、毎日早起きしてるぞ。積もり積もって、千両になるのだ」


御伽話(おとぎばなし)かよ。まあ、いいぜ。とりあえず、いいこと教えてやるよ」





「電気石」

 電気石には、表に合計で"12個の出力装置"が(そな)わっている。

 側面は、真っ黒であるが、黒曜石の断面のように、澄み渡るような黒色をしている。

 例えるなら、(ひとみ)のような。そんな奥深さを感じられる。

 縦長の平たい石なのであるが、用途(ようと)としては、我々の世界で言うところの財布である。



「使い方」

 数値を入力する。例えば、100円の買い物が行いたい時。1を一回と0を二回入力する。

 私は、先程"12個の出力装置"があると言った。"12個"のうち、10個は、"0~9"である。

では、それ以外は?

(アスタリスク)」と「(シャープ)」である。

 では、つづきだ。

 相手に電気を渡したい時、「♯」を押し、先程と同様100と入力する。そうすれば、購入完了である。

 逆に受け取る側は、「*」を入力すれば、受け取ることができる。



「使い方は知ってるよな?」


 にんまりと笑うホワイトペッパー。


 何か企んでいるのだろうか。


「そうかよ。じゃあ、『*』と『1994』を押してみろ。」


 違和感に気づいたゼルド。


「その入力は(あやま)りです。受け取るのに『*』を押すのに、1994ダイヤを誰から受け取るというのですか!

 ホワイトペッパーさんが、電気石を操作しているようには見受けられませんが・・・」


「押したのだ」


「なにしてるんですかぁ。ユニムさまぁ」


 彼女は、ゼルドの事などお構いなしである。


「裏面を見てみろ。何が映る?」


 ひっくり返してみる。すると………



 【連絡先】:ブルースカイ

       ホワイトペッパー



「これはなんだ」


「もう、わかるよな?」


「どういうことなのだ」


「離れていても、俺と会話できるぜ」


 ホワイトペッパーは、目をぎらつかせ、いかにも自慢げであるが、ユニムはこれといって魅力(みりょく)を感じなかった………

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ