16話 金が照らすのは安寧か、それとも不安か
歩きながらホワイトペッパーの話を聞くユニム達。その内容は「セソ教」である。
「セソ教」
ホワイトペッパーが語るには、開祖者"セソ"により、開かれたとのこと。にも関わらず、その多くをユニム達は、知らない。
セソが何者なのか。いつ開かれたのか。わからないことが多いそうだ。
だが、我々のよく知っている様々な宗教と一致している点も多いことから、どこからか、宗教が持ち込まれたのではないか?とも考えてしまうが、それはありえないことなのだ。
なぜならば、私以外にこの異世界「――セレスティアル――」を知る者はいないのだ。
ホワイトペッパーは、それ以外に何を話したのかといえば、自身の誕生した国で仙人だった"ゴジョウ"は、他の仙人と共に、国を創り上げたという。
また、"ジュクウカイ"なるものも、話しており、その全貌は謎に包まれており、どこにあるのか、何があるのか、その全てを師匠である"ゴジョウ"だけが知っており、他の仙人達と共に旅したという。
ホワイトペッパーは、"ジュクウカイ"については多くを語らず、あまり知らないのではないか。と伺えた。が、ひとつ謎めいた発言をしている。彼曰く―――
「聞いて驚くなよ。それは、海で、空なんだよ」
そして、ここは………
〜【ゴールドコースト】〜
その後しばらくして、ユニム達は、ゴールドコーストへと、たどり着いた。
よく見てみると、海岸が光り輝いているではないか。
「輝いてます。ユニム様見てくださいよ。海が黄金です。ここが黄金の泉があるとされる。黄泉の国ですね」
バンザイのポーズをしながら、海に体を向けるゼルド。
「ちげぇよ。全部金だ」
「信じられねえかもしれねえが」
「今は金色だけどよ。昔は、青色だったんだぜ」
鼻腔を押さえながら、むず痒いのか、ひとつ咳払いをするホワイトペッパー。
格好をつけている訳ではなさそうだが、いつもにまして皿が一段と輝いている。
「吾輩もよく知っている。
まるで、あの頃の光景が幻想だったかのような見晴らしであるな。」
「これもトライデンスの影響であるか。三叉槍殿………」
「ああ、間違いないだろうな。トライデンスによって金、銀、銅の価値が悪くも下落した」
「今じゃ装飾品にしか使われていないからな」
「オブシディアン、ダイヤでさえもその価値を知るものは少ないのであろう。」
「黒曜石や金剛石がこの国の象徴だったのにな。とんでもねぜ師匠」
ゼルドが顎に手を当てる。なにか考えごとをしているようだ。
「ん?オブシディアンって、黒いんですよね?」
「ああ、そうだな」
それに頷くホワイトペッパー。
「あの……アルジーヌさんの耳についていましたよ。ピアス…ですかね?」
「おい。ちょっと待て。アルジーヌってよ。まさか、『黒拳のアルジーヌ』か?見込まれたのか?」
ホワイトペッパーの脳内では、「ああ、そういえば、男狩りとも呼ばれてたっけな」との他愛のない連想がなされていた。
「見込まれた?あ、いえいえ。とんでもございません。僕は客人としてもてなされましたよ。そうですよね。ユニム様」
「そうだ。海内女王のアルジーヌは私の目標だ」
ホワイトペッパーの喉元である人物の名前が引っかかっていた。
「…気になってたんだけどよ。”ブルースカイ”って誰だ?」
「セレストであるぞ。三叉槍殿」
「・・・え?」
ゴールドコーストを横目に歩いていく。
「セレストってよ。俺の聞き間違いじゃなけりゃよ。トライデンスの戦友だよな・・・?」
「なんで、それをもっとはやく言わないのだ。凄いことではないか」
「吾輩から話そう。セレストは自身の名前を酷く嫌っている。
今では、名を変えて、ブルースカイと名乗っているのだ。理由は聞いたことがない。もちろん、その有名さから、顔も覚えられている。よって、隠れて生活していると思えば、ひょこりと突然現れる。
それが、セレスト…いや、失礼。ここでは、ブルースカイと呼んでおくべきか。
まさに神出鬼没そのもの。吾輩も会うのに苦労したものだ。
昔の話ではあるが、"氷帝のセレスト"という異名まであったそうだ」
重たい腰を上げたかのように、セレストについて語るファング。
「ブルースカイねぇ。へぇ」
三叉槍ことホワイトペッパーは何度か頷くと、宙を見据えては、ユニムの頭に視線をやる。
「確か青髪だったような」と、考えている。ユニムとの僅かな共通点だが、特別驚いたりはしないようだ。
それを見かねたユニムが、「なんだ」と言わんばかりの表情をしている。
ただのよく笑うおじいさんだったと認識している、ブルースカイことセレストについての質問をする。
ユニムの中では、「おじいさん」と認識されているため、ユニムは、「おじいさん」から言葉を発しようとしていた。
「おじいさんはそんなに凄いのか」
ホワイトペッパーは1度瞬きをする。驚いているわけではなく、ごく自然な行動だ。河童は皿だけでなく、目も乾くのだろう。
「おじいさん?あぁ、ブルースカイのことなのか。
もちろんだとも。伝説の四権英雄だぜ。四人の内の1人だからな。」
「俺の知ってるかぎりじゃ、セレスト、トライデンス、グリードグリーン………あれ?あと誰だっけか?」
「クロノス………」
ゼルドがおもむろに呟く。その名前を新聞で見たことがあったからだ。
ゼルドの知っている限りでは、「スーペリアの四権英雄ではないか。」という憶測である。クロノスは四権英雄であることからも、"生きる伝説"として、この四王国に存在している。