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TWO ONLY TWO 唯二無二・唯一無二という固定観念が存在しない異世界で  作者: VIKASH
【魔法学校篇】:Forest and SkySea

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150/156

150話 氷帝のセレストの孫

 


 ――Descendant(ディセンダント)末裔(まつえい)――



 キールトレインの車内の静寂を破るように、セレストは口を開く。



「で、どこまで話したかの」



 ユニムは、叱咤激励のごとく「マダム・ウィッチ校長との関係性だっただろう」と言う。


 彼女は慣れない手つきで

 帝国の心〈インペリアルハーツ〉

 で、よく獲れる緑魚の串焼きを頬張る。


 余程熱かったのか、水面から顔を覗かせる

 鯉のように口をパクパクとさせる。



「お、そうじゃった。そうじゃった。

 あやつとわしとの『()()()』じゃったな」



『出会い』を、強調している。

 相変わらず、面白いおじいさんだ。

 ユニムもそうだが、シンでさえ苦笑いをしている。



「それはもう美人〈べっぴん〉じゃったの。

 本当の顔を知るものは、誰もおらんかもしれんの。

 ほっほっ」



 鼻の下を伸ばしては、ハンドルを器用に回す。

 時折(ときおり)手で何かを払うようにして

 前方めがけて手を振っている。



 ――すると、吹雪が視界から開ける。



 彼、ブルースカイ/セレストには

 ワイパーさえ必要ない。


 タバコも吸わないだろうから

 ライターも必要ない。


 だが、サイダーの弾ける(あぶく)のような浮遊体を空中作り出しては、その中に魔法で映像を映し出し、若き日の彼自身を映し出していた。


 ()(はや)、どの魔法をどのように応用すれば、こんなことができるのか。

 わかりもしないが、彼は説明を続ける。



「五十歳年上と聞いた時は、流石に腰を抜かしたがのう」



「そうなのか。校長は何歳なのだ」



「勇者全盛の時代から生きているそうじゃ……

 確かのう、六百なんたらと言っておったぞい」



『人は見かけによらない』



 シンの言葉が釘にようにトゲがあった。


 ユニムの胸に、刺さりはしないが

 実は、ユニムだけが知っている「エルドの秘密」を知っているのではないだろうか。

 ユニムは四肢を、十字架に張り付けにされた気分だ。



「ほっ、そうじゃのう」



 ブルースカイはハンドルを器用に急回転させ、車体を傾ける。

 アルキメデス魔法学校の石橋を渡っていく。


 ユニムはその発言にたちまち驚き

 氷のように固まっている。


 ユニムを見兼ねて

 ブルースカイが閉ざされた口を開く。



「なあ、ユニムや。

 お主の親がどうしとったかは知らんがな?

 わしは賢者の一人として

 責任をもっとるつもりなんじゃ……」



 ユニムは、ブルースカイ/セレストにいくつも質問をするが、彼の息子にしてユニムの父親に関しては、語りたがならない様子だった。


 秘密にしたいのか。

 本人希望で隠したいのかわからなかった。


 ユニムは、賢者の孫という点に

 ここの誰よりも驚きを隠せないでいた。



 整理すると……


 ユニムが驚いているのは

 父方の祖父と祖母は

 祖父は

 賢者にして元四権英雄のブルースカイ/セレスト

 祖母が

 海内女王のマダム・ウィッチ


 ……に違いないらしい。



「校長が、わたしのおばあちゃんなわけないだろう

 ナディアちゃんと変わらないではないか

 六百なんたら歳には見えないのだ」



「ん? ナディア? 

 ああ、アルジーヌじゃな。

 また、その話も聞かせてほしいのう」


「医療魔法は発達しとるからのう

 アンチエイジングも

 魔法でちょちょいのちょいじゃ」


「ところでシンや。お主もじゃろ?」



 セレストは皮肉たっぷりに、シンに訊ねる。

 心の内では、ひとり考えていた。



――何者なんじゃ

  魔力が一切感じられん

  奇妙な奴じゃ



 シンは、動じない。

 澄ました顔で、窓の外を眺めていた。



「本当にわたしは……おじいさんの孫なのだな?」



「そうじゃというてるわい。

 なんじゃ、気づかんかったかの」



「わかるわけないではないか」



(かく)(せい)()(でん)じゃろうが

 わしの青髪をものの見事に受け継いでおる。

 ふっはっは」



――え、今笑うところあったか?

 と、シンは考えて、腕時計を見ていた。



 時刻は午後二時二十分。


 晩飯には早すぎる。

 昼食には遅い。


 だが、少し小腹が空いたのか。


 シンがブルースカイに「食糧はあるか?」と尋ねる。

 返事が返ってこない。


 不愛想だなと考えていると

 パンを渡された。



「栄養価たっぷりじゃぞ〜」


「そうか。

 上手そうだな。ありがたい。

 いただく」



 一口噛めば、パンの柔らかい感触が口いっぱいに広がる。

 かと思えば、ピリッと辛い。

 マスタードとケチャップが入っている。


 ホットドッグだったそうだ。

 ソーセージは、羊の腸に肉を詰め

 丁度いい長さに切ったもの


 肉汁があふれ出ている。

 懐かしき日本を思い出す……



「なんじゃ? 泣いとるんか?」


「違う。辛かった」



 『シン』は、ブルースカイという賢者にいくつか訊いておきたかった。


 このユニムという女児の祖父だと

 知った時は驚いた。


 試しに、質問を投げかける。



「賢者よ。月を見て、何を思う?」



「ほう? 試しとるのかの? ええじゃろ」



「どういうことなのだ」



「ユニムも『(てん)(のう)()』じゃ。

 考えてみ、『月を見て何を思う?』

 とな、ふっはっは」



「ぐぬぬ……」



 セレストは意に介さず答える。



「孤独なんてどうかの? 気に入るといいがの」



「孤独か……」



 帝国の心〈インペリアルパーツ〉


 アダマス王国


 そして、フォーチュリトス王国に辿り着く。


 樹空海〈ジュクウカイ〉は

 どこにあるのだろうか?



「加速するぞい。

 お二人さんや、しっかり捕まっておれ」



「わかったのだ」



『承知した』



 アメリアの大地をキールトレインは駆けていく。


 セレストの魔法で周りには見えないようだ。



 順に……


 イギリア

 (ギルド、メーラジャッロヴェルデ本拠地)


 ウノ

 (フォーチュリトスの王城街)


 エンシェント(まで)

 (ユニムの故郷)


 そして、オルダイン(ゼルドの故郷)へとキールトレインが差し掛かる。



『ここがそうだな。

 漆黒の森〈ブラックジェットフォレスト〉だな』



「ゼルドから、幽霊がいると聞いたぞ

 大丈夫なのか」



「何抜かすかと思えば、そんなことかの

 実は、この上に仕掛けがあってな

 ふっはっは」



「どういうことなのだ」




 天へと向かって、駆けていくキールトレイン。

 と思いきや、オルダインの(きょ)(だい)(じゅ)(みき)を走っている。

 物理法則に反するその光景は魔法の応用か。


 ()(てん)(ろう)のような大木がいくつも生えており

 暗闇に近い。


 キールトレインの前方のライトで辺りが照らされる。


 巨大な葉が日光を(さえぎ)っている。


 その最中、キールトレイが巨大樹の葉の中へ入った。


 すると、白い(もや)が……



「嘘だろ……」



 シンが思わず声を発する。


 雲は標高二〇〇〇メートルから、発生する。


 巨大樹の葉と分厚い雲が入り混じっている。



 キールトレインのエンジンを噴かせ、これでもかと垂直に登っていく。



「レントゥ、踏んばりどきじゃ」


「はい、旦那様〜」



 視界が開ける。

 すると辺り一面真っ白な平原と地平線があった。



 真上には、青い球体があったという……

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