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TWO ONLY TWO 唯二無二・唯一無二という固定観念が存在しない異世界で  作者: VIKASH
【魔法学校篇】:Anděl a Vlk

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149話 意気消沈

 


 ――R(アー) U(ユー) DOWN(ダウン)?-やる気ある?――



 ユニムは『シン』に呼び出される。


 とある方法で、氷帝のセレストとユニムの関係性を調べたという。


 シンは、あまり詳しいことは言わなかったが、今でも鮮明に焼き付いている。



「おじいさんだとさ。あんたの……」



 それってどういう……


 セレストとは、電気石で連絡先が交換してある。


 訊いてみるか。


 しかし「祖父なのか」「そうじゃ」という会話の流れだけは、どうしても想像できなかった。


 なんと訊こうか。


 考えに考えた挙句、マダムウィッチ校長にセレストのことをさり気なく訊ねてみるが、これといった情報は得られない。


−欺禍のボレアス−という情報を掴んだ。


 ビッグシークレットに違いない。


 だが、四皇(しめらぎ)(じゅう)は今は求めていない。


 求めているのは、血縁関係だ。


 知りたいのは、家族かどうか。


 未だに、あのシンがどうやって調べたかわからないが、本当に奇妙な男だと思っていた。


 このアルキメデス魔法学校に来てからというもの

 ユニムの体調に変化が起き始めていた。


 夜、なかなか寝付けない。


 夢を見なくなった。


 あの影を、感じなくなった。


 その代わりに、弊害(へいがい)なのか知らないが視線を感じる。


 窓が開いていて、ふと視線をやると何もいない。


 不思議な事が続いていた。



 あれからというもの、マスタングやゼルドには会えなかった。


 四王国の全土から毎日のように客人がいるが、その中に知っている人物がひとりもいない。


 改めて、世界の広さ、この国の広さを知ることとなった。


 海内女王になるということは、それは凄いことなんだろう。


 毎日、エッセイを書き、魔法を覚え、模擬試験に挑む。


 時に応用魔法を考えて、新しい魔法の考案の検討をしたりする。


 階級試験の時にはあって、魔法学校にはないもの



「新しさ」ではないだろうか。



 毎日同じことを淡々とこなしていく中で、それは単なる「繰り返し」としか思えなくなってしまったそうだ。


 ハヤタカからは怒られ、クロノスからは「期待してたんだがな」と吐き捨てられ、いつも隣に座っているシンも今では、前の席に座っている。


 時間とはなんなのだろう?


 時間について、疑問を持つことが多くなった。


 もし、時間を操れたらゼルドに会える。


「すぐに戻ってくる……」そんな空虚な言葉を書き出しては、白紙のエッセイを見つめていた。



――今日もゼロ点か……



 ユニムは希望を忘れていた。


 所謂(いわゆる)燃えつき(しょう)候群(こうぐん)


 階級試験で『天王子』まで(たっ)してしまったので、高すぎる夢が幻想のようになり、何もしたくなくなる。


 無気力で、やる気なんてものはほとんどない。


 模擬試験の時だった。


 完全に戦意喪失してしまい、ハヤタカに休憩させられた。

 見てるだけだったが、これほどまで退屈だとは思わなかったそうだ。



 【現在の天王子ランキング】十八位



 海内(かいだい)(じょ)(おう)になるまで、残り十七……


 もう半年は経っている。



 ――季節は冬になった。


 雪が降り、アルキメデス魔法学校は冬休みだ。


 寮で冬を越す者もいれば、家に帰る者もいるそうだ。


「マスタングおじさんに会いに行くか」と心を決め、独り言を(こぼ)してはノーカラーコートを着る。

 白いニットが首元から(のぞ)く。


 今日は、黒の気分だったそうだ。


 コートは黒く、黒の崇高な剣士のクロノス/ネロや、あのゼルドを彷彿(ほうふつ)とさせる。



 『でも、わたしのパーソナルカラーは青だから……』



 膝下まで履いた靴下は、青かった。

 差し色のようであり、闇に(たたず)むユニムのようだった。

 なにげなく、ローファーのつま先でトントンと、地面を叩くように二回蹴る。


 ユニムは、もうすぐ十三歳だった。


 お(しゃ)()だってしたければ、恋愛だってしたい年頃(としごろ)


 クラスの男子か男性かもわからない男たちに目をやっては

 この学校は恋愛禁止なのだろうかと考えてしまう。



 そこへ、あの『シン』がやってくる。



「冬休み暇か?」


「暇だが……」



 照れ臭そうに、視線を外す。

 正面から顔を見れなかった。



「つきあってほしくてな……」



 意識してしまう自分がいた。


 ダブルミーニングではないとわかっていたが、悪くない(つら)をしている。


 少し照れくさいので、心で語りかける。



精悍(せいかん)な顔つきだな』


『馬鹿にしているのか。顔で褒められたことはない』

 


 送迎(そうげい)用のキールトレインがやってくる。

 無人で動いているものが多い。



――なんか、気まずいのだ



 少なくとも、ユニムはそう感じていた……


 キールトレインはというと

 いつもより、荒い運転をしている。

 どうかしたのだろうか?


 

「レントゥ、何をしておる」



 この声は……

 目の前で止まると、その声の正体の疑心暗鬼が確信に変わる。



「おお、珍しいお二人さんじゃな。

 なんじゃユニム、浮かない顔しとるの」


「おじいさんではないか」


「ふっはっは。

 さて、どこに行きたいかの?」


『樹空海に行きたいんだが』


「構わんじゃろ。

 ユニム。どうするんじゃ?」


「わたしも、行くのだ」



 キールトレインが発車する。


 窓から顔を出し、遠ざかっていくアルキメデス魔法学校を、ユニムは見ていた。

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