143話 鏡の中のアリス
――Blink-テレポート――
「さあ、魔法授業の時間だな。
「俺が教えるのは、応用魔法。瞬間移動だ。
「瞬間移動と一言で言っても多種多様だ」
「①対象を移動させる
②自分を移動させる
③自分と対象を移動させる」
「まあ、こんなところか」
「今回は、②の『自分を移動させる』を伝授する。
「模擬試験の時に、役立つかもしれないからな。
「ぜひ、覚えてくれ」
「では、ホムラ、教室の一番後ろに立ってくれ」
「かしこまりました」
ホムラが駆け足で移動する。
「やり方はこうだ。
胸に手を当てて、瞬間移動したい人物を思い浮かべる。
そして、『テレポーテーション』と……」
と、ハヤタカが唱えるとハヤタカの居た位置には、ホムラが立っている。
皆が後ろを向くと、ハヤタカがいる。
目では捉えきれない。
とても素早い連携だった。
「いいか。このように、極めれば……」
今度は、ハヤタカの位置にホムラがいる。
皆、不思議に思っている。
前から声が聞こえるので、振り向くとハヤタカがいる。
「……言葉を発さなくとも、瞬間移動できる」
「ただし、この『テレポー……』おっと。
「この瞬間移動には、いくつかの条件がある。
「条件は、それぞれや各々によって異なってくるわけだが……」
「俺の場合、ホムラとしか瞬間移動できない」
「それは、縛りのようなものであり、特性でもある」
「では、皆ペアを組み、行うことだ。
「わからないことは、わからないままにせず、すぐに質問すること? いいな」
と、返事をした矢先だった。
ハヤタカの隣に、魔王シンが白い霧と共に現れる。
「生ぬるい。これでいいか?」
「シン。上出来だ」
ユニムは、ペアを探していた。
隣にいたシンはひとりでに使いこなせてしまっているからだ。
綺麗な『アリス』にするか。
面白い『ティタイン』にするか。
可愛らしい『ヒマリ』にするか。
気前のある『ベル』にするか。
ティタインは『トシ』と瞬間移動している。
ヒマリはベルと瞬間移動している。
アリスは……
急いでユニムが駆け寄る。
「どうやったのだ?」
「わかんなーい」
窓の中にアリスが入っている。
それを見兼ねたホムラがアリスを助けてやる。
「アリスさん。横着しましたね」
「はーい」
アリスは鏡面に強い。
特に『鏡の魔法』を応用すれば、鏡の中にいる“自分”と瞬間移動できてしまう。
その行為をやってのけたに違いない。
ホムラがどう救出したのか。
謎であったが、アリスはてんてこまいしている。
「さあ、ユニムちゃん。やろっか」
アリスの元気溌剌な声が耳元で聞こえる。
思わず、耳がこしょばゆくなったが、くしゃみはせず、鼻を触る。
「さあ、行くよ」
『テレポーテーション』とユニムが言うと……
アリスは、何語かわからない単語を発音していた。
思い返してみるとそれは……
『ンョシーテーポレテ』だったという。
アリスは間違えて、反対に言ってしまったという。