140話 炎の心臓
――Heart of Flame――
「あれはなんだ?」
ハヤタカが目にした先には、センチュリオンがいた。
無境国出身からしてみれば、人工生命体は珍しいものに違いないらしい。
すぐさま、足から高温度の炎を射出し、敵とみなしたのか。
拳をかます。
センチュリオンは、殴られたことに気にも止めないまま、歩き続ける。
この大広場には、様々な道具があるが、ハヤタカはどれも使わない。
彼の戦闘スタイルは、拳で闘うスタイルのようで、拳に炎を抽出……
かと思いきや、宙を撫でるにして、炎の弓を形成する。
エクスとユニムは、あまりの速さに止めることができず、センチュリオンが一生徒であることを説明できないでいた。
ホムラは、剣を磨いている。
ハヤタカ、センチュリオンめがけて、炎の矢を放つ。
すると、センチュリオン。
炎の矢を掴み、吸収する。
「まじか……」
これは予想外だったようで、天王子ランキングの中でも、上位にいるセンチュリオンは、戦闘能力はずば抜けて高い。
彼は、炎を身に纏い、瞬時に体に搭載されたナノテクノロジーを用いて、炎耐性のある金属を出力する。
そして、彼は言い放つ。
「私は、センチュリオン」
皆さんも、お気づきかもしれないが、センチュリオンは試作機であり、言語能力が著しく乏しい。
アクセントや、発音の仕方、スピードを変えることでしか「私は、センチュリオン」と表現することしかできないのだ。
「俺は、ハヤタカだ」
ハヤタカは、センチュリオンの戦闘力には、目をつけていた。
であるならば、高温にしても問題はないと踏んだのか。
センチュリオンの前に立ちはだかり、炎を最大限まで高温にする。
ハヤタカは、炎の魔術師というよりかは、火の魔導士と言った方がよさそうだ。
魔術師ではなく、魔導士であるからにして彼は修業中である。
ここに、科学対魔法の決戦の火蓋が切られようとしていた。
とはいったものの、どちらも炎を纏い、殴り続けている。
鋼鉄の拳をくらったならば、動けまいと瞬時に察したのか。
ハヤタカは、肘、肩、背中、膝、脚から、もしくは、関節という関節から、炎を射出し、高速で、鋼鉄の炎を纏う拳をひたすら躱している。
一方で、センチュリオンはハヤタカの拳を全部くらっている。
痛みを感じないのかもしれないが、金属音が鳴り響いている。
ユニムは、そのすさまじさに衝撃を受けていた。
いつか、あの鋼鉄の男と戦わなければならないからだ。
ユニムは、ホムラの方を何度か叩き、声を掛けるが……
「まあ、見ててくださいよ」
と、狂気じみた笑顔を向けられる。
末恐ろしかったという。
センチュリオンの内部機械が、危険だと判断した時、いくつかの機能〈ファンクション〉が発動することがある。
《ゴーストプロトコル:フレイムハート》
《展開》
センチュリオンの胸元から、赤い光線が放たれる。
流石にハヤタカも怯むか? と、思われたが、見越していたように吸収魔法で左手で胸元を捉える。
「待ってたぜ。とっておきにはとっておきを」
ハヤタカ、センチュリオンの足元めがけて、五指から光線を射出する。
「私は……わたし……わた……」
センチュリオンは、機能を停止した。
そこへ少年が駆けつける。