139話 青い瞳が対峙するとき
――青い髪と青い瞳――
二つの足音が聞こえる。
エクスとユニムは校内を順に巡っていた。
次に二人が向かう先は、右手を曲がった
中央にある大広場である。
ユニムは、歩き疲れたのか立ち止まる。
エクスは、その様子を見ていた。
ふと疑問に思い、口を開く。
「ところで、時期賢者ユニム様。質問があるのですが……」
「はぁはぁ……なんだ白髪?」
「どうやって、金剛明王のヴァジュラの剣を斬ったのですか?」
嫌な予感が背筋を伝う。
その答えをユニムを知らなかった。
わかるはずがない。
エルドという男が……と、言おうとすれば、口封じの魔法が発動する。
本当は言ってしまいたかったが、もし口で言えないのなら紙で
思考電波〈テレパシー〉で
と行おうものなら、髪は燃え上がり
電波は気味の悪い雑音が混じる。
「・・・」
故に何も言えない。
俯きながら、拳を握る。
あのエルドという男に反感を抱いたが
感謝しなければならないのも事実。
彼は……何者なのだろう?
「そうですか。わかりましたよ。私には、言えないのですね……
私から、捕捉を付け足すのであれば、明王は天王子なんですよ」
ユニムの頭に疑問が浮かぶ。
アダマスの海内女王のコマイは、確かに言っていた。
『金剛仁王は、博愛級』だと……
エクスの顔を見やり
すかさず、質問をぶつける。
「本当なのか?」
「ええ」
「博愛級ではないのか?」
「ええ、そうですよ」
頭の中は、水と砂を混ぜたようにぐちゃぐちゃだった。
全身で、泥を浴びているような気分だった。
「どっちなのだ?」
「金剛仁王は博愛級です。
ですが、金剛明王となった時
天王子となります。
特殊なんです」
「そういうことだったのか」
当時、ユニムは訳もわからず優勝のメダルを貰ったが
誰もが、「ありえない」「何者なんだ」と口にしていた。
その理由が、瞬時に脳内の錠前が施錠されたように理解した。
ペンチで、金具を割る音が脳内に響き渡る……
「ところで、ユニム様。こちらは大広場です」
見たことある景色だ。
ゼルドがメープルシロップに敗北した場所であり
初めて、魔人としての素質を見せた場所である。
「……そうだが、どうしたのだ?」
「知っていますか? 時期賢者ユニム様。
天王子にはランキングがあります」
「ランキングだと? そんなものは知らないのだ。
成績優秀者が主席になるのだろう?」
「普通であれば……そうですね。
しかし、ここは天下のアルキメデス魔法学校ですよ?
常識を疑うことから疑問は生まれます」
「どういうことなのだ」
ユニムの声が轟く。
「電気石をご覧ください」
「二十六位だと? 私は最下位か?」
「このままでは、一生卒業できませんね」
「どうしろというのだ?」
そのランキングが上位の者ほど『海内女王』『天地国王』に近づける。
二つの影がゆっくりと近づいてくる……
――赤い髪と赤い瞳――
『ホムラ』と『ハヤタカ』は、無事「帝国の心〈インペリアルハーツ〉」に辿り着いた。
炎帝から聞いているのは、紅蓮の魔導天使であるマダム・ウィッチがここにいるということ。
マダム・ウィッチの元を訪ねると、教師を頼まれた。
もちろん条件は課される。
報酬もあった。
そこに断る理由などない。
窓から、青い髪と白い髪が見えた。
ハヤタカは、窓から落下する。
その上にホムラが乗り、地上に降りる。
青い髪の少女は、ハヤタカからすれば青龍を彷彿とさせた。
「自然の魔法は得意か?」と、質問する。
訊いてみるも「そんなことはない」と否定される。
「誰か」と訊かれたので「こういう者だ」と挨拶代わりに炎を纏ってみせる。
少女は、たちまち驚き、隣にいた青い瞳の少年が防ぐ。
「すまないな」と一言くれると、次にホムラが紹介をする。
四人は、お互いに握手をし、ハヤタカとホムラは事の経緯を話した。