表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
138/147

138話 陽葵〝ヒマリ〟



――太陽の輝きと月の輝き――



 (たちばな)()は、二人の子を(さず)かった。

 ()(なた)()(まり)

 兄と妹だった。


 二人とも無口だった。

 お互いに中を深めることもなければ、あまり話すこともなかった。


 五歳差だったので、『ヒマリ』は打ち解けられなかった。

 

 小学校でも慣れ親しめないでいた。

 友達と話題の合わせ方がわからない。

 喋るのが苦手。


 周りから距離を置かれ、クラスの隅でスマホをこっそりと見ていた。

 アニメが好きだった。

 

 アニメのヒロインのようになりたいと何度も思ったという。



---



 中学生になった時、日下部という人物と同じクラスになった。

 後の魔王シンである。


 彼女と魔王シンとの関係は誰も知らない。

 


 歳月は経ち、三年の月日が経った。

『ヒマリ』は高校生になり、電車で学校に通う。


『行ってきます』とは言えなかった。

 大学二年生になった陽向が玄関にでてくると

 手を振ってくれた。


 最寄りの駅まで歩いていき

 電車を待っていた。

 月曜日だったが、今日は祝日。


 (ゆう)(うつ)だった。

 祝日なのに学校があるなんて……


 スマホを取り出し

 電車の中で大好きなアニメを見る。

 突然だった。


 アニメが逆再生されていく。


 何事だろうか。


 高速で逆再生され、中学生の頃に見ていた懐かしいアニメが再生された。



「……え?」



 思わず、声を漏らした。


 アニメの中でヒロインが犬に話しかけている。


 

「またね」



 そんな回はない。


 このアニメは、犬と少女が出会って少女が成長を遂げていくというアニメだった。


 後に、その犬は異世界の王子だという事がわかり……


 という話のはずだった。

 

 おかしい。

 明らかにおかしいと思い、辺りを見回すが

 奇妙なことに誰も乗っていない。


 すると、電車は、線路を大きく外れ、空高く舞い上がっていく。


 何事かと思い、窓の外を見るが外側からこの電車は見えていないようで、不思議に思っていた。


 時間はしばらく経過し

 リュックに入っている

 お弁当を食べては、退(たい)(くつ)すぎる時間を過ごした。


 空に(さかい)()があった。


 そこを(くぐ)り抜けると、別世界。


 その別世界こそ――セレスティアル――であった。


 月が光輝いている。


 赤い月だった。


 電車は空高く舞い上がり、雲より高く進んでいくかと思えば、電車の中に、九つのシルエット。


 彼らは「見つけた」とだけ言い残しては、消えたという。


 怖かったので、何度も「お兄ちゃん」と呼ぶが、兄の陽向はもちろん現れない。


 電車が止まる。


 表示には、《天獄》とだけ書かれていた。


 扉が開いた。


 ヒマリはおそるおそる足を踏み出した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ