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137話 オオカミ少年と藍色のアリス



――BULE(ブルー) ROSE(ローズ)――



 ()(づき)(あおい)は、美麗である。


 当時の年齢は十ニ歳。


 彼女の部屋は桃色で統一されている。

 ベッドから壁紙まで、茶色い勉強机が異彩を放っている。



 これは、今から五年前の日本での話。


 みんなから「葵ちゃん」の愛称で親しまれ

 いつも元気よく「はい」と返事をする。


 無事に小学校の卒業式を迎える。


 彼女は病気だった。


 (がん)(わずら)っており、長くはもたないとのことだった。


 残りの一週間をどう過ごすか悩んだが、一人の友達と忘れられない日々を過ごした。


 彼は言う。



「愛は不滅なんだよ。だから、愛は永遠なんだ」



 葵は(うなず)いて、年下の彼の頭を撫でてやる。


 自分の病気のことは伝えなかった。


 だが、愛が奇跡を起こすと信じて、「この時間が永遠になるように」と

 毎日、神社に行き、願い続けた。


 

 ――それから、一週間が経過した。



 葵は目を開いた。


 ここは病院ではないことを瞬時に察した。


 どこだろうか?


 周りには、お人形がたくさん飾ってある。

 ウサギに、クマに、ネコに、オオカミと……

 (ごう)()なお部屋だった。


 黒い(くち)(べに)の女性が、こちらの顔を覗き込んでいる。


 

「あら……目、覚めた?」



「だれ?」



 その女性はたちまち驚き、素っ頓狂な声を出して、葵のことを見つめている。



「え、忘れたの? 私よ? アナスタシアよ?」



 葵は、首を傾げては不思議そうな顔をする。



「アリスはお人形が好きなのね。また増えてるわ」



 足元の隅々にも人形があった。


 エビのお人形。

 サカナのお人形。


 

「なによこれ」



 葵は、キョトンとしている。


 自分にそっくりな人形がそこにはあった。


 黒い(つつ)を持っている。

 青い服を着ている。


 髪の長さは、セミロングだ。


 その人形の茶色い瞳が印象的だった。


 隣に、“彼”の人形。


 脳裏に浮かぶ。

 彼の口癖。



『愛は不滅なんだ。だから、愛は永遠なんだ』



 その言葉を繰り返して、メロディーに乗せて口ずさんだ。 



「ほら、歌ってないで、階級試験に行きましょう。アリス」



 体に電流が走ったかのようだった。


 手を見つめる。


 鏡で顔を確認する。


 “奇跡”は起きてしまった。


 葵はアリスという少女へ生まれ変わった。


 転生だろうか?


 だが、顔も背丈もそっくりだった。


 違うのは、(よそお)いと瞳の色だけ。


 瞳の色は青かった。


 あの時の彼のように……



『ケイくん――どうしてるかな?』



「……誰?」



「なんでもないの~」

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