133話 私はこの魔法学校で首席になる
――沈黙は金――
ユニムは声を押し殺しては、マダム・ウィッチ校長の説明を受ける。
そのなかでも、特に気になった点。
『屋上には決して行かないこと。わかったかしら? うっふっふ』
なぜならば、このアルキメデス魔法学校には屋上がない。
校長は冗談を言って、場を和ませたのだろう。
マダム・ウィッチ校長はいつも笑っている。
こちらまで、楽しい気分にさせられる。
だがどうして、この隣にいる。
茶色い瞳の男は、嫌な雰囲気を醸し出しているのか。
『天王子』は、皆自我が強く。自己主張が激しい。
その点は、ユニムも似通っているだろう。
鋼鉄の男からは「私はセンチュリオン」
と言われたので「私はユニムだ」と返すも……
「私は、センチュリオン――」
「わかったのだ」と早々に、相槌を打ち、席に座った。
かと思えば、隣の男は机に座っている。
「なにをしているのだ」と問いかけると……
「祝福する。俺はシン」
入学してすぐに面食らうとは思わなかったようで、ユニムは変な汗をかいた。
先程の男は、ユニムが喋ろうとすると「沈黙は金」とだけ呟き。
「わかったか?」
と、癪な態度を取る。
ユニムは頷き
赤いパーカーに黒いズボン白いスニーカーを身につける
『シン』の隣に座る。
何気なく左を見る。
そこには、誰もいない。
窓があり、木製の枠で綺麗に八つに分かれている。
上部分は、半円を切り取ったようで
横と下は綺麗な直線上の四角い縁だった。
日差しが燦々と輝き
小さな黒い物体が飛んでくるのが見えた。
その物体は窓に激突すると
茶色い羽毛が見えた。
もしやと思い、窓を引っ張る形で、開けた。
「トシだし」
誰かが叫ぶ。
声は、ユニムの後方から聞こえた。
振り返り、叫んだ方向を見ると、ジト目の女の子。
ユニムより背が高く、茶髪で、服に様々な動物の絵柄が描かれている。
鰐や鷲、鮫、烏、狼や羊、おまけに蜥蜴だろうか?
カラフルで奇抜な服だった。
黒いミニスカートで、色にメリハリを出している。
かがんで、ユニムを凝視している。
「危ないよ~」
一番前の席から、透き通った声が聞こえる。
いつぞやも見かけた……真似をしてくる可愛らしい女の子。
青いスカートに白い線の入った、青いジャケット。
白シャツの中央にある赤いネクタイが印象的だ。
年齢は十七歳くらいだろうか。
黒い髪に艶があった。
色々と考え、模索していると……
頭に、何か違和感を覚えた。
「ぷふ、気に入られとるし」
「ピィ」
正体は、珈琲鷲〈コーヒーグル〉の『トシ』だそうだ。
先程の、ジト目の少女がやってくる。
下唇を突き出しては、小馬鹿にしたような
もしくは、にらっめこでもしているかのような
愛想笑いを浮かべては、トシが彼女の左腕にとまる。
「わたちは、ティタイン。よろちく」
『ティタイン』とユニムは握手をする。
先程の少女が、笑顔で前の席からやってくる。
スキップをしては、楽しげだ。
「私はアリスだよ~よろしくね」
『アリス』とユニムは握手をする。
ユニムが隣にいるシンに声を掛けるのだが……
一瞥をくれ『俺はいい』と声が頭に響く。
「な、なんだこれは……」
ユニムが飄々と驚いていると、騒ぎを聞きつけた校長がやってくる。
「それは思考電波〈テレパシー〉よ。うっふっふ」
この弐拾六人の中で、ユニムだけが使えない。
特別な能力。
聞くところによれば、天民は皆使えるらしいのだとか……
ユニムは条件を満たしていないのか。
使えない……
ユニムは、頭を抱えた。
一人嘆いていた……
――ここは、アルキメデス魔法学校
賢者アルキメデスにより創設された。
1762年前に建設を完了。
歴代校長には、あの魔法の考案者である。
マジック・セレストリアまたの名をゾロアスター
勇者プロメテウス
賢者ニコラス・ラブレル
権姫ヴィクトリア
三賢者の内の一人
強欲の魔術師グリードグリーン
彼らが名を連ねている……
実は、最初の一番目の授業の自己紹介でユニムは宣言していた。
「わたしは、この魔法学校で主席になる」
魔法学校篇――はじまり