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TWO ONLY TWO 唯二無二・唯一無二という固定観念が存在しない異世界で  作者: VIKASH
【階級試験篇】:ストライク・ゴールド
128/150

128話 阿吽の金剛仁王

            〈ダイアモンド・リミット〉




 ユニムは、地を踏みしめる。

 左手で、手刀を作り、右手をぎゅっと握り、脇腹に添える。

 道着から、足を伸ばし、半円を描いて「ドン」と気迫のある、踏み込みをする。


 観衆から黄色い声援をあびて、人気に拍車がかかっていた。


 ナディアが手短に紹介を終える。

 対するは、アダマスの現海内女王、赤手空拳のコマイであった。



「コマイや。よろしゅう。

 魔人()(うん)は、二人で一対。

 うちからは、なんも言うことはあらへん。

 勝つ。ただそれだけや」



 実はアダマスは、国の面積が広いことでも有名である。

 様々な地形を拝むことができるが、場所によって風土や、特色が変わってくる。


 例えば、肌の色。

 方言。

 顔つきなど。


 東西南北で、全く違った毛色を見せる。


 ネイビスは、なぜか土佐弁なのに対し。

 コマイは、京都弁の「京ことば」である。



「ネイビスについて」

 ネイビスの本名を知るものは少ないが、(リョウ)()という説があがっている。


 故に、リュウマや、タツ、タツマ、サカモトと呼ばれたりもする。


 以前に白胡椒〈ホワイトペッパー〉が「タツ」と呼んでいたのは、リュウ繋がりである。


 ひょっとすると……

 他の世界からやってきた異世界人か?

 今のところ本質はわからない。

 龍辰〈リュウジン〉の可能性も捨てきれないのだ。



「コマイという名前について」

 コマイの名前の由来は、龍馬の反対、虎が舞うから来ている。

 ()(マイ)が正しいだろう。


 コマイが幼い頃、ネイビスに助けられる。

 彼女はか弱く、魔獣に何もできなかった。

 ネイビスは、拳と魔術だけで、救ってみせた。



『お名前、なんとおっしゃいますのん?』


『リョウマぜよ』



 龍馬を(しゅう)(めい)してもよかった。

 修行を経て、ネイビスから虎のように強い女だと言われ、ハッとした。

 虎が舞う姿を思い浮かべた。



 龍 反対 虎


 うま 反対 ()



 よって、虎舞〈コマイ〉となる。

 彼女は、龍馬の対をなす存在でもあった。


 雷帝のゲルブ、トライデンスが四権英雄だった頃。

 アダマスの国王、女王は、蒼き龍と赤き虎として恐れられたものである。

 ネイビスと白胡椒とコマイは、トライデンスの三人の弟子である。

 彼らが用いる雷を用いた武術は、強力だ。


 それでは、魔導演武に戻ろう。


 

「ああ、可哀想に……」

「うん、オイラもそう思う。イヨオオ」



 後は、進むだけ。

 地を踏みしめる。

 歴戦の猛者たちが闘ってきたのがわかる。

 ゆっくり下を向く。


 この闘技場には、無数の足跡があった。

 岩のような壁に残った打撃の後。


 もしくは、魔術で行ったのか。

 作為的な切断面。

 

 銃による射撃か。

 弾痕も見受けられる。


 

 

 

 私は以前に、ダイアモンドの魔人がいたならば――と語ったかもしれない。

 実は、存在する。


 彼ら、金剛仁王・阿吽は、ダイアモンドに変化する魔人であり、かなり強力である。


 彼女はどうするのか?



 硬度で比較 


 ユニム 黒曜石化 モース硬度 五・五

 阿吽  金剛化 モース硬度 十


 阿吽に敵わず



 体躯で比較


 ユニム 124㎝

 魔人阿吽 5m


 阿吽に敵わず



 武器で比較


 ユニム 電気石

 魔人阿吽 金剛剣〈ヴァジュラの剣〉


 阿吽に敵わず


 

 例え、硬度でも体躯でも武器でも敵わなければ……


 魔術で闘えばいいのではないか?


 ここは、魔術の国

 帝国の心〈インペリアルハーツ〉


 挑み続ける。

 唱え続ける。

 魔力が尽きるまで……


 決して、諦めてはならないのだと

 自分に言い聞かせる。


 自分にしかできないことを

 やってのけたい。


 どこかから、有象無象の囁きが聞こえる。



「あの女の子が? 勝てるわけがない」

「お、やってるな。博愛級の阿吽に賭ける」

「勝負はついているだろ。テンブラーでも飲むか」


 声が木霊しては、耳に残る。


 期待されていないのか。

 言い返そうか。

 会場に視線を向ける。


 そこには、黒塩〈ブラックソルト〉

 ゼレクス

 ゼスター

 スジョン


 彼ら、彼女らの姿があった。


 か細くとも、応援する声が聞こえる。


 彼らのために、勝たなければならない。


 この勝敗は、彼女のものだけではない。


 彼らのおかげで繁栄蜂になれた。


 忘れてはならない。

 マスタングおじさん。


 彼の姿はなかった。


 負けても繁栄蜂。

 ならば、負けたっていい。

 せめて、おじさんの背中を追うようにして……



「頑張ってください」



 場が静寂するような大きな声だった。

 思わず振り返った。

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