124話 晶燦々
〈ラディアント・ブリリアント〉
あの黒曜石が、いとも簡単に打ち砕かれる。
目が点になる。
動けず、群れを成した羊に囲まれたようだった。
彼女は、動きを封じられる。
彼女が相対するのは、幸運志知の女。
スジョン・クリスタ。
クリスタの能力。
魔人:水晶羊〈クリスタルシープ〉
その魔人は、青羊の希少種。
モース硬度 七
水晶にもいくつか種類がある。
クォーツと呼ばれるが、水晶の種類によっては、水晶羊を覆う色は違うとされている。
なぜならば、無機質と有機質には、絶対的な法則がある。
――色である。
無機質には、必ずと言っていいほど、色が少ない。
単色であることが基本中の基本。
コンクリートやアスファルトは、灰色だ。
これは、不純物が混ざってない。
もしくは、人工的に造られた何よりの証拠だ。
一方で、緑あふれる自然はどうだろうか?
草一つにしても、緑一色ではない。
濃い色や、薄い色、腐ったたり、枯れたりすれば、黄色く、茶色くもなる。
先程彼女は、幼い頃に描いた。
誰かの木の絵画を見ている。
茶色と緑色の二色しか使われていない。
モダンで、現代的で、なおかつ抽象的だ。
本来なら、十二色以上の色を用いて、塗るべきかもしれない。
ブルースカイ/セレストもアレ=ドレも同じ意見を言うだろう。
自然や天然物がそうであるように……
実は、水晶の正体は「二酸化ケイ素」である。
紫が見えれば、光を反射して、白が覗く。
紫ひとつとっても、濃い色や薄い色、淡い色や鮮明な色。
そのどれもが、瞳に映る。
強度に注目してみる。
その硬度、黒曜石より硬く、黒曜石で覆われた拳をものともしない。
スジョン、優勢。
いつの日だろうか。
誰かに語られたアメジストデザート(紫水晶砂漠)の話。
アダマス王国の南東に位置し、紫色の砂漠だが、全てアメジストかと思いきや、アメジストコーラルの残骸である。
アメジストコーラルの由来は、美しい紫色から取られた。
深海に眠る藤色の珊瑚を魚や蟹、烏が運ぶ。
魚は、浅瀬に
蟹は、砂浜に
烏が、砂漠に
運んでくる。
彼女が、光明のレナから渡されたネックレスは、紫水晶〈アメジスト〉で拵えた物である。
古代より、霊的、高貴な石とされ、彼女の首元に光っているのが、見受けられた。
スジョンは、目を奪われた。
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ある時、スジョンは土砂降りの中、傘も持たずに馬車を待っていた。
衣服は汚れ、通り過ぎてゆく人々から、軽蔑、憐みの目で見られる。
穴にでも入りたい気分だった。
突如として、雨が降り止む。
何事かと思い上を見上げる。
ブロンドの髪の男が、赤いジャケットで天を遮る。
名前もわからず、雨が降り止むと、去っていった。
後ろから見ると、びしょぬれになった赤いジャケットを肩から提げていた。
目に焼き付いた銀色の六芒星。
忘れもしない。
彼の後姿を。
閑話124.5話 찬란히 빛나는 (チャルランヒ ピンナヌン)
スジョン・クリスタは外海出身である。
国の名は「韩の國」
北東に位置する国である。
大昔三つの国に分裂していた。
四千年以上の歴史を持つ
英雄之國〈インションジーグォ〉
その国に隣接している。
韩には「ハングル」という言語があり、独特な字体でも知られている。
例えば、英雄なら……영웅 (ヨンウン)となる
他にも
こんにちは 안녕하세요 (アニョハセヨ)
ありがとう 감사합니다 (カムサハムニダ)
次回までどうぞよしなに 다음에 또 잘 부탁드립니다