122話 曇りなき一点を見据えて
〈ア・シンギュラー・クラリティ〉
『オフ・ザ・ウォールのスニーカーが欲しいんだ』
『あとね、フリークのTシャツも欲しくてね……』
『それからね……』
職業はモデル。
顔は悪くなく、体型も鍛えていたので、優れていた。
息子のB・ラスターには、自分と同じ思いはさせたくなかった。
だがどうして、こうも人生とは思い通りにいかないのか。
濡れ衣だった。
彼、ゼスターは色男だった。
そのため、妻は離れていき、再婚した。
ラスターはまだ十二歳だった。
階級試験には、あまり興味がなかった。
『僕ね、父さんみたいなモデルになるんだ』
彼は服が好きだった。
そんな安直な理由でモデルを志した。
親には何度も言われた。
真の名前を名乗ってはいけない。
「ゼタ=エスターではなく
ゼスターと名乗りなさい」
モデルと服屋の兼業をしていた。
ある時、プラネットパズルや勇者と魔王の童話を耳にし、それらをモデルにした服を拵えた。
飛ぶようにうれ、商売繁盛だった。
アレクセイという男が来たり
マスタングという男が来たりもした。
彼らは、パズルの服を欲しがり、買っていく。
異様な人気を誇った。
パズルの服。
出身は、帝国の心〈インペリアル・ハーツ〉だが、スーペリアの天地国王に目をつけられ、ルテティアで商売をしないか? と、大金を積まれた。
断る理由がなかったので、息子と四人目の妻とは、遠くになった。
当時、ラスターは、十四才。
多感な時期だ。
接するのが難しく、別れ際に手も振らず、何も言わなかった。
ルテティアにて、天地国王のネロという男に会った。
大きな男だった。
彼こそが、後の四権英雄。
黒の崇高な剣士 クロノス/ネロ
彼に話を聞かされ、驚いた。
プラネットパズルの存在。
「実在する」
そして、聞かされた七つの人間とルシフェラスの一族。
ルシフェラスに挑むも、敗北。
海底の大陸 アウエリオス
魚人間やカニ人間が、彼の力を認め、拵えたのが、龍蝦弓である。
クラーケンとの戦いに、挑み勝利する。
ルシフェラス、そして、その先にいる十二使徒には、敵わなかったが、彼は気づいた。
クラーケンにも、等級がある。
クラーケン焼きこと、クラ焼きには、漁の行いやすい、リトル・クラーケンが用いられる。
噛み応えがあり、ひとつでお腹いっぱいになる。
赤人狼ファングの大好物でもある。
巨大生物の等級
神話級
伝説級
特上級
特級
上級
中級
下級
最下級
以上の八つである。
神話級のクラーケン イーピロス
倒せば、権物に繋がると考え、バミューダ海に潜り込み、イーピロスの討伐に向かった。
だが、目だけで船より大きく、とてもじゃないが、闘うには至らなかった。
何度も、アウエリオスの海戦に加勢し、英雄とあがめられた。
しかし、それを知らない息子のラスターは、島流しにあったのだと考え、ゼスターに告げるのだった。
「少なくとも、あなたのような人間にはなりたくない」
ゼスターは、時間の無慈悲さに絶望した。
ラスターは、父親の親としての品格のなさに絶望した。
ゼスターは、アルクマイオンに挑んだ。
ラスターは、モデルにもならず、剣と銃を極め、弓を酷く嫌った。
こうして、電気石に電気弓や蒼雷砲が追加される。
トライデンスは、流れ星〈シューティングスター〉と名付ける。
トライデンスは、二人の事を知っているが、二人はトライデンスを知らない。
※118話 星龍蝦〈アストロブスター〉
に登場するゼスターの話です。