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12話 把捉するブロンズゴーレム




 ブロンズゴーレムは、形をあらわにしていく、形成されたその6つの緑青(ろくしょう)色の(まなこ)でユニムを見つめていた。


『青い(かみ)でアるか』


 大きく、長い腕を、ユニムへと伸ばす。

 その光景を目の当たりにしながら、何もできないユニムは、呆然(ぼうぜん)と立ち尽くしていた……


「なっ……よせ」


 ユニムはブロンズゴーレムに(つか)まった。


「はなせ。この」


『連れていくのでアる』


 ブロンズゴーレムは、腰、脚、足の順番で、順々に全身を形成していく。

 重たそうな金属の身体(からだ)で立ち上がると、シルバーバレーの方角(ほうがく)へと、のそのそと歩き始めた。


 ゆっくりではあるが、この巨体だ。

 一歩が凄まじく大きい。

 白胡椒ホワイトペッパーと謎の赤狼ブラッドウルフが追いかける。


 しばらく、鬼ごっこならぬ、ゴーレムごっこがつづき、(みな)、シルバーバレーへと、()()かる。


 ブロンズゴーレムが谷を飛び越えようとした、その時……


「はなせといっているだろう」


 ユニムが必死の思いで、ブロンズゴーレムに(つか)まれている体から片腕だけを自由にすると、腕から伸びた(てのひら)で、ブロンズゴーレムの拳に触れた。


 ユニムの手は火傷(やけど)した時のように赤くなっている。


『あ……アついぞ。なんでアるか。なんでアるか』


(おおかみ)さんよ。ブロンズゴーレムの様子(ようす)がおかしいぞ。なにが起きてんだ?」


 ホワイトペッパーは、下から様子をうかがうが、何が起きているのか見当もつかない。


 すると……ユニムを(つか)んでいたブロンズゴーレムの手が溶けていくではいか。


 ユニムは、その(すき)に手から逃れる。


 ゼルドも同様に、手から解放された。


 下は、谷底だ。2人は奈落(ならく)の底へ落ちてしまうのか?



 落ちてくる2人をホワイトペッパーが()びながら、両脇に(かか)える。


 ユニムはブロンズゴーレムに触れた時、意図(いと)せずして、熱を発生させていた。


 銅は、200度を超えると軟化(なんか)する。

 ちなみに、軟化とは、物が軟らかくなることである。

 そのことからも、ユニムはそれと同等の熱を発生させていたのではいかと、推測(すいそく)できる。


「ユニム様がやったんですか……」


 ゼルドは、(となり)で見ていた。


 ユニムが、ゴーレムを溶かしていくのを……その余波(よは)が自分を掴んでいたゴーレムの手にも届き、無事逃れることができた。

 ゼルドは、一連の出来事を目の当たりにした張本人。


 驚かなかったのは、初めてじゃないからだ。

 何度もユニムに助けられたり、摩訶不思議なことが起こったりしたが、今回は例外だ。

 質問したのにも、理由がある。他人を介さずとも、力を使えるのかと()きたかったのだ。


『ユニム様がやったんですか………僕に触れていないのに、どうやったんですか?』


 本当なら、ゼルドはそう訊きたかった。

 まるで、これから自分が必要されなくなるような、どうしようもない不安に()られる。

 僕は関与していない……その一言に()きる。


 "魔"法というものの存在は知っていた。賢者が使うとされる。人間の力ではなしえない不思議なことを行う"術"…… 


 (かしら)尻尾(しっぽ)を取って、"魔術"。


 それは、神術(しんじゅつ)であり、咒法(じゅほう)であり、幻術(げんじゅつ)であり、 またそれが(まじな)いであることも……


「わからないのだ……私は、ゴーレムに触っただけなのだ」


 白胡椒ホワイトペッパーは思う。


――何者なんだ? 相撲の時も調子が悪いとは、思ったけどよ。まさか、賢……


「ユニム様、敵は残っていますよ。向こうの崖にいるブラッドウルフが……」


 ゼルドに覇気がなかった。

 それでも、伝えなくては、この方ならやってくれるのだと、もう自分は必要ないのだから。任せればいいんだ。

 (きょ)()かれたように、(うつ)ろな目をしながら、ふと自分の存在意義(そんざいいぎ)を考えてみる。


――なんで、うまれたんだろう。ぼくは、親の顔も知らない


 自分と同じ顔の人間……エクスを思い浮かべて、自分は王族なのではないか? と、考えてみるが、アレキサンダーは、なにも言わなかった。

 つまり、彼は、父親ではないのだ。父親は、誰なのだろうか――?

 同様に、母親もわからないのだ。アルジーヌがそうなのか?

 だとしたら、おかしい。

 どこも似ていない。よくよく考えてみれば、エクスとアルジーヌは似ていなかった。

 ひょっとすると、血縁関係ではないのではないか。という考えが、頭を(よぎ)る。



「おいおい。大丈夫か? ボケっとすんなよ。味方だぜ。あの(おおかみ)さんは、人語を話すぜ」


『ユニム殿、ゼルド殿。護衛(ごえい)するのである』


「え、ホワイトペッパーさんの腹話術(ふくわじゅつ)ですか? なんか、声違いますけど」


「あの(おおかみ)さんだよ。話聞いてたか?

「まあ、やっと名前を覚えてくれたようだしな。

「嬉しいもんだな」


「んー。どうやって来るのだ」


 ユニムの声がこだまする。


「谷底見えないですよ。大丈夫ですか?」


 ここは、「シルバーバレー」夜のため、谷底が見えない。

 進退維谷(しんたいいこく)とは、まさにこのことであろう。

 別の道を探してもいいが、後ろは先程のブロンズゴーレムが瓦礫(がれき)の山とかし、引き返すのは困難(こんなん)を極めるだろう。


『簡単だ。とべばいい』


 ブラッドウルフはいとも簡単に、谷を飛び越えた。


 ゼルドがなにかを見つける。なんだろうか。てのひらにすっぽりと隠れてしまう。砂より大きくて、石より小さいそれは、ゼルドを魅了(みりょう)した。


「おい。どこで見つけた」


 ホワイトペッパーはものすごい剣幕(けんまく)だ。


「わからないんですよ。その辺に落ちたので」


「なんだそれは」


 ゼルドが手にしていたのは、銀の弾丸(シルバーバレット)である。

概要 (Overview):ゴーレム (golem)


♢ゴーレム


 作った主人の命令だけを忠実に実行する召し使いかロボットのような存在。運用上の厳格な制約が数多くあり、それを守らないと狂暴化する。


ウィキペディアより

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