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TWO ONLY TWO 唯二無二・唯一無二という固定観念が存在しない異世界で  作者: VIKASH
【階級試験篇】:ザ・マスク・オブ・ジャスティス
110/147

110話 恐竜は眠らず




午前六時


 ユニムと(アカツキ)は、食堂で「リーゾ・アル・クッリ(カレーライス)」を食べていた。


 この料理には数多くのアレンジがあり、頼めば料理長が工夫を凝らしてくれる。

 暁の皿は、まるでグリーンカレーのように鮮やかな緑色のルーがご飯を包んでいた。

 肉は見当たらない。

 彼は菜食主義なのかもしれない。


 一方、ユニムの皿は豪勢だった。

 ルーの中には「ミンスド・ビーフ・ステーキ」が入っている。

 インペリアル語で「ミンスド・ビーフ」はひき肉。

「ステーキ」は厚切りの焼き肉を指す。ざっくばらんに言えば、ハンバーグだ。



「そのマカとは、どんな料理なのだ?」



 ユニムは口を動かしながら問いかけ、スプーンを置いて暁を見つめた。



「随分と食い意地が張っているな」



 暁は微笑む。



「マカは(リュウ)(ジン)の名前だ」


「そうなのか」


「そうだ……」



 暁はライスを頬張りながら続けた。



「オルテガ、ベルモント、ゲネガ……

 確か、ゲネガは末っ子で女だ」


(メス)(リュウ)ということか?」


「まあ、そうだな。竜辰は、竜にも人間にもなれる種族のことだ」


「では、先程のナーガとはなんだ? 

 それも竜辰か?」


「よくぞ訊いてくれた」



 ユニムの目が光る。



 暁が言うには、ナーガ帝国のナーガ人は、頭も尾もヘビ、だが胴体だけ人間。

 体も大きく、人間ほどの(だい)(じゃ)といったところだ。

 中には、頭が二つや三つに分かれている者。

 脚が人間と同じ二本足の者。

 頭だけが人間の者もいる。

 多種多様だ。

 ナーガ帝国の王、アナンタは、神のように崇拝され、崇められている。



 ユニムは話を聞きながら、料理長に向かって「おかわり」と叫んだ。

 料理長は嬉々(しょうしょう)としてもう一杯用意する。


 気づけば、ユニムは、三杯目だ。



 後ろから、美しい音色が聞こえた。

 暁が瞬時に後ろを振り返ると、心を奪うような音色が流れていた。


 六弦の楽器を奏でるのは、あのダダイ=ⅡK。

 朝にふさわしい調べ「アルハンブラの思い出」である。


 その旋律に耳を傾けたのも束の間、ダダイは一階に置かれたクラシック様式のピアノに移る。黒鍵が赤色に塗られた不思議な造形。


 椅子に腰かけると、低音が鳴り響き、瞬く間に鍵盤が稲妻のように打ち込まれる。



 奏でられたのはフレデリック・ショパン作曲。


「幻想即興曲」


 即興曲第4番 嬰ハ短調、遺作 作品66――1855年にショパンの友人の手で世に出た名曲である。



 やがて、二人の食事は終わった。

 ユニムは満ち足りた腹を撫で、暁はお辞儀をして席を立つ。

 そこへナディアが現れ、ユニムの手を引く。

 暁は、ユニムを見守っていた。



 魔導演武、二戦目の時が来た。


 ユニムは衣を改め、闘技場へ足を踏み入れる。

 そこに待つのは、顔に深い傷を刻んだ少年。

 否、赤いオーラを纏う者であった。



 みなさんは、恐竜を知っているだろうか?

 かつて地上を支配した覇者。

 人類など存在しない二億年前の大地を、咆哮だけで震わせた存在。

 彼らは単なる巨大なトカゲではない。

 卵を温め、群れをなし、空を翔ける翼竜を生み、やがて鳥類へと未来を託した。

 恐竜は滅びたのではない――姿を変えて、今も生きているのだ。

 朝に鳴くスズメも、夜に飛ぶフクロウも、その末裔に他ならない。


 だが……もしも知性を持つ恐竜がいたならば?

 火を起こし、言葉を話し、星に名を与えたならば?

 その物語は伝説として語り継がれただろう。


 恐竜とは、力の象徴であり、進化の神秘であり、地球が描いた夢でもある。


 その夢は本当に終わったのか?



 観衆のざわめきが広がる。



 東 寛大陸 ユニム


 西 変加護 ゼレクス



「開始」



 審判の宣言が響く。


 ユニムが相手を見た瞬間、目を疑った。


 ゼレクスの姿が、一瞬にして古代竜……ティラノサウルスへと変貌(へんぼう)したからである。

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