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TWO ONLY TWO 唯二無二・唯一無二という固定観念が存在しない異世界で  作者: VIKASH
【階級試験篇】:ザ・マスク・オブ・ジャスティス
107/150

107話 開 ❝海内女王演武大会❞ 幕




「質問だ。希望とは、なんだろうか?」


 アルキメデス魔法学校の大広間に集った大勢の参加者たちが、キョトンと目を丸くする。


 そもそも、この階級制度において、試験は「誕生の『(チーマ)』」から始まるとされている。

 つまり、希望の『(フェブ)』について深く考えたり、口にしたりする者など、ほとんどいない。


 それは例えるなら……

「人はなぜ考えるのか?」

 という迷宮のような問いに挑むようなもの。

 誰もが考えたがらない、けれど避けられない命題だ。


 メープルシロップは一つ、深く息を吸い、ゆっくりと鼻から吐いた。

 そして、口を開く。


「神々とは、人間の恐怖から生まれた。

 未来に訪れるであろう災厄を、神という“全能の存在”に委ねることで、我々はただ祈ればよかった。

 ――だが、現実はそんなに甘くはない」


 彼の声に、空気が引き締まる。


「……魔王は、実在する」


 どよめきが走る。


「海内女王演武大会の歴史はまだ浅いが、歴代の優勝者たちは、例外なく“希望”を抱いていた。

 私も、その一人だった」


「ある時、私は魔王の幹部と遭遇した。気がついたときには、意識を失っていた。

 その後、呪いの影響で髪は白くなり、重い病を患った」


 彼は聴衆を見渡し、言葉を噛み締めるように語る。


「忘れないでいただきたい。

 “恐怖”とは、常に身近に潜んでいる。

 ――私がもう少し強ければ、ここにはいない。何もされなかったのは、相手にすらならなかったからだ」


「皆さんは、アリを見て、戦おうと思うだろうか?」


「……思わないはずだ」


「魔王からすれば、我々はその程度の存在だ。

 しかし、そんな我々に“希望”を持たせ、力を求めさせるために生まれた制度……それが階級制度だ」


「考案者は、かの勇者プロメテウス。

 彼はこう言った。いや……“おっしゃっていた”と言うべきかもしれないな」


 彼の口調がわずかに和らぎ、そして静かに語り始める。



「人間の運動……歩くこと、話すこと。

 それらは、始まりの段階では一般に“努力”と呼ばれる。

 努力は、欲望や欲求に忠実に従い、行動する。人間の基本的な原理に基づく。


 そして、獲得可能な意見を伴った欲求を“希望”と呼ぶ。

 一方、意見のない欲求は“絶望”と呼ばれる。

 対象から傷つけられる可能性を想定した意見を“恐怖”という。


 我々は、“希望”である。

 夢を持ち、叶えることができる。

 どんな絶望や恐怖にも、我々は打ち勝つ。

 我々こそが、希望である」



メープルシロップは胸を張り、毅然と宣言する。


「今ここに、初代スーペリア王国、海内女王アテナの名の下に――

 第八十八回、海内女王演武大会の開幕を宣言する」


会場がどよめく。

黄色い歓声が、あちこちからあがる。

静寂と沈黙を破り、そこには“動”があった。

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