102話 着席する魔王様と天王子のみんな
一方で魔王シンは、正体をひた隠しに、帝国の心〈インペリアルハーツ〉のアルキメデス魔法学校で、魔術を学んでいた。
アルキメデス魔法学校の七階にある教室では、二十六人が集まり、授業のような形式でマダム・ウィッチ校長や、ハーヴァード先生。オックスフォード先生や、ケンブリッジ先生らが、交替制で、生徒達、即ち天王子のみんなに魔術を教えていた。
寮があり、泊まっていく者や、コレとソレのように通っている者もいる。
先生達の中には、四権英雄も含まれている。
黒の崇高な剣士 クロノス(ネロ)
日輪の剣士 メープルシロップ
蒼き稲妻 ネイビス
憤怒の魔術師 パープレット
時折、ブルースカイこと氷帝のセレスト。
強欲の魔術師グリードグリーンこと、
林帝改め然䨣のヴェルデ。
トライデンスこと雷帝のゲルブ。
彼らがやってくる。
セレストが芸術を教え。
ヴェルデが異世界の学問を教え。
ゲルブが機械や電気について教えてくれる。
ただ一人緋色の剣士ネカァを除いて。
しかし、この三人の賢者はとある件で忙しい。
そのため、生徒達も楽しみな「特別授業」として、一ヶ月に一度だけ行われる。
もちろん、例外はある。
四権英雄に関してだが……
クロノスは、黒に関すること。
例えば闇や暗黒の魔術を教えている。
彼は、自分にも厳しいが、生徒思いの教師であり、時に厳しく、時に厳しく……おや? 優しさが、微塵もない。
能力が開花する生徒も多いのだとか。
メープルシロップは、橙に関すること。
熱力学や、炎の魔術。
彼も厳しい。
加減を知らない。
全力で模擬試合を相手するため、土下座する生徒が続出していた。
今期の生徒は、優秀であり、あの魔王シンに引けを取らない者も何人かいる。
天王子については、後々紹介しよう。
この二人。
剣士故に、剣術も教えることがある。
流派は、名乗らない。
名乗ることは、奇術の種明かしと同じためであるからだ。
その奇術のような、訳のわからない強さでは、天王子でも敵わないので、天王子は、クロノスからいつも言われている。
『学びは勝利に留まらず、敗北から得ることのほうが多い』
惨敗、相手にならず、剣を振ることさえ叶わない。
などなど、勝利がやってこない。
彼の頭には、鞭しかないようだ。
飴をほんの少しでも、味わいたい天王子。
一方で、蒼き稲妻ネイビスと憤怒の魔術師パープレットに関して。
彼らは、得意分野である雷と自然を教えている。
時に応用として、蒼雷や「疾風迅雷」などの雷を用いた移動手段。
詠唱による擬似的な魔人「赤人狼」や「青羊」「珈琲鷲」への変化を教えたりもしている。
パープレットは真剣に教えているが、現在どうしているか所在がしれないティタインがシトレトスの武士を連れてきては、皆を驚かせる。
白鰐……シトレトス
アルビノではないか。と思われている。
凶暴性は低く、礼儀正しい。
歯磨きは、欠かさない。
ティタインに強請るという。
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魔術の学び方について
・基本的なエッセイを書く
・書物から呪文や詠唱を覚えたりする
・実践的に、魔術を繰り出す実技の試験
海内女王や天地国王になるには……
中級魔法
様々な武器を扱う上での基本的な剣術
拳ひとつで戦うことを強いられる武術
以上を極めなければならない。
また、四権英雄になるためには……
上級魔法
至高の魔術
無詠唱
これらを行えることが大前提とされる。
特に、リュウジンや、四皇獣の力を扱えるようになるか、彼らに認められるかしなければ、四権英雄にはなれないとされる。
上述した四権英雄の四人と賢者の三人は、以上の項目を満たしている。
ナディア(旧アルジーヌ)が準賢者となったのには、天王子の上が、海内女王と天地国王であり、その上が、準賢者と四権英雄となっているためである。
繰り下がりもあるため、安心できない。
さらに上にいる賢者達は、想像を絶する。
彼らがどれだけ特別か。
真実味を帯びてくる。
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「おはよう」と挨拶をして、机の上に律儀に座る、魔王シン。
二十六の机と席が教室には置いてある。
ここは七階、学びの間である。
教室の中には、見覚えのある顔がチラホラといた。
私から、天王子のみなさんを紹介する。
魔法の国のアリスこと
永遠のALICE〈アリス〉
魔法教団クリムゾン・ベルベットの団長
焔狼のBELLE〈ベル〉
フルメタルハート
鋼鉄のCENTULION〈センチュリオン〉
万能の天才こと
万能のDAVINCI〈ダヴィンチ〉
天地国王アレキサンダーの息子
説き明かす者にして
説明者のEX〈エクス〉
孤高の画家
統合のGOGH〈ゴッホ〉
空からの使者
語らずのHIMARI〈ヒマリ〉
トリックスター
㐂のJACKPOT〈ジャックポット〉
どんなときでも「これは、俺に任せとけ」
写実主義のKORE〈コレ〉
メーラ・ジャッロヴェルデ所属
霊妙のNEZELOA〈ネゼロア〉
召命完了
QED〈クォッド・エラト・デモンストランダム〉
メーラ・ジャッロヴェルデ所属
清楚系ギャル
光明のRENA〈レナ〉
セロ弾きのロマンチスト
口達者のSORE〈ソレ〉
数々の魔獣を従える
分割のTITAINE〈ティタイン〉
鉄十字騎士団
〈ジ・アイアン・クロス〉所属
咆哮のVECTOR〈ヴェクター〉
硝子のWYZEL〈ワイゼル〉
深淵のXENON〈ゼノン〉
水晶羊のYELIEL〈イェリエル〉
一過性のZEVON〈ジヴォン〉
などなど……
XYZの頭文字を持つ三人は、座標軸三人組とも呼ばれたりする。
だが、あまり仲はよくない。
魔王シンを除き、十八人の姿が確認できた。
この教室にいるのは全員で、十九人である。
残りの七人は、不在だ。
実は、魔王シンには、異名がまだなく
名もなき者と呼ばれている。
天王子は、新米や新参者、名もなき者と最初は名付けられる。
そこから、魔法や能力の特性に応じた二つ名が授与される。
一年以上いなければ、名前がつかないので、異名のある天王子は、皆二年生以上だ。
また、冷徹のエレナ、現在の名前を氷拳のアルジーヌが、そうであるように、条件をいくつか満たせば、首席となり、海内女王または天地国王になる資格が与えられる。
魔王シンの目的は、四王国で四権英雄になることであり、彼からしたら長い、退屈な一年が待ち遠しかった。そう思っていた……