10話 河童の白胡椒
どこかに辿りついたユニムが辺りを見回すが、平地のようだ。
ユニムはここがどこかわからないでいた。全身黒い何かが、走ってくる。
まさか、魔獣だろうか?
「きゃ…」
「聞こえますか」
この声は・・・
ユニムは一瞬でわかった。
「ゼルドか」
「はあい。ここどこですか」
「知らんぞ」
どうやら、ミミックの胃袋は外に繋がっていたようだ。ブルースカイから連絡はない。待つのは退屈のため、2人は、足並み揃えて、檳榔樹黒色の山をめがけて歩くことにした。
あまりにも突然だった。周りの景色と同化して、その姿を捉えられなかったユニム達。
近づいて、初めて気がつくと、ソレは、話しかけてきた。
「なあ、あんたらこんなとこで何してんだ?こんな、辺境の地でよ」
人語を介す魔獣だろうか?
「白いではないか。なんだ、この生き物は」
全身真っ白なので、背景が後ろの山と被ると、白さが際立っている。
「白いですね。人型ですが、水掻きがついてますよ」
ここはどこか?
答えはアダマス王国の「ブロンズプレーンズ」
銅がよく採れることで、有名だ。
2人が出くわしたのは、これは………河童か?
どうやら、この世界「――セレスティアル――」には、妖怪もいるようだ。
「戦うぞ。ゼルド。魔獣だ」
「おっかしいなぁ、昼間ですけどね。まあ、いっか。
「やりましょう。ユニム様」
河童は、にやけている。なにか策でもあるのだろうか。
「このホワイトペッパーと戦うつもりか?
「おもしれえ。
「範囲は、この平原全体だ。2対1でも勝ってやる」
範囲?なんの話だ?
河童のホワイトペッパーは、あきらかに私たちの世界でよく見る「相撲」の構えを取っていた。
よく見てみると、黒い褌をしている。
さては、稽古中だったのだろうか?
「では、ルールだ。
「地面に足の裏以外をつけさせた者が勝ちだ。
「単純だろう?
「手を着けたら、開始だ」
「え?どこにです?」
「地面に決まっている。
「なんだ、相撲の『す』の字も知らないのかよ」
「はい。これでいいで………」
「ぶほっ」
力強い張り手をくらったゼルド。
「な、なにをするのだ」
「なんだ、残りは女の子か。相手になんね」
「私は、海内女王になる女だ。甘くみてくれるなよ」
「なに?海内女王だと?
「おもしれえこと言うな。
「やってやるよ。
「かかってこい」
ユニムに向かって、突進するホワイトペッパー。
「ど、どうすれいいのだ」
ユニムは、力任せにホワイトペッパーを押し返した。
「非力な私にこんな力が?」と、困惑している様子だ。
「くっ………やるなぁ。本当に女か?」
「手加減は必要ないな。一応………名前聞いとくぜ」
「私の名はユニムだ」
2人が相対して、睨み合う中、蹲っていたゼルドは立ち上がった。
「困りますよね。ユニム様。
「この魔獣、僕をお忘れみたいですよ。
「それにまだ、どこも地面についていませんよ」
不敵な笑みを浮かべるゼルド。
「魔獣?さっきから何言ってんだ?俺の頭が沸騰して、皿が乾いちまうじゃねえか。いいだろう。こんなもん飾りだ。あんたらが、勝ったら、俺の勲章くれてやるよ」
「魔獣じゃないのか」
「えええ」
「魔獣だと?勘違いも甚だしい。俺は、外から来たんだよなぁ。」
外側について、知るものは少ない。そうなのだ。これは彼女にとって、好機だった。
チャンスというものは、誰にでも平等に訪れる。
たまには、逃してしまうことだってあるが、自分で作り出すことだってできるのだ。
そのような、先見の明が彼女、ユニムにはあったのだ。
「欲しいです。ください」
目先の欲に囚われたゼルド。
「そんなものは、どうでもいい!勝ったら、外の話を聞かせてくれ!」
勲章をもらえば、確かに海内女王までの道のりは、近くなる。
しかし、ユニムは、ブレない。
基軸となる信念が、やはり彼女の心にはあった。
「変わった奴だな。構わねえが」
「どうします?ユニム様」
「私が触ったら、―――と言え」
「わかりました」
少しばかり、ユニムの発言が聞こえづらい。
ユニムがゼルドに触れる。
「氷結です」
ゼルドの手から、消防車のホースのように水が放たれる。
「ぷっ、なーにが氷結だ。放水の間違いだろう。
にしても魔法が使えるのか………ますますおもしれえ。
敵に塩を送ってんのかよ。
おかげで、こっちは、元気120パーセントだ」
みるみるうちに、ホワイトペッパーの筋肉が膨れ上がっていく。
「どうしよぉ………ユニム様」
「致し方ない」
「ユニム様、僕達の負けですよ。これは……」
「あっ、危ないぞ」
「俺の渾身の一撃だ。張り手」
ホワイトペッパーは右腕の筋肉を肥大化させている。
「まずいぞ」
ユニムにホワイトペッパーの張り手が襲いかかってくる。
その時、肥大化させすぎた筋肉の重みにより、ホワイトペッパーの重心が崩れている。
思わず、よろけると。
片足が、浮いた。
「あ、ありゃりゃ?」
彼も予想外だったようだ。
ホワイトペッパーは、バランスを崩し、転倒する。
ユニム達は、無事、勝利した。
「あ、あれ?」
「勝ちましたね…」
「なんでそうなるのだ」
「私は何もしていないぞ」
「不甲斐ないぞ」
「もういい。たくさんだ。頼むからよ。俺の自尊心を傷つけないでくれ」
「あの、大丈夫ですか?」
ゼルドが手を差し伸べる。
「ホワットペッパーさんですよね?」
「な、てんめえ。ホワイトだ」
「あ、ワイドさん?」
「ホワイトペッパーだ」
そこへ、ユニムが歩み寄る。青い瞳は、好奇心の扉を待ちきれないのか。
燦々と輝いていた。
「私の勝ちだ!話を聞かせてくれ」
「そうか………そういえば、そうだったな。
「約束だもんな。
「いいぜ。
「聞かせてやる」
そう言うと、ホワイトペッパーは深呼吸をして語り始めた。
「俺は、ここに来る前、外側の世界にいた。そこで、旅の人を見つけた。大きな人だったな」
「ついでに、頭が短髪で黄色くてよ。上裸だったな」
「名前を聞いたが、言いたくないらしくてな。不思議な人だと思った」
「あまりにも、珍しいんでどこから来たんだ?って聞いたのさ」
「そしたら、アダマスって言ってたんだ」
「どこだろうと思ったな。その時の俺は知らなかった」
「俺たちの国でも、相撲はやってたからな」
「さっきみたいに、俺と勝負しろって言ったんだ」
「そしたらよ、見事な撞木ぞりを決められちまってな。驚いたよ。その技自体、初めて見たし、初めてかけられたからな。使うやつがいると知って、驚いたさ」
「頼む。もう一回。て言ってよ。閂をしたら微動だにしなくてよ?」
「腕をもたれた、と思ったらそこはもうわかるだろ?」
「綺麗な一本背負いだったな………」
「俺は思ったんだ。この人について行かなくちゃってなってな。弟子にしてくれってせがんだ。そしたら、四皇獣を探してるっていってよ。ついていったわけよ」
「そしたらよ、会っちまったのよ。そいつは、この世界セレスティアルの西の果てにいた」
「そいつこそが、伝説の四皇獣『ケラウノス』で………」
「ゼルド」
「あ、寝てるのか。長かったか?」
「興味深かったぞ!それで、『ケラウノス』はどんな見た目をしていたんだ?」
「俺の知ってる言葉で表すなら、『鬼』だよ。あの、オーガみたいな感じのよ」
「おーが?なんだそれは」
「知らねえのね。教えてやんよ」
概要 (Overview):河童 (Kappa/Water demon)
◆河童は、日本の水の妖怪。
水神、またはその依り代、またはその仮の姿ともいう。
鬼、天狗と並んで日本の妖怪の中で最も有名なものの一つとされる。
関連する有形の遺物としては、私達の世界にに河童神社、河童塚(鯨塚、道具塚と同じ)がある。
類縁にセコなどがいる。
【名称】
「かっぱ」は、「かわ(川)」に「わらは(童)」の変化形「わっぱ」が複合した「かわわっぱ」が変化したもの。KAWATAROUとも言う。ほぼ日本全国で伝承され、その呼び名や形状も各地方によって異なる。
【外見】
体格は子供のようで、全身は緑色または赤色。頭頂部に皿があることが多い。
皿は円形の平滑な無毛部で、いつも水で濡れており、皿が乾いたり割れたりすると力を失う、口は短い嘴で、背中には亀のような甲羅が、手足には水掻きがあるとする場合が多く、肛門が3つあるとも言われる。
体臭は生臭く、姿は猿やカワウソのようと表現されることもある。
両腕は体内で繋がっており、片方の腕を引っ張るともう片方の腕が縮み、そのまま抜けてしまうこともあるとされ、これは、中国のサル妖怪で、同様に両腕が体内で繋がっていると言われる「通臂猿猴」の特徴と共通している。
ウィキペディア (Wikipedia)より