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神に在る
もう遅い。
確かに夜は更け、既に廃れてしまっている。
もう遅い。
そのようなこと、心の片隅では分かっていた。
でもまだ希望はあり、視界にも明るさはある。
希望を捨ててしまってはそれきりだというのに、止める馬鹿がどこにいるのだ。
「祓い給い清め給え、神ながら守り給い幸え給え」
もう何度繰り返したかは覚えていない。
ただただ大麻を右に左に振り回し、略拝詞を唱え、台に置いてある物に向かい禁厭の言葉も唱え。
前までならと考えてしまってはいけない。
どのような状況になろうと続ける。
覚悟を決めるべく脳内で己に語りかけているところで、一瞬空が明るく光った。
少しして遠くから雷の落ちる音がしたと思えば、いきなり雨が打ち付けてくる。
雨の勢いで台から落ちた物を見ながら、動きを止めて棒立ちになりながら。
──あってはならぬ、神と仏が併さることなど、あってはならぬのだ。