(8)闘え! 踊れ! 再びの襲来
「おお! こりゃまたいっぱい来ているな」
ドドドという轟音を響かせ、夕日で赤く染まった毛玉の大群が迫ってきていた。
襲撃に備えて設置された木製の柵、バリケードの前に踊りの陣を張った。
俺を先頭に、20人の村の踊り手たちが整列した。
「よーし、今度こそはじめっからビビらずにやるぜ!」
「おう!」
俺たちは雄叫びを上げた。俺の目線を合図にブリちゃんは楽曲を召喚した。
俺たちは軽快な音楽に合わせ、掛け声を掛けながら、体を躍らせた。
「ヨッ、ホッ、イヤッ、ハッ、ソレソレソレッ!」
「ヨッチョレ! ヨッチョレ!」
「おい! そんな声じゃ聞こえねぇぞ。もっと大きな声で!」
俺が煽ると、踊り手たちは張り裂けんばかりの声で叫ぶ。
「よっこいしょお! よっこいしょお!!」
「そうだ! いいぞ! もっとだ! 大きく手を振るんだ!」
最初はバラバラだった動きも、声を掛け合うと徐々に揃ってきた。大きく振るう腕からは、カタカタと鳴子の音が小気味よく響く。
「レン、こっちに来る!」
「わかってるっ!」
ラビの大群は何重にも張り巡らしたバリケードをなぎ倒し、こちらに向かってくる。障害物にぶつかると動作が遅くなるが、勢いは衰えない。大群衆のパワーで障害を越えていく。
額から汗が伝い落ちる。これは冷や汗かもしれない。火照った背中がゾッと寒くなる。
頭中に響くドドドという地響きが俺を急かす。
恐怖心を押さえつけ踏ん張ると、村人のひとりが悲鳴を上げた。
「ひぃぃっ!!」
腰を抜かす村人の首根っこを掴み押さえ付けた。
「逃げんな! 大丈夫だ。ブリちゃんがなんとかしてくれる。ブリちゃん、よろしく頼みむ!」
「傷つけたくなかったけど、しょうがない」
ブリちゃんは火花をまとった指先を、俺たちに最接近しているラビに向けると、たちまち火柱が上がった。ラビの大群は驚き、丸まって動きを止めた。
命綱である最後のバリケードを挟み、あと数メートルのところでラビの大群と対峙した。ラビはキュキュと喉を鳴らし、毛玉を寄せ合い静止している。
いつまで静止してくれるかはわからない。前回みたいに威勢のいい踊りで威嚇し、追い返すには絶好の機会だ。こんな近くで俺たちのステージを見てくれるんだから。
「よし、ここで、もういっちょ! 死ぬ気で踊るぞ!」
ラビに背を向け、踊り手に向けて檄を飛ばした時、バリケードをすり抜けて一匹の小さなラビが突進してきた。
「あぶないっ! ……うっ」
俺を突き飛ばしたブリちゃんはかわりにラビに激突され、地面に倒れ込んでしまった!
「ブリちゃんッ!?」