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(10)勝利のためにために踊れ!

 

 ドラムのリズムに合わせ、俺と20人の村の踊り手たちは声が枯れるまで叫んだ。

 

「ソレソレソレソレ!!」

 

「どっこいどっこいどっこいしょ!!」

 

「よっちょれ、よっちょれ、よっちょれや!」

 

「よいしょっ!! よいしょっ!!」

 

「ほっ! よっ! はっ! はっ! よっ!」

 

 ラビの大群をバリケードで押さえ付けている村人も、踊りの練習を投げてしまった村人も、子供たちも、一緒になって声を合わせた。

 

 群衆の掛け声に混じって、パパンと弾ける音がして、空に火花が散った。赤や青、緑、黄色など様々な光がキラキラと空に舞った。残像を残して散っていく。

 

 その瞬間、ラビも村人も驚いて空を見上げた。

 村人からは感嘆の声が漏れる。

 

 それはブリちゃんが放った火花の魔術だった。

 

「花火だ! すげけぇぞ、ブリちゃん! まさか異世界で花火が見られるなんて……」

 

「音楽を召喚するときに、レンの記憶を辿っていたら、この絵が浮んだの。これだったら、今のアタシでもできる。夕暮れで真っ暗じゃないから、全然綺麗じゃないかも知れないけど……」

 

「いや、すっげぇ綺麗だよ」

 

 ブリちゃんは利き手ではない無事な方の腕を使って、途切れ途切れで魔術を繰り出していた。

 

 確かに夜の花火ほど綺麗なものはない。でも、俺を元気づけるために打ち上げてくれたブリちゃんの花火は今まで見たどんな花火よりも綺麗だった。

 

 腹の底から、“踊りたい衝動”が沸き上がってくる。

 

「よーし! 最高の舞台ができた。お前ら、踊るぞ!」

 

 踊り手たちも、それ以外の村人も、思い思いの振り付けで体を動かし、踊った。動きはバラバラだったけど、心はひとつだった。

 

「よいっ! よいっ! よいっ! よいっ!」


 ここにいる誰もが、心の底から沸き上がるリズムにあわせて体を躍動させていた。

  

 心がひとつになると、バラバラだった手足の動きも、不思議と徐々に揃っていく。

 カタカタと鳴子の音が揃うと、その音に反応したラビがピクピクと耳を動かし、挙動不審な動きを始めた。突進するのをやめ、様子を伺い静止した。

 

 好機とばかりに俺は声を張り上げて合図を送った。

 

「ここだけは振りを合わせるぞ! できる人はやってくれ」

 

 深く腰を落とし、網を引く動作をするソーラン節の、あの動作だ。

 

「どっこいしょ! どっこいしょお!!」

 

 全員の気合いと動作がひとつになった。

 踊り手の動きは一糸乱れることなく揃い、大勢の掛け声がひとつになると、迫力が増した。

 ブリちゃんが放ち続けている火花も踊りと士気を一層に高めてくれた。

 

 バリケードを支える村人たちは、気合いに合わせて外へ外へとラビを押していく。

  

「どっこいしょっ!! どっこいしょっ!!」

 

 ラビは抵抗するのをやめ、徐々に草原の方に押し返されていく。

 

「もう少しだ!!」

 

「押せ押せ!!」

 

 村人たちが次々に声を上げ、ラビを押し返す。後列のラビたちが草原の彼方に向かって駆け出すとそれを追いかけるように、ラビの大群が走り去っていく。

 水平線の彼方に赤く染まった毛糸たちが消えていった。

 

「終わった……」

 

 バリケードを支えていた村人、踊り手たち、村長、みんなが力尽き、その場に崩れ落ちた。

 

「やったぞ――!! ラビの大暴走から村を守ったんだ――!!」

 

 静寂を破るように、誰かが叫ぶと、次は歓喜の声に包まれた。皆が肩を抱き合い、涙を流し健闘を称え合った。


「ブリュンヒルデ殿、レン殿。あなた方のお陰です」


 村長は涙を流し、深々と頭を下げてきた。


「そんな、頭を上げてください」


「これは村のみんなと、よさこいの力だのおかげだ」

 

 村を救ったのは村人自身の力。よさこいが彼らの心を動かし、奮い立たせた。

 

 俺はよさこいを踊り続けてきたことを誇りに思う。

 

 


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