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(9)ブリちゃんが負傷っ! ピンチに現れたのは……


 激突してきた小型のラビは突撃してきた衝撃で気を失って伸びていた。被害を受けたのはブリちゃんだけだ。

 ブリちゃんは身を挺して俺を庇ってくれた……。

 

「ブリちゃん!! 血がっ……」

 

 鋭い爪で腕を引っかかれ、腕から指先まで流血していた。命に別状はなさそうだが、魔術を繰り出せるかはわからない。

 

「うううっ!!」

 

 鉢巻きをほどいてきつく巻き、出血部位をおさると、ブリちゃんは顔を歪ませ、苦しそうにうめいた。

 

「すまない。こんな目に遭わせて。俺の不注意で、怪我させて。俺だったら、怪我してもたいしたことないのに」

 

 俺の腕の中でブリちゃんは申し訳なさそうに首を振った。

 

「レンが踊れなくなっちゃったら困るから。アタシの攻撃魔術だけじゃ、ラビを追い返せないよ」

 

「……そんなことねぇって、ブリちゃんの魔術がなきゃ俺は踊れねぇよ。また音楽とか火柱とか、できるか?」

 

 怪我をしているブリちゃんに無理をさせることを承知で問い掛けると、彼女は口を結んで悔しそうな顔をした。

 

「わからない」

 

 ブリちゃんがサッと血の気の引いた顔をして、バリケードの方を見た。俺も顔を上げ、そちらを見る。冷や汗が背中を伝い落ちた。

 

 バリケードの柵が、もう限界だ。

 

 ラビの大群がバリケードに向かって体を押しつけていた。それを必死に抑えている踊り手たち。歯を食いしばっている。苦痛な声が聞こえる。もう抑えるのは限界だ。

 

 どうする? ひとりで踊る? それでラビを脅かして追い払うことができるのか?

 

 俺も村人たちに加勢してバリケードが倒れないように、ここを守るのか?

 

 守るか。攻めるか。

 

 ふたつの策が頭の中でぐるぐる回り、決めかねていたその時、後ろから草原を踏みつける足音が聞こえてきた。

 

「レン殿、お待たせして申し訳ない。ここは我々にお任せを!」

 

「村長!!」

 

 小さいドラムに木の棒を携えた村長。そして、村人たち。

 

 丸太を格子状にした柵を持った村人たちが、村長の合図でラビの最前線に再び新しいバリケードを作った。

 

「これで、じゅうぶんに踊れますな」

 

 村長は木の棒でドラムを叩き始めた。


 聞き覚えのあるリズム。“よっちょれ”の太鼓だ。

 

「下手だが、お前さんが踊っていたあの曲を思い出して叩いておる。畑を荒らす鳥を追い払うのに使っていたドラムが役に立ったわい」

 

「村長! 太鼓ってやつは本来音楽のために使うものだぜ! ありがとな!」

 

 腰を痛めて踊れなかった村長はどうやったら参加出来るのか、必死に考え抜いてくれたらしい。

 

 生のドラムの音に、俺の心が躍り、揺さぶられた。腹の底から、情熱が湧き上がる。

 

「よっしゃ――!! 踊るぞ!」

 

「おー!」



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