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始まりはいつもナイフ(引っ込み)

「グサッ……」


「グサッ…….」


 俺の名前は黒岩唯人、髪を染めていてちょっと見た目が怖いだけの普通の高校生だ。今、登校中だがナイフで背中をグサグサと刺されてる。ちなみにもうすでに30回も刺されている。


「グサッ!」


 今ので31回目だ。しかし、俺は別に死にかけてもいないし幽霊になってしまってもいない。言ってしまえば、かなり困惑しているくらいだろうか。


 それはなぜか。


 それは刺されているナイフはドッキリ用の引っ込むナイフであり、刺しているのは小学一年生になったばかりの少女だからだ。






「はぁ、何をしてんだ?」


 俺は歩いてた足を止め、後ろを振り向いた。


「?なにって?」


「だから、何をしてるんだよって」


「ナイフでたくさんさしてるだけだよ?」


 俺は呆れながらそう言うと、俺の目線よりかなり下にいる少女は首をかしげながらそう答えた。


 その小さい少女の名前は白神唯華。


 俺の中学時代にお世話になった人の娘だ。小学生らしいかわいらしい見た目をしており、腕は雪のように白く折れそうなくらいに細い。


 そんな唯華はなぜか学校がある日の朝は必ず学校へ行く通り道で俺を待って、一緒に学校までついてくる。別に俺の通っている高校と唯華が通っている小学校はとなりにあることや唯華はお世話になった人の娘であることもあり、気にしていなかったし、もう約一か月これを繰り返しているともう慣れてしまっているのだが、さすがにこんな奇行は初めてだから、疑問が絶えなかった。

 今までも変な行動は多かったがここまでのは初めてだ。


「いや、それは見たらわかるだろ。何でそんなことをしてるんだってことが聞きたかったんだよ」


「もう!まえからなんどもいってるでしょ!わたし、はやとのことがすきなんだもん!」


 彼女は頬を膨らませながらそう言った。

 由衣はなぜか俺のことが好きらしいのだ。前、なんで俺のことが好きか聞いたことはあるが格好いいからの一点張りだった。


 それにしても、なんでナイフで刺すことと好きだということがイコールになるのかがさっぱりわからない。


「でも、ナイフで刺したからって好きになるわけないだろ」


「え?そうなの?」


 俺はため息をつきながらそう聞くと、唯華はきょとんとした表情をした。


「当たり前だろ。なんでそんな勘違いをしてんだよ」


「だって、ほんにかいてあったんだもん」


「どんな本だよ」


 俺はあきれながらそう聞くと


「ママにもらったれんあいのほん」


 唯華はニコニコ顔でそう答えた。しかし俺はその名前を聞いてため息を吐いた。


「よりにもよってあの人かよ。」


 もちろんその人とは面識がある。この前会った時は少し抜けているようなほんわかしたような印象で、夢見がちな性格になっていた。


 そのため、唯華に変な本を渡した可能性があるのだ。俺は恐る恐るその本について聞いてみることにした。


「どんな内容だったか教えてもらえるか?」


「うん!」


 唯華は元気のいい返事をしたが、すぐはっとした顔をするとからっていたランドセルを下ろしてあさり始めた。


「どうかしたのか?」


「あのね、そのほんいま、もってるからかしてあげる!」


 そう言って唯華は本を取り出して俺に渡してきた。


「お、ありがとな」


 学校にそんな本持って行くなよと思ったが、めんどくさいことになりそうだなと思い、言葉を飲み込んだ。


 はいっ!と言って差し出すと唯華から本を受け取って、本の表紙を見てみると、それは明らかに子供向けではない闇が深そうなタイプの恋愛漫画だった。


「あの人は、小さい子にどんな本渡してんだよ!!」


「わたし、ちいさくないもん!」


「いや、お前めちゃくちゃ小さいじゃねえか」


「ちいさくないもん!くらすではおおきいほうだもん。」


 俺は知っている、もちろん嘘だ。


「ていうか、そこにつっからなくてもいいんだよ」


 そう言って、唯華のおでこにデコピンした。


「あー!ひどい!」


 手をおでこに当てて怒っているような表情をする唯華に対し、ため息を吐いた。


「はいはい悪かったよ。で?結局、そのナイフで刺したら好きになるってことが書いてあるページどこかわかるか?」


「うん!かして」


 唯華は俺の手からその本を取ると、ぺらぺらとページをめくっていく。そして、動きを止めると元気よくそのページを見せた。


「ここ!」


 そのページを見ると、「このナイフであなたを刺して、私だけのものに」みたいなことが書いてあった。


「そういう意味じゃねぇよ!!」


「え?そうなの?」


「こういうのは安いおもちゃのナイフでするんじゃなくてちゃんとしたナイフでやるんだよ。それにやったら警察に連れていかれるぞ。」


 なんでよりにもよってあの人はこんな本を渡すんだよ。唯華が純粋じゃなくて、マネしてたら俺の命終わってたぞ。


 俺があきれていると、唯華は俺の服を引っ張るとナイフを見せてきた。


「このないふやすくないよ?がんばっておこづかいためて700えんでちゃんとかっんだもん」


「だからそういうことじゃねえよ。大体、お前は変なところにいちいち突っかかりすぎなんだよ!」


 俺はまた唯華にデコピンをした。


「あー、また、たたいた!」


「うるせえ、ナイフは帰るときまで没収だ。ナイフなんて持ち歩いてたら変な目で見られるぞ」


 俺は唯華の手からナイフを取り、唯華を置いて歩きだした。俺は時間に余裕を持って家を出るタイプではないので、かなりHRの時間が迫っていた。俺が歩きだしたことに気づいた唯華は短い脚を頑張って動かし、俺を追い越すと通せんぼをした。


「まだ、あるいちゃだめ!」


「なんでだよ?もう時間ギリギリだぞ」


 今いる場所から学校まではまだかなりある。しかし、HRが始まるまであと15分しかない。俺だったら余裕で間に合うが、唯華はぎりぎりになるだろう。


「だってまだききたいことあるもん!」


「なんだよ?時間ないからさっさとと言え」


「あのね、どんなナイフでさせばすきになってくれるの?」 


「ナイフで刺されて好きになるやつはいねえよ!それにそんなことはお前は知らなくていいんだよ!」 


「きになるからおしえて!」


 唯華は興味津々は顔で俺の顔を覗き込んでくる。

 答えないほうがいい気がしたが、このままでは本当に遅刻してしまうので仕方なく答えることにした。


「この本のナイフは料理に使うような切れるナイフだよ」


「そんなことしたらすきなひとしんじゃうよ!」


「だからそういう話なんだよ!」


 そういうと唯華は口先をとがらせた。


「ん~!ママうそのほんわたした。かえったらメッする!」


「ぜひ、そうしてくれ。あと、俺が怒ってたことも伝えてくれ」


 本当にあの人は何してんだか、ぜひこれを機会に一回反省してもらいたい。


「俺の代わりにこっぴどくしかれよ」


「うん!わかった!」


 なんとか納得してくれたようでようやく歩き出そうとすると、唯華は手を差し出してきた。


「て、つなぐ!」


「へいへい、わかったよ」


 いつもだったらつながないのだが、今日は時間がぎりぎりだったので駄々をこねられないように手をつないで歩きだした。


「えへへ、て、あたたかい」


 唯華は顔を手に擦り付けてきた


「別に今寒いわけじゃないだろ、もうすぐ夏だぞ」


 今は六月であり、そのセリフとは真逆の季節である。

 それにしても、こんなセリフまで知ってるってどんだけ変な漫画をあの人は読ませてるんだよ。


「なつやすみになったらいっぱいあそべるね」


 そういって、唯華はえへへと笑った。


「そういう意味じゃねえし、なんで俺が遊ぶ前提なんだよ」

 俺は若干あきれながらそう答えると、唯華は悲しそうな目をした。


「遊んでくれないの?」


「はぁ、また夏休みになったら考えてやる」


「ほんとう?やったーー!やくそくだよ!」


「まだ考えとくだけって言ってるだろ」


 俺はそういいつつも、手をつないだまま、両手を上げて喜ぶ唯華を見て、これは断れそうにないなと思った。





 しかし、このままだと時間が間に合わねえな。


 スマホで時間を確認して、そう思ったおれは持っていたナイフをバックに直し、唯華に向けて両手を広げた。


「どうしたの?」


「間に合わねぇから走るぞ」


「うん!えへへ、お姫様抱っこ~」


「馬鹿なこと言ってんじゃねえ」


 俺は普通に唯華を持ち上げて、走り出した。





 瞬間、後ろから


「あの人です、今ちょうど誘拐しようとしています!!」


 という声が聞こえ、俺は足を止めるのだった。

題名を募集しますので、こっちの題名の方がいいと思うと思った方はぜひコメントください。


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続きを書く力になります。

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