第59話 戦いの残響
静寂が長く続いた。
煙と粉塵のの中で眠るふたりとミレフリア・カタストロフ。
「相打ち」という結果は、観客席に居た誰も予想していなかった。しているとすれば、ミレフリア・カタストロフくらいだろう。
だがやがて、誰かが小さく手を叩いた。
ぱち、ぱち、と。
それはやがて波紋のように広がり、次の瞬間には雷鳴のような大歓声となって闘技場を揺らした。
「ウオオオオオーー!!」
「ヴィオリカ!ロスリエル!」
観客は総立ちになり、両者の名を叫ぶ。涙を流す者、拳を振り上げる者、自分も戦いたくなった者、ただ震えて座り込む者さえいた。
熱狂と感動が渦を巻き、闘技場を覆っていた重苦しい空気は一瞬で歓喜にかわる。
やがて、ロスリエルとヴィオリカは目を覚まし、状況を理解する。
「流石だったな。王候補。」
まだ精神的な疲労の滲む口元で笑う。
「君こそ、狡猾の極みだ。普通に頭脳戦で負けていたしね。次こそは、決着をつけよう。」
ロスリエルも同じく笑って応える。
そのやり取りに観客は再びどよめき、既に大歓声へと変わった。
◆
舞台袖から、武闘大会出場者が現れる。変に透き通ったミレフリアの声が響く。
「只今より、表彰式を始める!」
闘技場に鐘の音が鳴り響く。
先程まで、雷鳴と鎖が衝突したかのように震えていた観客の歓声は収まり、今や厳かで荘厳な空気に包まれていた。
舞台中央、崩れた闘技場を急ごしらえで修復した壇上に、3本の旗が掲げられる。
学園の紋章、武闘大会の紋章、ミレフリア・カタストロフの紋章だ。
観客席に座る者達の視線は一斉にそこへ集まる。
「第1位──は相打ちにより、ヴィオリカとロスリエルの2人だ!
両名、前へ
では、第3位、ストロエリー!前へ。」
ミレフリアの澄んだ声が響く。「相打ち」と言う前代未聞の結果により、今回の大会に正式な「優勝者」は存在しなかった。だが、観客にとってそれは不満ではなく、むしろ”伝説の証明”として記憶に刻まれるだろう。
(3位はギングじゃないのか……まあストロエリー強かったもんな。3位決定する時に負けたのかな。)
◆
壇上にたつ3人。それぞれがミレフリアと握手を交わす。
(ふぅ〜〜〜どーんと疲れたあ。身体は元気だけどなあ。やっぱり精神的な疲労というかなんというか。でも、楽しかったなあ。もう入学は確定してるし、楽しみだなあ。)
ヴィオリカは、上の空であった。
◆
表彰式の後の夜、ミレフリアは月夜を眺めながらワインを嗜んでいた。
(星の歌が進行してるな。指揮者はおそらく…………)




