第54話 王花、頑として咲き誇る その4 開花
僕はロスリエル。本来はサラナザルとか長ったらしいのがついてるんだけど、この学園にいる以上はただのロスリエルだ。
今はまだ12歳だけど、英雄学園を卒業して成人したら、国王候補者として、勇者として兄弟姉妹達と争わなければならないんだ。
本当は、気ままに旅をしてみたいとか、森でのんびり過ごしたりもしたいし、辺鄙な町でパン屋を営んだり、釣りもしたい、牧場とか農場もやってみたい。
日々の仕事をこなして、酒場でお酒でも飲んで、友人からの紹介で女性と知り合って恋をしたりしてさ。付き合って結婚して、おしどり夫婦とか近所の人に言われて照れたり、そのまま長生きして最後には子供に囲まれて老衰で死んだりしてさ。
そんな事を望んでたもんだから、正直国王を選ぶ王位継承争いからは退こうと思ってたんだ。
でも、10歳ごろに王都を出て、旅をしてそんな甘い考えは捨てた。この国は今、悲しみや、怒りや、恨みとか悪感情に満ちている。
人々は未だに魔獣の恐怖に苦しんでいる。人々は未だに盗賊団、邪神教徒等の組織や連続殺人犯リューク、強奪者ブンテルダのような強大な個人にも怯えている。他にも悪い組織や人は絶えずに増え続けている。
ある日、善良な人が悪意にあてられ、怨嗟と復讐心の鬼となる。そんな瞬間を見た。見てしまった。その人が他の人に悪意を向け、様々な人が悲しみ、苦しむ。そんな悪意の螺旋が、人々に感染症のように広がっているのだ。
そんなの…………そんなのあまりに酷いじゃないか。僕はもう、誰にも争って欲しくない。人に殺意を持ったり、恨んだりして欲しくない。
だから、そんな悲しみのループを断ち切りたい。その為には、王国を変えなければならない。じゃあ、その王国を変えるのに1番良い立場は?国王だ。
そんな事を思った日にはもう考える前に身体が動いていた。継承争いに加わるか否かはまだ明らかにしていなかったのだが、伝言を飛ばし、王都の記者に継承争いに加わるという旨を伝えた。
周辺の町や村で盗賊団が現れたり、魔獣被害の報告があったら直ぐに駆けつけた。そんな事を繰り返していたら、いつの間にか僕を慕ってくれる仲間が出来た。人々の支持を集める事ができた。継承争いで優位に立とうと必死だとか…………手厳しい意見も貰った。そして勇者見習いとか、次世代の英雄とかいう称号も貰った。
そんな日々を送っていると僕の耳にある噂が入ってきた。同年代に、ヴィオリカ・シャトーカノンという人がいるらしい。何でもその人は、天才、異能と呼ばれているそうだ。1人で凄い魔物を倒したりして、もしかしたら僕より強いとか言われてるみたいだ。
その話を聞いた時、僕は思った。ヴィオリカが欲しい、と。王になるには、その人の支援が必須とか、その人を駒として動かせたら継承争いに勝てるとか色々勘がした。とか色々自分の中で理由をこじつけた。国王候補者としてあまり適切な言葉ではないが、言ってしまおう。
僕は、正直この年齢の中では自分が最強だと思っている。血筋も、実力も、性格も、容姿も他より圧倒的に優れている。そんな僕より優れている?強いかも?
良いなぁ。それでこそ…………それでこそ支配する甲斐がある。上位者として、国を統治する国王として最も支配するべき駒!
この国に今必要なのは、圧倒的な個だ。全てを照らし尽くして、影すらも生み出さないような圧倒的な個。国民は僕、いや俺という圧倒的な個を道標に先へと進んでいく。
俺はそんな個になりたい!いや、なる!
今はまだ俺は未熟だ。だから色んな人の力を借りて輝かなければならない。仮初の光でも良い、いずれ自分の力で輝いてみせる。それまでの補助。ヴィオリカの光を超えられるポテンシャルを俺は持ってるんだ。
だから…………だから今、ヴィオリカとの試合に負けそうでも、俺は負けないんだ!次勝てるんだ!俺は諦めない。失敗して諦めずに次挑んで失敗を成功に変えるのが俺…の…………取り……柄……
違う、違うだろ!国王に次なんて物はないんだ。身体の傷は奇跡や魔法によって治る事はあっても、心の傷は治らないとか、人は死んだらミレフリア・カタストロフにすら条件が無いと生き返せないとか。
国王は1度の間違いで国が傾く。
昔、父様の眼を見た。見た瞬間、鳥肌が立ってしまった。気迫があった。父様は武力が優れている訳でも、圧倒的な知略に長けている訳でも無い。なのに、ただただ恐ろしかった。
あの眼は、国を、幾つもの民草の命を背負っている者の眼だ。
あの気迫が、あの眼が欲しい。
負けない。負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けな負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けな負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けな負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けな負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けな負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けな負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けな負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けな負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない
負けたくない!今負けたら、今諦めたらあの眼を手に入れるまでの道を1本、いや振り出しに戻ってしまう。そんな気がする。
だから、だから動けよ!俺の身体!動け動け動け!HPが1桁に入った!痛覚が鈍ってきた!視界もぼやけている!それでも動け!動けぇぇぇぇ!!!
いくら心で念じても、ロスリエルの身体は動かない。こんな身体で動く人間は、居ない。ロスリエルは出血で死んだのだ。本来ならば、ここで終わる。ミレフリアが蘇生を始めるだが、ロスリエルが死んだ瞬間、世界が静止した。
そこに、男が現れた。全身が霞がかっていて、姿は確認出来ない。男は、周囲の妖精や精霊の魂を集め、ロスリエルの魂を補強する。まるで、ヴィオリカが魂魄闘技に覚醒した時のように補強していく。
そこで、ロスリエルは意識を取り戻す。
ん?なんだ。俺は死んだんじゃ?ミレフリア・カタストロフが生き返らせたのか?いや、そんな様子はない。ミレフリア・カタストロフの手によって装備すら綺麗になる筈が、ボロボロなままだ。
だが、HPもMPも全回復している。しかも、力が湧いてくる。魂が脈打っている!高揚が止まらない!全能感が溢れ出る!何だか知らないが、覚醒だ!俺は覚醒したんだろう!
この覚醒を物にする!そして、圧倒的な個へ!あの眼を持つ国王へ!




