第53話 王花、頑として咲き誇る その3
今回は短いです。色々設定考えました。はい。
目に炎のメラメラすら見える程の執念で何度も立ち上がり向かってくるロスリエルを見ていると、こちらも気分が上がってくる。応えなければいけない。そんな事を考えていると、一瞬だけ幻聴が聞こえた。アルトサックスの華やかな音色、色気のあるテナーサックスの音、低音が力強さを感じさせるバリトンサックスの音だ。
一瞬で消え去ってしまったが、それは確かに聞こえた。
超低姿勢で剣を構えこちらに、向かってくるロスリエルを見て、こちらも鬼星鼠天丸を構え気を締め直す。
超低姿勢からの切り上げが襲ってくる。速度や角度、言い出したらキリがないがその節々から技量が見える一撃に対峙、こちらは鬼星鼠天丸の重量と自身の力に任せ真正面から鍔迫り合いを挑む。
鬼星鼠天丸
この刀に覇気を込めると白く輝き、使用者の身体を蝕む代わりに、詠唱をすると技を放つことができるようになる。さらに、霊気を纏わせると黒く濁り、次の一撃の威力を大幅に上昇させる。
それは、とある鬼と鼠の意思が籠った大太刀である────
それは、とある剣から分裂した7つの武器。その1つである大太刀の錆びた姿である───
錆びて、壊れて、蝕まれ、綻び、その先には何が待っているのだろうか
鬼星鼠天丸を見ると、こんな説明文が出てくる。マジで誰が作ってるんだこれ。
鍔迫り合いの途中に鬼星鼠天丸に覇気を込めると思いっきり警戒しているような表情を見せてくる。
「うらぁっ!」
一気に力を込めてロスリエルの片手剣を弾いたあとロスリエルを蹴飛ばし距離をとる。
「棺台よ連なれ、娘たちよ集まれ、破軍二星線ノ鼠ガ走ル!」
鬼星鼠天丸を横に薙ぐと、白く輝く刀身が一瞬だけ黒く輝き、白い輝きがその黒い輝きに追い出されるように空中に散って行く。
その輝きは、超新的な爆発を放つ。
辺りが白に染まり、光が収まると、そこには荒れ果てた地面と血だらけのロスリエルが横たわっていた。
「今までの殺し合いでもう理解った。その妖精の祝福とかいうやつは、もう使えないと言ってもいいだろう?傷も深いし、もう霊力もほぼ無さそうだ。毛がも中途半端にしか治せないだろう?」
ロスリエルはじぶんのHPを確かめる。もう既に2桁に達しており、出血でほぼ死んでいると言っていい事に気がついた。
戦闘の興奮で感じさせられなかった痛みも、帰ってきた。
ロスリエルのHPが0になった。この時点で勝負が決し、ヴィオリカは勝者として称えられるはずだった。0になった瞬間、時間がほぼ止められていると言って良い程に引き伸ばされた。
やがて、どこからか男がやってきた。その男は辺りに散らばっている妖精などの魂をかき集め、ロスリエルの魂を補強していく。
補強が終わると、男は時間を通常の速さまで戻した。
(これは、俺の勝ちだな。歓声が気持ちいい。脳汁がとまらねえ。ん?ミレフリアよ、早くロスリエルを蘇生してやるのだ。)
辺りに異様な雰囲気が広がる。あのダンジョンでカンムと戦った時のような雰囲気だ。
「ボクは、諦めない。光を掴んで離さない限り、光は汝を見捨てない。サラナザル王家に代々伝わる言葉だ。光はボクを見捨てなかった!」
ヴィオリカの脳内にサックスの幻聴が響く───




