第49話 トーナメントその2:深く突き立てろ
試合終了後、学園の新聞部の人達に囲まれた。ストロエリーがどうだのサラブレッドだの何だの質問される。精霊の手とはとか能力を探るような質問も来る。
いや、え?うるさいなこいつら。ストロエリーは戦闘狂で変態なのは間違いないが、なんか侮辱するような質問も聞こえるしさあ。
威圧ってスキルもあるし、それで脅かそうとも思ったが、それじゃ面白くない。鬼気を解放しよう。
「そういうの、良くない。自分的には結構ストロエリーには苦戦したつもりだ。俺も侮辱してんじゃねえのか?その他の質問も不快なの多いわ。」
鬼気をどんどん解放していく。若干角が見えてきてるし、ここら辺で抑えよう。鬼仙魔の鬼気も混じっている為、威圧感は半端ない筈だ。あ、一人泡吹いて倒れた。
「俺のこの対応を記事にしても別に良いけどさ、他の人にはこういうのは控えような。」
あ、遠くからサリットが来た。ストロエリーには結構苦戦したしな。お叱りでも受けそうだがね。
「馬鹿、こいつらにムカついたんだろうがやりすぎだ。控え室行くぞ。」
あ、まずこっちのお叱りだったか。やりすぎかなあ?妥当だろ。
サリットから控え室で、色々批評をもらう。ここをこうすればもっと楽に勝てたとか、そんなんだ。
「まあ、色々言ったが、良くやった。魂魄闘技持ち相手が居るとは想定してなかったから使用禁止の課題を出したんだが、今後...居ないとは思うがもう一人居たら、使用を許可する。」
「うっーす。」
次の番が来るまでは、控え室で待機だ。他の人の試合は是非見たいが、まあ出場者は禁止されている。手の内知れるしな。試合を楽しむ目的なら、別に後から録画映像見せて貰えるっぽいし。今は疲れた心を癒そう。
ご飯食べたりジオに来て貰ってモフったりしていたら、時間が来た。
装備を整え、フィールド前まで行く。観客の声が聞こえる。テンション上がってきた。対戦相手の紹介が始まったぞ。
「次の試合、まずはコイツだ!名はシャミガ!シャミガの剣技は力任せに見えて技の節々にはその技巧が垣間見える!相手に一直線に向かう様はまるで狂犬だあ!」
俺も、フィールドに出るとしよう。わー歓声すんげ。衝撃波飛んできたと錯覚するレベルなんよな。でも悪くない。
「シャミガの相手はコイツゥ!ヴァオリカだ!初戦から歯応えしかない試合を見せてくれた!随分と血塗れでの勝利だったからか、意外と実力はそうでも無い派とストロエリーが相当強かった派に別れているようだ!」
対戦相手のシャミガは...身体デッカ!!俺と本当にタメなのか?赤色のザンバラ髪も相まってそうとうワイルドな風貌だ。
「シャミガ、よろしく。」
「ああ、よろしく。」
握手を交わした後、一定の距離を空ける。
「挨拶は済ましたようだし、スタートォ!」
シャミガが紹介通り、両手剣を手に突っ込んできた。スピードはそうでも無い。ストロエリーと戦ったばっかだし、それと比べたらどうってことないんだが、圧が凄い。
黒鉄のアイツから、黒鉄の特大剣を取り出す。
それは 剣と言うには あまりにも大きすぎた。大きく、ぶ厚く、重く、そして、大雑把すぎた。
それは 正に 鉄塊だった。
そんな事を言いたくなるような獲物だ。俺の身体がちょっと小さめなのもあって、相当でかく見えると思う。俺の身長なんか余裕で越してる。いやまあこれは剣がデカすぎるだけと言っても過言では無いと思うんだ。まあ俺は平均と比べれば小さめかもしれないが、そもそもの平均身長が高いこの世界何だ。一概に低身長というのはどうなのだろうか?
このまで言ったが、別にそんな身長を気にしてるとかではないよ?(大嘘)
おっと、そんな事を考えて居たら目の前にシャミガが現れた。右からの振り下ろし。特大剣を地面に深く突き刺し、腹に蹴りを入れて距離を離す。
特大剣は無闇には振らない。魔力だの何だので強化してるこの身体では特大剣ですら持てるが遠心力ヤバいし、隙が大きい。でもかっこいいから使う。
距離が少し離れた所で、地面に突き刺した特大剣をななめに思いっきり振り上げ、地面を割れさせ、足場を悪くする。衝撃でフィールドの端から端まで届き、衝撃を避ける為、シャミガは更に距離を話した。これで試合開始直後のように特攻は出来ない。
特大剣に鬼気と仙気を纏わせる。赤黒いオーラを纏った特大剣は、異様な雰囲気を纏っている。サリットの元での修行の賜物ですこれ。
「ふん!」
力む声がしたと思ったら、シャミガが大跳躍してきた。いやいや特攻したすぎだろ。陸がダメならジャンプで空中からとか嘘でしょ。
「覇断!」
特大剣を下から空中に向けて振り上げると、特大剣に纏っていた赤黒いオーラが刃の形をなし、シャミガへと飛ぶ。
単純な俺の技の中では1番威力が高いと思う。その分消費も馬鹿にはならないが見た目も良いし、爽快感もあって俺のお気に入りの技だ。
「む、落下之砦!」
覇断を突破してきた!ダメージはあるっぽいが、不味い。
後方に跳ぶと、俺が元いた場所は粉々になっていた。もしまだあそこに居たらと考えると、冷や汗をかいてしまう。
「いいねえ。それでこそだよ。覇黒忌煙」
覇黒忌煙とはサリットを祖とする門下生俺1人の流派、導煙流の技、黒煙にさっきの覇断と同じ感じで、仙気と鬼気をブレンドした技だ。
俺の仙気と鬼気は特別だ。鬼仙魔のが混じってるからなんだけどね。本来、黒煙に攻撃性はなく、相手の視界を奪ったりするものなのだが、俺の仙気と鬼気がブレンドされると、もはや別物になる。
俺の口からどす黒い煙が溢れ出る。酷く淀み、重苦しいそれは、俺の身体を伝わり地面に到達し、地面を這う。
「何だ。それは...」
「とっておきだよ。」
特大剣に纏わりついた煙をシャミガの方へ大きく振り払う。煙はまるで津波のようにシャミガを襲う。速度は別にそこまでの為、シャミガがジャンプで煙を避ける。
「ハハッ!馬鹿と煙は高い所が好きってなあ。」
笑い声が漏れてしまった。上手くいきすぎだろおい。位置関係も何もかも完璧。いやまあこの煙がどう作用するか知らないから仕方ないかもだがね。
振り払った煙は、速度がどんどん減衰していき、地面に落ちる。
すると、どす黒い煙が爆ぜた。爆ぜた煙から鬼仙魔が暴走した時のような禍々しい角が現れ、角は真っ直ぐに伸びて行き、シャミガを襲う。他の彷徨っている煙もそれに呼応し、角を出す。さて、どう対処するか見ものだな。
え、マジか。マジかマジか。イカれてる(褒め言葉)
シャミガは全てを身体で受け止めきった。所々貫通しているが、歯を食いしばって動かしている。
身体を貫いている角を折りながら距離を詰めてくる。横凪してきた両手剣を特大剣で受け止める。鍔迫り合いになるが、負けそうだ。俺の特大剣の方が重量ある筈なのに!
「馬鹿力め...!生命力虫並だしよお!」
「褒め言葉だ!」
鬼気で身体を強化し、両手剣を押し返す。柄の部分でシャミガの顎を打ち、その流れで特大剣を横に凪ぐ。
シャミガは特大剣の横っ腹を蹴り上げる。やっべえ...!隙が...!右ストレート来るぞっ!
仙気でガードするが、ダメージは大きい。鬼気を解放し、額から角を発現させ、シャミガの身体に穴を増やす。
「グッ...これしき...ぬん!牙地発!!」
何処かの鹿の子のようなセリフと技名をゴツイ声で言い、手にした両手剣を地面に叩きつけた。
すると、目の前にシャミガが現れた。素手だ。両手剣は先程までいた所に転がっている。体勢的に吹き飛ばされたのか?制御は出来て居ないみたいだが、このままだと俺も巻き込まれる。
どうやって回避するのか?しゃがむ...は頭だけ持ってかれそうだ。パンチでもするか?止められないだろうな...魂魄闘技が使えたら良いんだが、仕方ない。これは受ける。怖いが耐えよう。
シャミガと一緒に吹っ飛び、フィールドの結界に打ち付けられた。痛い。シャミガにも衝撃は言ってるだろうが、俺というクッションもある。痛い。
目眩がする。気ぃ失いそうだ。だめだ、意識失ったら負ける。立とう。
立てねえなこれ。背骨かどっか折れてるなこれ。シャミガは...大分吹き飛ばされてんな。意識はあるっぽい。いや、は?身体穴あいてる状態で自分の事すんげえ威力で吹き飛ばして意識失わずに耐えてるとか人間かよこいつ。
地面を這いずり、シャミガへと向かう。立てないもんなあ。仕方ない。
「生命力やばすぎだろお前。楽しかった。」
黒鉄のナイフを取り出し、深く、深く突き立てる。こうでもしないと死ななそうだ。何度か刺していると、決着と司会が言っていたのが聞こえたと思う。耳がキーンてするよお。
「アストールの祝福!」
耳があまり聞こえない中でもその声だけは耳にスっと入ってきた。シャミガの身体も衣服も修復される。
あったけえよこれ。何か風呂に入っている感じというかなんと言うか。あ、俺の身体も治ってらあ。魂魄闘技とかは持ってなったが、フツーに強かった。2回戦目で当たる相手なのかこれは。
勝ち神輿をあげる。もはや衝撃と化した歓声が胸に打ち込まれる。気持ちいな。
俺って...戦闘狂なのか?




