第37話 天網恢恢疎にして漏らさず
何だここは?・・・
意識が無くなっていたと思えば気付けば水の中にいた。辺りは真っ暗で何も見えない。そして動けない。
なんか既視感・・・?なんでもないや。
意識を失う直前に紫辮髪が居た。なんか目線が傾いてた。十中八九俺は死んだだろうな。
それに俺は今・・・
首と頭が離れている。俺の裸が丸見えだぜ。頭こらの目線だ。
もう転生する事は無くなるのかな?一生このまんまは暇すぎて辛いぞ。不思議と恐怖云々は無い。唯一の心残りは・・・
家族とセツナだな。家族は悲しむのだろうか。申し訳ない。ある時、俺はこう考えたりした。もしかしたらこの身体には本来別の魂が入ったりしてて俺がその枠を奪ったりしたのだろうか?なんて考えだ。
けど、家族に優しくされたりしてそんな考えは直ぐに砕けた。俺って自己中だな。2回も死んだりするのも因果なのかもしれない。
セツナは、一緒に英雄学校に行く約束だったのに俺が途中で死んでしまって怒っているだろうか。いや、泣いてるだろうな。セツナはあれでいて優しい。
はあ、俺自己中すぎだろ。死んでしまって沢山の人に迷惑をかけてしまったのにこんな事を考えている。
ん?何か気配がする。地獄からの使者か?当然だよな。
使者に頭を掴まれる。ついでに胴体も握りしめている。こいつ見覚えが・・・?ああ、俺がこの世界に来る前に俺の事を迎えにきたバケモノか。最初はこいつの事怖がってたけど案外良い奴なのかもな。
・・・セツナ視点
セツナは、ただ意味もなく泣いていた。表通りにいる群衆はその泣き声を隠すかのように賑やかだった。
「何故、なぜ死ぬのですか。」
そんな独り言でさえ、賑やかさにかき消されてしまう。誰1人気づくことはない。
すると、にゅるにゅるという音を立ててワープホールのような物が現れた。ワープホールを涙でグズグズの目で見る。奥は見えなく、どこか吸い込まれそうになる。深淵だ。
その深淵に圧倒されるセツナ。涙を腕で拭い。よくその深淵を覗きこむ。
その深淵は何処か懐かしく、暖かかった。それゆえか、セツナは怯えることも無くその深淵に入ろうとした。
すると途端に、その深淵から嫌に光る目が現れる。セツナは思わず後ずさりする。
なんなのでしょうかこれは。ああ、もしかしてヴィオを救えなかった私への罰を深淵の使者が与えにきたのでしょうね。納得です。
深淵の使者は深淵から姿を表す。その深淵の使者はおもむろにヴィオリカの頭と胴体を掴み、其れを繋ぎ合わせる。頭と胴体を繋ぎ合わせる際に、どす黒い深淵を使って繋ぎ合わせる。
切れたはずの頸動脈も、神経すらも繋ぎ合わせていく、神技だ。
・・・ヴィオリカ視点
はっ?!気がついたら意識が戻っている。セツナはへたりこんで泣いている。
「な、何があったんだ?」
「か、か、か、神が現れ、貴方を蘇生しましたわ。」
瞬間、セツナが抱きついてくる。ご褒美です。
「し、心配しましたのよッ………!!」
セツナを撫でる。撫でて撫でてまくる。なんで俺が生きているのかは知らないが。なんせ俺は今生きているのだから(???)
セツナはやっと泣き止んだようだな。いつものキリッとした表情になっている。
「それはそうと、貴方も私と同じで神の寵愛を受けているのですね。早く言ってくださいませ。」
「はにゃ?」
「いやだから、」
「分かってる分かってる。けど俺にはセツナみたいな称号も奥義もないんだって。」
「ふむ………」
セツナは何を言っているのだろうか。ん?いや、もしかしたらセツナが言っている神とはさっき俺がいたやつのことなのかもしれない。
だとしたら俺の頭と身体を掴んだのは・・・
いやいや、そしたら俺とセツナの所に同時に現れたってことにならないか?いや、そんな超常的な奴なのだからありえるのか。
だとしたら何故俺を1回転生させ、そして俺を生き返らせたんだ?何故俺にそこまでするんだ?理由はなんだ?考えれば考えるほど謎が深まっていく。
「ま、まあとりあえず考えるのは辞めましょう。貴方のコートが出来るまでゆっくり待つとしましょう!」
「あ、ああ、そうしよう。」
俺とセツナが作り笑いをする。これでいいんだ。あまり深く考えるのは辞めておこう。
タイトルの天網恢恢疎にして漏らさずというのは
天の神が地に張り巡らした網は、ゆったりして粗いようであるが、決して漏らすことはなく、それに搦め捕られる。 すなわち、悪事を行えば、一時的には逃げおおせるなどうまくいったように見えるが、結局は、捕らえられる乃至その報いを受けるということ。(ウィキペディア参照)
こんな感じの意味何すけど、一見して主人公は何も悪いことしてないですよね?けど、このサブタイトルには主人公を生き返らせた人の思惑が隠れてるんですよ。




