第16話 怒りのチャレンジャー その三
前世見たボクシングのステップを何となくやる。何故かって?なんか良さそうだから。理由なんかねえよ!!
カジャに早速ストレートを放つ。ジャブは要らない。何時でもストレートだ。カジャは真っ向から俺のストレートを受けてきた。
対するカジャもこっちにストレートを放っていた。おでこで受ける。カジャの拳には鱗があるため、裂傷ができる。だが、そんな事にも気が付かないくらい、ヴィオリカは高揚感に包まれていた。
右ストレートを放つ。カジャも、右ストレートを放つ。互いの拳がぶつかり合う。そして、鍔迫り合いでもするかの如く力を押し付けあっていた。
やがて、左手の拳もぶつかり合い、力勝負になっていた。
そのまま、膠着状態になるかと思われたが、ヴィオリカが魔力の全身の巡りを更に早くし、ヴィオリカが押していく。
そして、カジャが力負けした。そして、隙が出来たのでまた右ストレートを放つ。胸の辺りに放たれた渾身の右ストレートは、鱗の上からでもカジャに決して少なくないダメージを与えた。
そして、畳み掛けるかの如く、ヴィオリカが右ストレートを放つ。だが、カジャも負けじと右ストレートを放つ。
ヴィオリカの右ストレートが当たると同時に、カジャの右ストレートも当たる。それを皮切りに、先ほどまでは避ける事はしなかったが、拳を跳ね返したりしていたのが、ただ殴り合うだけになった。
((ここまで来て負けてたまるか!!))
またもやカジャとヴィオリカの意見が一致した。殴り合う。両者はただただ殴りあう。
どちらとも、そのやり取りに疲弊はしていた。だが、攻撃の勢いは止まることはなく、寧ろ加速していた。
殴り合いが続く事10分・・・
流石に10分も経つと、攻撃の勢いが下がり、速度も失速していた。だが、攻撃の威力はそのままだ。それに、両者とも、瞳の荒々しい輝きは増していた。
「オラァ!!」
ヴィオリカが右アッパーを放つ。カジャの頭が空を向く。
「グラァェァ!!」
カジャが右フックを放つ。ヴィオリカの頭が横を向く。
そして、互いにまたその荒々しく輝いている目を合わせる。肩で息をしながら、殴りあう。意地のぶつかり合いだ。
ヴィオリカは、このやり取りに楽しさを覚えていた。口の中は擦り切れて、皮膚もカジャの鱗で裂傷をおっていて痛いが、その痛み以上に楽しかった。だが、両者やジオの為にも勝たなければいけない。
カジャもまた、このやり取りに楽しさを覚えていた。鱗はベッキベキにひしゃげ、鱗の下は、自らの鱗が刺さっていたりもした。だが、自分が生き残る為に、もっと、もっともっともっともっと強くなる為に勝たなければいけない。
カジャの思いは強い。ヴィオリカの思いも強い。どちらの思いの方が強いか。言葉は通じないが、拳を通じて思いの強さを競っていた。
ここで、カジャが一皮剥ける。魔力の使い方を、この闘いの中で自分なりの、パンチに特化した使い方を覚えたのだ。
カジャの圧倒的な強さの右ストレートがヴィオリカを襲う。
ヴィオリカはおでこをぶつける余裕もなく、諸にそれを食らった。踏ん張る事で、吹っ飛ばされる事こそなかったが、膝から倒れた。
ヴィオリカは負けたのだ。
な、何で、負け、負け、負けたんだ?ああ、そうか、俺が考えてたのは家族の事、拳から伝わってきた。こいつは自分の事を考えてた。
ああ、分かったぞ。前世での苦悩も、全て。他人の評価とかそんなんそうそう気にするもんじゃないんだな。自分が1番だ。
一旦、家族とかそんなのはくだらないんだ。いや、家族は大切だけど、この拳で語り合う場に家族とか他人は持ち込まない。うん、よし、これをこれからのジンクスとしよう。
そう、自分が1番だ。自分か楽しかったらバンザイだ。
自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分自分
自分主義者の誕生である。
ヴィオリカは膝で立ち、項垂れて考え事をしていた。そんなヴィオリカに、カジャは、ここまで殺りあったのだから、せめて苦しまないようにと、うなじに、拳をアンダーハンドパスをする時のようにして、ハンマーのように振りかざそうとしていた。
瞬間、ヴィオリカの雰囲気がガラッと変わる。瞳を見ると、イカれていた。目が逝っていたのだ。だが、その瞳には炎が宿っていた。情熱の炎だ。そんなヴィオリカの瞳に、カジャは戦慄する。
カジャはまだ闘いは終わっていないのだと、拳を構える。
先手必勝!と、フリッカージャブを放つが、するりと避けられてしまう。
焦点の定まらないヴィオリカの目の照準に、カジャが入った。
カジャは瞬きをした。すると、次に視界に入っていたのはヴィオリカの拳だった。
カジャは倒れる。ヴィオリカの勝利だ。カジャはこれ以上立てないし、闘えない。
「ふっー、すぅぅはぁぁ。すっー、
勝ったぞぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!!!!」
勝利の雄叫びを上げる。ヴィオリカの先ほどのイカれた目は元通りになっていた。そして、雄叫びと同時に、倒れる。
倒れると、横には丁度カジャがいた。カジャは既に意識を取り戻していた。
カジャと目を合わせる。すると、無意識の内にカジャと拳を合わせていた。
ヴィオリカとカジャの間に、種族を越えた友情が生まれたのだ。最初はカジャはヴィオリカに激しい憎悪を抱いていた。
だが、その憎悪が一転した。元の憎悪の分、友情が何倍にも増したのかもしれない。
「一緒に鬼仙魔を倒そうぜ!」
うん、というようにカジャが頷く。
「ハイパーヒール」
ヴィオリカが自分に、マイチーから受け継いだハイパーヒールを使う。そして、立ち上がり、カジャにもハイパーヒールを使った。
どことなく、ファイト一発!みたいな感じでカジャに手を差し伸べ、立たせようとする。
ヴィオリカが長く瞬きをする。それは、戦闘に集中するために、ずっと目をあけていて、少し目の疲れと乾きがあったからである。
(ん?カジャの手に力が入らないな?)
と思い、ヴィオリカが目を開けると、そこにはカジャの体はなく、掴んでいた腕しか無かった。
辺りを見回すと、そこにはぼろ雑巾のようになっていたジオと、だれがどう見ても事切れているカジャがいた。
ヴィオリカは、本当の意味での怒りを知った。カジャと仲良くなる前の、あの弱虫野郎のくだりの時よりも怒っていた。
少しフリーズしていた頭を稼働し直し、改めてヴィオリカはこう思う。
絶対に殺す!!!!
鬼仙魔には、マイチーを殺され、親友もなったカジャも殺され、更には死んではいないもののジオもぼろ雑巾よようにされていたんですから主人公が殺意を抱くのも至極当然ですね。
あと、少しでも気に入っていただけたら、下の方にある星を頂けると嬉しいです。星が増える度に作者がにちゃついて、モチベになります。多分ジオもよろこぶんじゃないっすかね?




