第9話 二度目の事件
ギードは椅子に腰を掛けたまま寝ていたがなにやら廊下が騒がしいことに気が付いた。
うむ? と言い体を起こすとなにやら扉を叩く音がしていた。だれかとギードが立ち上がり扉の方に向かった。
ギードが扉を開けて見るとそこには第二孤児院で会った女性が立っていた。
「何事か。一体」
この時の女性はいかにも強張った表情をしていた。慌てたような扉の叩きだったのだから何事かになっても不思議ではなかった。
「お願い! 助けて! ウィルが!?」
女性は息を切らしたかのように言い続けた。最後のウィルと言う言葉にギードは顔をしかめ始めた。
「ウィル? あの小僧がどうしたのだ?」
何事も落ち着いて会話をと促したかったが今の女性に無理はさせれなかった。仕方ないとギードは諦めた。
「ああ!? ウィルが!? 私が私が悪いんだ! ああ!? どうすれば!?」
さすがのギードもこれでは埒が明かないと思ったが一向に落ち着く気配が女性にはなかった。
「落ち着かんか! 助けを求めにきたのだろう? ウィルがどうしたのだ?」
ギードは最後の最後で落ち着かせようとした。これで駄目ならもう手立てがないと思うほどだった。
「ウィルが兵士に抗ったことで連れていかれました!」
またしても女性の言葉によってギードはかしこまる表情になった。まさしくウィルはどこに連れていかれたのだろうか。
「兵士……。まさか!」
ギードは兵士という言葉からウィルがお城に連れていかれたと思った。しかも最悪な想定をすればウィルは牢屋入りになっているとも思った。
「なんと鬼畜な!? 儂のみならず子供にまで手をつけるとは!? 見損なったわ!」
怒り気味になったギードは王国の異変に苛立ちを隠せないでいた。やはり儂が追放されてから可笑しくなったとギードは思うようになった。
「師匠? どうかしたの?」
セリアだった。片方の瞼を擦りながら言っていた。どうやらギードの大きな声に目を覚ましてしまったようだ。
「うむぅ? ……おお! セリアか。ちょうどよいところに」
この時のセリアははてなが頭上に一杯だった。どうして夜に人がきているの? と寝惚けながらも疑問に思っていた。
「よいかのう? セリアや」
「ウィルが!? ウィルが兵士に連れて!? ああ!? どうしたら!?」
ギードが最後までなにかを言おうとしたら女性が急に割り込んできた。もう気が動転しすぎのようで思考が混乱していた。
「うん? ウィルが兵士に……連れて?」
この時のセリアは間違いなく首を傾げるほどに理解していなかった。むしろここでセリアは気付かないといけなかった。
なのにどうしてか。寝惚けているのかセリアは理解が追い付かなかった。でもそれでも段々とウィルについて思い出し始めていた。
「ウィル? 兵士に連れて。……ウィル!? 兵士に連れていかれた?」
ようやくセリアは謎を解明した。もし正解ならウィルはどこに連れていかれたのかと気が気でなかった。兵士といえばお城。お城といえば王様。
「ううん? ウィルが王様に?」
「おほん! セリアや! 寝惚けている場合ではないぞ! ウィルは牢屋入りされたのだ!」
「ろ、う、や、い、り? 牢屋入り!? どうして!?」
「詳しいことは分からんがな! ウィルは兵士に抗った罪で牢屋入りされたのだ!」
「そ、そんな!?」
「ああ!? 嘘だと言って!? このままだとウィルが!? 私のウィルが!?」
女性はウィルが殺されると思い込んでいた。本当にこのままでは殺されかねないとギードは険しい表情で物事を考えていた。
そこで導きだした答えはとりあえず今は様子を見て救出までの道のりを考えるだった。並大抵では近寄れないのが城内だった。
だけどギードは知っていた。実は牢屋はなにも城内だけではないと。ただ一番に懸念していることといえば秘匿死刑だった。
さすがのギードも秘密裏にウィルを死刑されたら止めようがなかった。いちよう情報屋はいるのだが無事だという保証はなかった。
そこでギードは今からでも情報屋に会わねばならないと思いとある裏路地にいこうと決意した。果たしてウィルの運命はいかに。




