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第8話 初めての宿屋

 王都に帰ってきたセリアの心がここにあらずだった。なぜならセリアは初めての宿屋に泊まる。


 いつもなら孤児院のベッドの中だったが今回は初めて宿屋に泊まるとあってセリアは興奮していた。


 寝心地はどんなんだろう? とセリアは心の中で好奇心が芽吹いていた。けっして豪華な宿屋ではないがセリアにとっては関心のあることだった。


 ちなみにセリアはギードと一緒の部屋を選んだ。今は独りが嫌だったのもあるがなによりもギードといると居心地がよかった。


 もう既にセリアはギードのことを信頼しており背中を任せようとも思っていた。


 それくらいにセリアにとってギードは欠かせない存在であり師匠というよりも家族といってもよかった。


 セリアはギードのお陰で立ち直れた。これからもセリアはギードを頼りにするだろう。


「ほっほう。セリアや。部屋は逃げんぞ。落ち着きなさい」


 ギードもまた今のセリアを受け入れているようで微笑ましかった。今のギードに孫はいない。独り身だった。だから余計に微笑んでいた。


 孫とはこういう者なのかとギードは心の底から喜んでいた。まさしく手間のかからないセリアのお陰でもあった。


 そんなセリアはギードよりも先に進んでいた。部屋の場所を分かっていないがきっとギードが止めてくれると思い込んでいた。


「これ! セリア! 止まりなさい!」


 どうやらセリアは通り過ぎようとしていた。だからギードはセリアを呼び止めた。セリアが止まった頃にはやや通り過ぎていた。


 一方のギードは部屋の扉を確認した。鍵の番号と部屋の番号が一致しているかを確認し終わるとギードは扉を開け始めた。


 本当はセリアが一番乗りするはずだったが機会を逃してしまった。このことにギードは気付かず扉を開けると入っていった。


 この時のセリアはほんの少しだけ苛立ちを覚えた。あんなに楽しみにしていたのにこうも簡単に取られるなんて一生の不覚だった。


 セリアは実に悔しそうに顔を歪めた。余りの出来事に身動きが取れなかった。身動きが取れないセリアをギードが気に掛けた。


「どうしたのだ? セリアや?」


 顔をのぞかせるギードは別にセリアの一番乗りを気に掛けてはいなかった。ギードの紳士力のなさにセリアはちょっとした無視をし部屋に入り込んだ。


 だけど図太いギードは無視されたという自覚を持たずにセリアを快く受け入れ扉を閉めた。


 扉を閉めた後にギードがセリアを見るとセリアはもう既にベッドで寝込んでいた。仰向けではなくうつ伏せで寝ていたところを見ると相当に疲れていた。


 セリアにとって今日は色々とあった。雨ざらしと孤児院の閉鎖に遭いそれでも師匠と言うギードと出会いほんの少しの成長を得た。


 そのことをギードはよく理解していた。だからこそにギードはセリアを起こそうとは思わなかった。むしろギードは安らかな目線を送りこう言った。


「お休み。セリアや」


 こうしてセリアはそのまま眠りについていった。一方のギードは完全にセリアが眠りにつけるようにとベッドには向かわずに一部屋にある椅子に座り込んだ。


 次第にギードにも眠気が襲い掛かりベッドではなく椅子に腰を掛けたまま眠った。ギードにせよセリアにせよ今日は疲れたのだからゆっくりと眠りに付くのだった。

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