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第7話 夕方になる前に

 路地裏での会話が終わりギードとセリアは夕方になるまで魔物狩りをすることにした。


 今回は前とは違い手強い魔物だとギードは言う。下手をすればギードが出なければならなかった。


 耳にしたセリアはすでに緊張していた。並々ならぬ雰囲気で語り掛けてきたからだ。


 そんなギードとセリアは森の中にいた。中と言ってもすぐに出れる範囲しか入り込んでいなかった。


 緊張しているセリアに対してギードは成長が楽しみだと心躍る様子だった。


「ほっほう。ではこれより……魔物狩りを始める。今回の相手はゴブリンだ」


 ゴ、ゴブリン? セリアは緊張の余り噛んだ。ここにきてさほど怖そうに感じない名前だった。


 セリアの心にほんの少しの余裕が出来たのも束の間だ。ギードが咳払いをした。


 この時のギードはゴブリンを舐める者は初心を忘れたも同然だと感じていた。やや怒り心頭のようだった。


「よいか! セリアや! ゴブリンを舐めてはならん! 奴らは集団行動をする!」


 ギードが言うのだからセリアは本当なのだろうと思い込んだ。集団行動はいきなり難度が上がり過ぎだった。


 歴戦のギードすらもゴブリンには手を焼かされたことがあった。あの時は本気で逃げるので精一杯だった。


 とは言えギードが相手にしていたのはそこいらのゴブリンではなくジェネラルゴブリンだった。


「心配するな。セリアや。今回ははぐれゴブリンが相手だ。巣立ちを選ばざる負えなかったゴブリンが相手だ」


 巣立ち? ゴブリンはそんなに束になるの? とセリアは思った。もしそうならば緊張で圧し潰されそうだった。


 だけどギードの言葉を思い返すと今回の相手ははぐれゴブリンだった。なら落ち着けば勝てるかもとセリアは思った。


 なら善は急げと言わんばかりにセリアは一匹のゴブリンに眼をつけた。昼前の練習で培った魔法をいきなり使った。


「ぬ!? いかん!? そいつはゴブリンガードだ!?」


 ギードが気付き慌てて止めたが時既に遅くセリアの火の魔法ははぐれゴブリンガードの背中に当たった。


 はぐれゴブリンガードは反応せずに振り返った。痛くも痒くもないようだが不意を衝かれて怒り気味だった。


 はぐれゴブリンガードは両刃直剣と盾を持った魔物だ。全身の色は緑だが強い個体だと赤色などになるようだった。


「え? どうすれば――」


 通常のゴブリンは両刃直剣くらいしか持たないがゴブリンガードは盾も持つので厄介だった。


 しかもゴブリンガードを束ねるのがジェネラルゴブリンだった。ジェネラルともなると鎧兜を着込んでいた。


 つまり一回り強い個体をセリアは選んでしまった。果たしてギードとセリアは夕方前に終わらせることが出来るのだろうか。


「仕方がない! ここは儂も参戦する! よいか! 止めは任せたぞ!」


 止めって私に出来るの? とセリアは緊張を超え疑心暗鬼になっていた。そんなことは知らないギードは魔法を唱え始めた。


 ギードの指輪の宝石が光り始めた。手の中に火が溢れ返り弾のように飛ばした。火炎弾は視認出来るほどの速度だった。


 そのせいではぐれゴブリンガードは余裕を持って盾を構えた。その後にギードの火炎弾が盾に当たっていた。


「よりによって鉄とはの。これは久々に骨が折れるわい。だが――」


 ギードははぐれゴブリンガードの持っている盾が鉄製であると見抜いた。これでは弾かれて終わりだろう。だが――。


 セリアは既にはぐれゴブリンガードの真後ろにいた。いざとなったら本番に強いのがセリアだった。


 セリアはすぐさまに魔法を発動させた。指輪の宝石が赤く光ると手の中に火が籠り始め最後は弾のように飛ばした。


 ギードよりは素質があるのか速かった。それでもはぐれゴブリンガードはセリアに気付くと振り返り視認が出来たからか盾を構え始めた。


「ほっほう! ならこれはどうかのう?」


 どうやら互いに撃つ間隔を狭めようとギードは試みたようだった。はぐれゴブリンガードはセリアの火炎弾を盾で防いだ。


 途端にギードの火炎弾が飛んできた。即座にはぐれゴブリンガードは振り返り盾を構えようとしたがセリアはそれよりも先に魔法を発動させた。


 ちょっとずつ間隔が縮まってくる火炎弾にはぐれゴブリンガードは疲れたのか振り返る瞬間に足を挫いてしまった。


「今だ! セリアや! 止めを!」


 うん! とセリアは意気込みよく答えた。今だと言わんばかりの手際のよさでセリアは火炎弾を溜めに溜めてから放った。


 体勢を崩したはぐれゴブリンガードは盾を構えることがなかった。余裕をもって放たれた火炎弾ははぐれゴブリンガードに直撃した。


 余りの衝撃にはぐれゴブリンガードは吹き飛んだ。その後は身動きを取ることなく息絶えていった。


「さすがは儂の弟子だの! セリアや! 今日もそろそろ帰るかのう!」


 勝ったと思ったギードはセリアに提案した。セリアもまた今日は遅くなる前に帰りたいと思っていた。だからセリアは頷いた。


 どうやら話はまとまったようだがギードはセリアの代わりにはぐれゴブリンガードの物色を始めた。目ぼしい物は持ち帰るようだ。


 こうしてなんとか危機を連携攻撃で乗り切ったギードとセリアは物色が終わると急いで帰っていったのだった。

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