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第4話 初めての魔物狩り

 ギードとセリアは城下町から抜け出し、草原辺りにきていた。


 この辺では魔物がでるらしくいきなりの実戦をギードはセリアにさせようとしていた。


 出ると言っても小さな森から抜け出した小さな魔物がいるだけだった。


「セリアや。儂が渡した指輪をはめとるな?」


 セリアはここにきていきなりギードから指輪を貰っていた。なんでも杖なしで魔法が使えるようになるとか。


 魔法の指輪はセリアにとって不思議な印象だった。なぜなら絵本では杖を使っていたと思い返していた。


 指にはめると不思議な感覚に陥った。今の自分なら魔法が本当に使えそうだった。意味の分からない自信が付いた。


「ふむ。では――」


 まずは儂が手本を見せようと言おうとしたがセリアの表情が急に曇り始めた。この時のセリアは殺すの? と不穏がっていた。


「ふむぅ。セリアや。人だって時に鬼にならなければならん時がある。分かっておくれ」


 分からない。あの時の涙はなんだったのだろうと思えるようなずっしりとした空気がセリアの両肩にのしかかっていた。


 意味もなく殺すことが本当にいいことなのだろうかとセリアながらに考えていた。だけどこのままでは自分が成長しないとも考えていた。


 このままではどうすればいいのかがセリアには分からなかった。今はまだ昼前だが早くしないと日没しかねなかった。


「セリアや。ここで迷っておってはなにもならん。ここは意を決し成長することを覚えなければ――」


 ギードの言っていることは理解出来た。でもそれでも殺すこととなれば自分一人で出来るかが不安だった。もうやるしかないのか。


「うむ。ならばセリアはここで見ておくがよい。慣れるまで我慢だのう」


 ギードはそう言うとセリアよりも前に進み始めた。この時のギードは嫌われる覚悟を持っていた。もうやるしかないはギードも一緒だった。


 幸いと言えば酷だがのどかな空気が流れていた。そこに新風吹き荒れるようにギードが現れた。とは言えギードは息を潜めていた。


 なぜならここら辺の魔物は臆病な性格が多くすぐに殺気を感じると逃げてしまう。だからギードはあえて息を潜めつつも近付いていった。


 ギードは遠距離魔法を使う気なのである程度魔物に近付くと無詠唱で念じ始めた。無心一体となるようにギードは精神集中した。そして次の瞬間――。


 ギードは右手を前にかざし指にはめていた指輪の宝石が光り始めた。気が付いた時には手の中に赤色の渦を巻いた火が点いていた。


 次第に火は大きくなり放つ時がきたのかギードは手振り身振りをして一気に右腕を振った。鞭のように打ち出された腕の先の手から火炎弾が放たれた。


 矢先の火のように突き進む火炎弾は消え失せることなく魔物に当たりにいった。ギードが仕留めた魔物はホワイトラビットだった。


 実に可哀想に思えるがこれを乗り切らないと成長はあり得なかった。ギードは仕留めたと思い振り返りセリアの近くに寄り始めた。


「うむぅ。嫌われたかのう?」


 一向にセリアはギードに対して眼を合わせようとはしなかった。それどころか返事すらもしなかった。まるで空気扱いだった。


「そうか。……ならば――」


 ギードが今回は無理しなくてもよいだろうと言おうとした。だけどセリアは急にギードを見つめた。


 この時のセリアは互角になれば弱いものいじめではないかと思い込んでいた。傲慢な考え方かも知れない。でもそれでもセリアは戦うことを選んだ。


 なぜならよくよく考えて見ると弱いものを守るにはまず弱肉強食の掟を知らないといけないのではと子供ながらに思い始めた。


「うむ? どうした?」


 この時のギードはまさか一日目でセリアが魔物狩りをするとは思ってはいなかった。まさに期待すらしていなかった。だけどセリアは決心した。


「まさか」


 ギードの言葉に応えるようにセリアは強く頷いた。真顔に真顔を塗り潰したような表情だった。はたしてセリアは無事にホワイトラビットを倒せるのだろうか。


 セリアは頷いた後にギードの横を通り過ぎた。そして一匹のホワイトラビットに狙いを定めると近付き始めた。


 近付き終わるとセリアはまず右手をかざし集中し始めた。手順こそ違うがはるかに上回るくらいの勢いで集中していた。そして――。


「おお!?」


 あまりに指輪の宝石が赤く光っていたことにギードは驚きを隠せなかった。ここからでは赤い光しか見えないがギードには分かる。とんでもない才能だと。


 もしかするとセリアは魔法の才能があるのではとギードは驚愕した。セリアもそれに応えるように手の中で渦巻く火を点けていた。


 ここからのセリアはギードと同じ手振りと身振りで火炎弾を放っていた。ギードより短縮されていたがその大きさははるかに上回っていた。


 余りの衝撃な光景にギードはホワイトラビットに当たるまで黙っていた。この時のギードはとんでもない才能のある子を見つけたと自失していた。


「なんということだ。本当にこの子がしたことなのか」


 自失から抜けたり抜けられなかったりだがなんとか我に返った。目の前にいるのは正真正銘のセリアだった。


 どうやらセリア自身も驚いていた。両手を開き見ていた。その隙にギードはセリアの横にいった。セリアの横に付くとギードは呆然自失と笑うしかなかった。


「ほほ」


 本当は褒めてやりたかった。だけど出来なかった。長年の魔法をたった一回で覆したのだから無理もなかった。セリアと言う子は一体何者なのだろうか。


 凄まじいくらいに素性を知りたくなってきたギードだがセリアとホワイトラビットをこのまま放置する訳にはいかなかった。


 無理をし我に返ったギードはセリアと共に二匹のホワイトラビットを川まで運び血抜きなどの作業をしようと思った。実はホワイトラビットの肉や皮は売れた。


 こうしてなんとか初めての魔物狩りを終えたギードとセリアは無事に城下町に戻り得た素材をギルドに売りにいくことにしたのだった。

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