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第1話 みなしご少女セリア

 雨の日の突然のことだった、孤児院が閉鎖されることを知ったのは。


 もう既に閉鎖は済んでおり後は全員が解散するのを待つだけだった。


 今まで面倒を見てくれていた人達が解散を告げると皆が散っていった。


 そんな中で一人の少女だけが頑なに動こうとはしなかった。


 その少女の名はセリア。年端もいかぬ十四才のみなしごだった。


 セリアは今まで面倒を見てくれていた人達に反しずっとそこにいた。


 鞭打つように急に大雨と化した。ずぶ濡れになるのが嫌なのか次第に人はいなくなった。


 最後に残ったのは雨の粒とセリアの涙だけだった。


 どうして? と誰に訴えかける訳でもなくセリアはただひたすらに泣いていた。


 雨の粒と涙の行方は一緒なのにセリアだけがはぶかれていた。


 次第にセリアから涙はなくなり込み上げてきたのは怒りだった。


 全身が硬直するくらいに両拳を握り締め歯は食いしばっていた。


 なんで? どうして? とようやく感じるようになってきたようだった。


 身寄りもないセリアは孤児院が閉鎖となった理由を知らなかった。


 ただ感じ取った雰囲気ではなにかの圧力に負けたとしか思えなかった。


 セリアも莫迦ではない。孤児院で無償は不思議な光景でしかないはずだと思っていた。


 働けない。稼げない。支払えない。そんな子供達がここにはたくさんいた。


 それでも世話をしてくれていた人達は無理をしてでも運営していてくれていたのだろう。


 最初は本当に感謝しかないと思っていたがそれでも途中からは手の平返しされた気分だった。


 どうしてだろう? なにも悪いことをしていないはずのセリア達がどうして路頭に迷わなければならないのだろうか。


 世は常に残酷だとこの時のセリアは頑なに思い馳せた。


 雨は一向に弱まらない。雨の粒と流れた涙の途中はまるで孤児院の閉鎖を忘れろと言っているようだった。


 もう泣いているのかさえ分からない。だけど雨に隠された事実はけっしてセリアを静めることはなかった。


 裏腹に憎しみが強くなり怒りの矛先が生まれようとしていた。それでも雨は真実を隠し続けた。


 そんな時――。


 セリアに近付いてくる黒い頭巾を被った謎の人物が現れた。ただの素通りだと思ったがなぜかセリアの横で歩を止めた。


「閉鎖とは残念じゃのう。これもあ奴らのせいかのう」


 この時のセリアは聞こえていた。だけどセリアは聞こえないフリをした。自分の中ではもうそれどころではなかった。


 黒い頭巾を謎の人物は払い除けると顔を露わにさせた。謎の人物は老けておりどう考えても年配者だった。


「儂の名はギード。お主の名は?」


 セリアに問い掛ける老人の名はギード。本当は濡れないように黒い頭巾を被っていたが自己紹介の為に顔を露わにさせていた。


「セリア」


 もう既にセリアに感情を込める程の余裕はなかった。目線を合わすことなく答えたところを見れば相当に怒っているようだ。


「のう。セリアや。もしよければ儂とギルドを創らぬか」


 急に止み始めた雨みたいにギードは突拍子もないことを言い始めた。この時のギードは軽いと言うよりは優しく包み込むような口調だった。


「ギルド?」


 ギードの優しい口調にセリアは思わず反応した。ギルドを知らないセリアに雲が開け一筋の光が差し込もうとしていた。


「そうじゃ。そのギルドの名を暁の集いと申す。どうじゃ? 儂の初めての弟子にならんかのう?」


 ギードの提案を無視しセリアは急に見上げた。そして両瞼を閉じ握り締めていた両拳をゆっくりと開かせた。


「ほほう。どうやら話がまとまったようじゃのう」


 ギードは安堵し口走っていた。最後にはセリアの両瞼もゆっくりと開き雲の間から差し込む光を感じとった。


 すっきりとした表情を浮かべるとセリアはギードの方を向き歩を進ませ始めた。どんな返答をするのだろうか。


 ギードの前で立ち止まると対面し始めた。真っ直ぐな視線をギードに送るセリアの表情は真顔そのものだった。


「私は負けたくない。ほしいよ、皆を守れる力が。だから――」


「ほっほう。分かっておる。しかと聞き届けたぞ、お主の言葉を。セリアや。今からお主は儂の弟子じゃからのう。安心せい」


「有難う。その……お師匠様」


「うむ。セリアよ。今日からよろしく頼むぞ。では……今からギルドを創りにいくとするかのう」


 ギードがそう言うとセリアは頷いた。こうして身寄りのないセリアは老賢者ギードの弟子となり暁の集いを結成することにしたのだった。

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