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012.〈恩恵〉実験その2(回想)

〈恩恵〉のほうはあれから少し理解が進んだ。

 すぐに気づいたことはマーカーは二つまで出るということだった。実験中にいったん石にマーキングし、(やっぱりあそこにしようかな)と迷ったときに突如二つ目が出たのだ。ちなみに三つ目は出せなかった。

 そしてマーキングした二つの物体同士で〈相互移動〉できることも続けてわかった。この「マーカーが二つ出る意味」がそもそもこういうことだったのかもしれない。自分が例外的に〈相互移動〉の対象になれるだけであり、「マーカーをつけた二つの物体の場所を交換すること」が〈相互移動〉の本質なのだろう。


 またある日、なんとなくマーキングしたところがゆっくり動いているように見えたことがあった。近づいてみると、マーカーがカナブンについていた。つまり生き物にもマーカーをつけられることがわかったのだ。ホホグロジカにマーカーをつけて安全圏から位置を把握しようと考えたのは、このときの発見があったからである。


(罠猟でもかなりありがたいことになるんじゃないか? 罠の中に石でも置いて、獲物と〈相互移動〉させれば獲物は一瞬で罠の中だ)


 めちゃくちゃずるいことを思いついてしまった気がしたので、これはいまのところ実行していない。飢饉でも起きない限り、今後もやろうとは思わないだろう。


 地味に便利なのが、「だいたいあのあたり」とざっくり指定してマーキングすると、それはその位置にある小石なり折れ枝なりに指定されていることである。アロエの鉢のときにすでに確認していたことではあるが、たぶんこの「当たり障りのないものへの自動指定」はかなりありがたいものだ。これがなければ視界ギリギリの遠くに〈実質瞬間移動〉はできなかったわけだから。


 さらに自分と大岩を〈相互移動〉させようと思ったが、それはできなかった。

 マーキングしても大岩の上にあった落ち葉が指定されてしまい、大岩を何度指定してもうまくマーキングされなかったのだ。


(質量か体積が問題なのかな。たしかに「山ひとつと自分」を〈相互移動〉しようとしたらとんでもないことになるし……)


 また小さいものも砂の一粒では指定ができなかった。

 これも細かい検証をしたいが、どうすればできるかわからないので保留にしている。



まとめ

・マーカーは二つまで出る。三つ目は出ない。

・マーキングした二つの物体同士で〈相互移動〉できる。

・生き物にもマーカーをつけられる。

・マーカーがつけられるものは、質量や体積で限界があるのかもしれない。

今日は短めになりました。明日は町に到着します。

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