6 ずっと高坂のことが好きだったんだ
「ごめん、受け取れないよ。
俺には好きな人がいるんだ」
その返事を聞いて、肩の力が抜ける。
「えっと……いじめから助けてくれたのは……」
「ごめんね、さっぱり覚えてないんだ」
ああ……やっぱりと落胆する。
と同時に、心地よい疲労感を覚えた。
私は失敗した。
失敗してやったのだ。
自分の思いを伝えて見事なまでに失敗した。
なんてスッキリするものだろうか。
自分の思いを告げないまま悶々とするより、全て伝えて失敗した方がずっと気分が良い。
きっと今日のことは私にとって生涯忘れられない思い出として――
「カズキがいらないんなら、俺がもらってもいいよな」
私が差し出したチョコを宮本様が横からさっと取り上げる。
そして――
「俺、ずっと高坂のことが好きだったんだ。
良かったら俺と付き合ってくれないか?」
「えっ? えええええええええ⁉」
「「「えええええええっ⁉」」」
衝撃を受けた。
私だけでなく、クラス中が衝撃を受けた。
宮本様のまさかの告白に、誰もが驚きを隠せない。
「え⁉ なんで⁉ どうして⁉」
「高坂さ……覚えてないか?
小学校の頃にサッカーの試合があっただろ?」
いや、確かにありましたけど!
どの試合ですか?!
何回か見に行ったけど!
どの試合のことだか分からないよ⁉
「ボロボロに負けてめそめそ泣いてた俺の所へ来て、
真っ白なタオルを渡して言ってくれたよな。
カッコよかったよって」
そんなこと言いましたっけ⁉
まったく記憶にございませんが⁉
「俺……その瞬間に高坂のことが好きになったんだ。
あれからずっと好きだった。
同じ高校に行こうと思ってスポーツ推薦に受かるために、
必死になって部活頑張ったんだぜ」
宮本様ってスポーツ推薦だったの⁉
知りませんでしたよそんなことぉ!
次々と告げられる新事実に、私の頭はパニック寸前。
そして彼はこう言って告白をしめる。
「だから……このチョコを俺にください。
俺と付き合ってください!」
90度お辞儀をして告白する宮本様。
私は何て答えたらいいか分からない。
何故かおミカ様の方を見る私。
彼女は困ったように首を横に振る。
カズキ君の方を見ると、彼は優しく微笑んで肩をすくめた。
誰かに答えを委ねられるはずもない。
この告白に応えられるのは、私だけなのだから。
私は答える。