04 あや
パパはね、あや、男のママのことだよ。
……
うん、男のお母さん。
……
‥いや、あやにもちゃんとしたパパがいる。
……
勿論。もうすぐ会えるから。
……
うん、あやのパパはあやが危険にさらされたらテレビに出てくるヒーローみたいに、あやを助けに来てくれるはずだ。
……
当たり前だろ? だってあやのパパは‥
『魔法使いだからね』
‥それはかすかな意識の中で響いた誰かの一言だった。
やがて自分が目を閉じていることに気付き、重いまぶたに力を入れた。しかし視界は依然として暗く、何も見えない。自分が目を開けているのかすら確信できなかった。
しかし、それもつかの間。だんだん目に焦点が絞られ、視野にかすかにものの形状が揺れ始めた。
天井。
最初に見たのは天井。いや、揺れる人影だった。正面の天井からは得体の知れない人影が白い光によって敏感に揺れていた。明かりを追って首を回す。そこには小さなランタンがあり、そのランタンを指先で弄っている長髪の女の子もいた。
反対を向いていて顔はよく見えなかったけど、
「銀…色‥」
女の子の髪は綺麗な銀色を帯びていた。
その時、じっとしゃがんでいた女の子が急に腰をまっすぐに伸ばた。ランタンから手を離して大きく開いた目でこっちを見た。
‥紫色。
美しい紫色の瞳を持った少女はそのまま何か話すのかと思えばたちまち席を立ち、はるか遠くの暗闇の中に逃げるように消えさってしまった。




