00 銀色の少女
廃虚になった建物のあいだ、濃い土の臭いがした。回りに突っ立っている高層ビルたちは一様に管理されていなく名前の知らない緑色の植物に囲まれ一つの巨大な木になっていた。
その中優に二百メートルはあって見える全面がガラスで包まれた巨大な建物も例外ではなかった。巨大な建物のガラスは埃っぽく緑色のコケみたいなものがいっぱい付いていて遠くでは中がよく見えない程度だった。
高いビルが何個もある場所だが何の人けも感じない。
両側に建てられた巨大な木を通り過ぎながら誰もいない六車線道路を歩いてたどり着いたのはデパートに推定される四層の建物だった。開いてる入り口を過ぎいつ倒れてもおかしくない建物の内部に入ると換気されてないかび臭い空気が肺の中に入ってきた。
デパートの中は暗かった。割れたガラスの窓からかすかに入ってくる日の光でぎりぎり前が見えて一層には他の捨てられた建物で見た身に覚えがあるいくつの緑色の植物がいつのものなのか分からない家電の間間陽光が照らす場所に生えていた。
所所生えている植物を避け、足の下を気にしながら入り口前の家電コーナーを過ぎた。内側へ進むほどどんどん視野が暗くなった。聞こえてくるのは地面の土ぼこりをかすむ足音だけだった。
そうやって暗さが極まる頃に階段に到達した。正面の階段を視覚的に確認することは出来なかったが、位置的に確信することは出来た。やがて現れた手摺に改め確信しながら窓一つない閉鎖的な階段をひたすら手と足の感覚に頼りながら慎重に登り続けた。
真っ昼間に真夜中のように暗い踊り場を曲がると続く階段の上にかすかな日差しが現れた。光を見逃さず注視しながら階段を登り遂に足を踏み入れたのはデパートの二階、闇から解放された視野に真っ先に入ったのは薄暗く仄かな光の柱たちだった。
二階も同じく窓から薄い日差しが入って来ていて正面にはアウトドア用品やスポーツ用品などが埃まみれであっちこっち転がっていた。地面から離れているせいか一層と比べて生えている植物の数が明らかに少なかったが、それでも足の下を注視しながら慎重に歩むことに変りはなかった。
コンー!
急に鉄で出来た何かが床に落ちたような音がした。そこまで大きい音ではなかったけど周りが静かすぎた故非常に大きく感じられた。息を殺して音がした方向を見つめたが日差しが届かない所で何が床に落ちたのか見分けることは難しそうだった。
多分店棚が腐食してその上の何かが落ちたんだろう。
自信を安心させながら足を速めた。窓から若干の光が入ってくるとはいえ暗いことは同じ。真っ暗で静かな空間で感じられる速い心音に緊張が高まった時だった。
スッ‥
今度は荒い布切れみたいな物が床を擦りむくような音が聞こえてきた。音がした場所は正面、横幅1~2メートル程度の光の柱の向うだった。
「……」気をつけながら音がした所に足を踏み入れる。
すると一足先光の柱の中で浮いている塵が輝いた。そしてその向う音の発生地に焦点を合わせるとしわくちゃになった布団束がほこりっぽい床に落ちているのが見えた。
白い色の厚い羽毛布団。
それは一般的な家庭でよく見られる普通の羽毛布団だったがそれでも他の羽毛布団と一つ違いがあるとしたら、
「‥めい」
しわくちゃの布団から足二つが突き出ている事。
スス…
しわくちゃだった布団がだんだん本来の姿に変わっていく。
半分開いた時点に布団の間で長い銀色の髪が柔らかく流れ落ち小さい足につながっている細い体がその姿を現した。
銀色の髪の少女。
ひらひらの白いワンピースを着てる少女はその細い体と比較される厚い布団を両手を交差にグッとつかんだまま静かにシュンを見上げた。
「飲めそうな物を見つけたよ」
肩に担いでいる鞄を床に下ろして座ろうとしたその時、布団の隙間からゆっくりと伸ばされた手が顔を柔らかく撫で摩ってきた。
「お帰り」
ささやく少女の顔が布団の外に姿を現す。
‥光の柱にかすかに照らされた少女の深い瞳は濃い紫色を含んでいた。




