黒田長政になりませんか?
ツッコミ「転生研究所?」
ボケ「いらっしゃいませ。」
ツッコミ「ここは転職を紹介する場所ですよね?」
ボケ「もちろん転職も扱っておりますが、それとは別に、人生を変えてみたい。それも全く異なった人間として。と考えられているかたの希望を叶えることを目的にしておりまして。……と言いましても勿論多重債務に苦しまれ。もう借りるところが無いかたが更に借りることが出来るよう。戸籍の取引や養子縁組を斡旋するような怪しいところではございません。全く別のかたになって頂くことが出来る。言っていることは同じなのではありますが、グレーゾーンとなるようなことではありません。」
ツッコミ「説明を聞けば聞くほど怪しいように思うのだが。じゃあ例えばどんな転生先を用意しているのだ?」
ボケ「因みに希望条件などはございますか?」
ツッコミ「そうだなぁ。これまでの人生で。親が社長って言うだけで裕福な子供時代を過ごしたり。就職やその後なんかも優遇されている連中を羨ましく思ったことがあったからさ。なんか親の脛をかじることが出来るような境遇になることは出来ないかな?」
ボケ「親が裕福な家庭の子供になりたい。と……。ほかに加えたい条件はございますか?」
ツッコミ「これでもゼロでは無いのか?それでしたら。親の脛をかじることが出来たとしても、多少は刺激が無いと人生面白くないだろうから。必ずしも安泰と言うわけでは無いところで探してくれないかな?」
ボケ「刺激のあるところ。っと……。それでしたらお客様。こちらなんか如何でしょうか?」
ツッコミ「なになに。黒田長政になりませんか。おぉあの稀代の軍師。黒田官兵衛の息子になることが出来るのか。これは面白そうだな。で。私は長政のどの段階に転生することになるのかな?」
ボケ「求人が来ていますのは、黒田長政の幼少期になります。」
ツッコミ「まさに親父官兵衛が活躍している時期になるんだな。で。その時私の住まいは?」
ボケ「織田家の人質として羽柴秀吉のもとで暮らすことになります。」
ツッコミ「人質と言う響きは気になるが、秀吉のもと。と言うことは安全が確保されているとも言えるわけだな。で。その時父官兵衛は何をしているんだ?」
ボケ「居ません。」
ツッコミ「えっ!?単身赴任をしている。と言うことか?」
ボケ「違います。」
ツッコミ「違います。ってどう言う事だよ?」
ボケ「荒木村重の居城に行ったきり音信不通となっています。」
ツッコミ「どう言うことだ?」
ボケ「荒木村重が織田家を離反し、村重は自分の城に籠城してしまいました。」
ツッコミ「でもそれと親父の音信不通は関係ないのだろ。」
ボケ「はい。官兵衛は織田家の家臣として働いていました。働いていたのでありましたが、ある日。長政の父上であります官兵衛が『私が村重を説得してみせます。』と信長に話し。交渉役として村重の居城を訪ねたのでありましたが。」
ツッコミ「そこで居なくなってしまったのか?」
ボケ「いえ。厳密には説得に失敗し、村重の居城の牢屋に閉じ込められてしまったため、外と交信することが出来なくなってしまったのでありましたが……。」
ツッコミ「織田から見れば裏切ったか蒸発したかに見えてしまうわな。」
ボケ「そんな状況下の黒田長政に。お客様はなって頂きます。」
ツッコミ「誰がなるか!そんなの!!」
ボケ「大丈夫ですお客様。秀吉は官兵衛を疑ってはいません。ただ……。」
ツッコミ「ただなんだ?」
ボケ「秀吉の主君信長からは既に『長政を処分せよ』との命令が下されています。」
ツッコミ「じゃぁダメじゃん。長政になった瞬間に終わりじゃねぇかよ。」
ボケ「大丈夫です。秀吉は守ってくれます。守ってくれますし、父・官兵衛も戻って来ます。」
ツッコミ「本当か?」
ボケ「ただ!!」
ツッコミ「なんだよ。」
ボケ「その間長政は、死んだことになっています。」
ツッコミ「それじゃぁ今。職探しをしている俺と変わらないじゃないかよ!!」
ボケ「お客様。違います。」
ツッコミ「違う。ってどう言う事だよ。」
ボケ「長政には未来があります。52万石の大大名になると言う輝かしい未来が待っています。」
ツッコミ「そうだなぁ……。長政には52万石の大大名になる未来が待っているんだよな……。そう思えば今の不遇も耐えることが出来るよな……。ところで現実世界の私には?」
ボケ「大学出立てでロクに仕事も出来ない癖に、50代過ぎの従業員を人として扱わない上司のもとでの仕分け作業の作業員としてならばなんとか……。」
ツッコミ「……俺には未来は無いのかよ……。」